ライター:一色先生
2024.09.30
一色です。 こんにちは。
8月に第37回日経ニューオフィス賞受賞オフィスの発表がありました。
https://www.nopa.or.jp/prize/contents/congratulation37.html
9月10日には日経新聞で受賞オフィスの概要や今年の傾向が紹介されていました。
1988年から始まったこの賞、実は昨年、第1回から35回(2022年)までの受賞オフィスのコンセプトと空間の役割について、「日経ニューオフィス書事例分析調査報告」が発行されたことをご存じでしょうか?
日本のオフィスの傾向やあり方を知るうえで、日経ニューオフィス賞受賞オフィスの特徴を把握することは、大いに勉強になります。
というわけで今回は、一般社団法人ニューオフィス推進協会主催で昨年の「クリエイティブ・オフィスセミナー2023」にて発表された、
「日経ニューオフィス賞事例分析調査報告書―オフィスコンセプトと空間の役割の変遷―」のポイントをわかりやすく解説します!
1988年~2022年までのオフィスコンセプトの変化やキーワード、受賞オフィスの変遷を知ることは、あなたのオフィスを考えるヒントになること間違いなしです。
(*2023年6月に一般社団法人ニューオフィス推進協会から発行された調査報告書と、2023年10月に開催されたクリエイティブ・オフィスセミナー2023での発表内容をもとに執筆しています)
「日経ニューオフィス賞事例分析調査報告
―オフィスコンセプトと空間の役割の変遷―」
●研究の目的
オフィスの設計コンセプトとその具体的な施策が、どのように空間として具体化されてきたのかの変遷を明らかにすることで、今後のあり方を見据えることに繋がると考える。
●研究の方法
①属性からみたオフィスの変遷
②年度によるコンセプト記述の特徴
➂オフィスコンセプトの特徴と空間レベルの関係
④図面からみたオフィスの特徴
⑤コンセプトの具体的施策と執務空間の関係
⑥執務空間への具体化の事例分析
ではここからは、一色が気になったいくつかのポイントについて、解説していきます。
【ポイント1】属性からみた応募オフィスの変遷(研究の方法①)
応募オフィスは本社・支社、自社ビルと賃貸ビルどちらが多いのでしょうか?
応募オフィスの内訳をみると半数以上が本社。近年は支社・支店が増加しているようです。自社ビル化、賃貸ビルかをみると、1990年代後半までは新築自社ビルが増加、2010年からは既存・賃貸ビルの割合が増加しています。
【ポイント2】受賞オフィスとその他のオフィスの比較
●本社、支社・支店
本社の比率は受賞オフィス、応募オフィスともに80%程度。受賞オフィスは本社の方が10%ほど多い。
本社のほうが企業ごとのオフィスコンセプトを反映した工夫が施されているようです。
●所在地
受賞オフィスの70%が関東地方からの応募。応募オフィス全体に占める割合は45%。
都心部はオフィスも多く、新しい工夫などが多くみられます。
●業種
応募オフィスと比較して受賞オフィスで比率が高いのは、製造業、情報通信業、建設業。
低くなっているのは金融業・保険業、卸業・小売業。
●自社ビル・賃貸ビル
受賞オフィス、応募オフィスで大きな差は見られない。受賞オフィスにおいて自社ビル率が高いというわけではないようです。
●新築・既存
受賞オフィスでは新築ビルが多い。新築のほうがオフィスコンセプトを具現化するための自由度が高いためと考えられる。
●自社・賃貸と既存・新築
受賞オフィスでは新築・賃貸ビルの割合が10%ほど多い。
●オフィス面積
受賞オフィスでは2001㎡以上の規模の大きいオフィスが20%以上多い。大規模オフィスのほうがより多く受賞している。
【ポイント3】オフィスコンセプトの特徴と空間レベルの関係(研究の方法③)
日経ニューオフィス賞の評価項目、キーワード分析での出現率をもとに、10項目について、それぞれのキーワードと同義と考えられる語にコンセプトコードを設定。オフィスコンセプトをコンセプトキーワードごとに分けて出現数や年ごとの変化を分析しています。
●コンセプトコードとしての10項目
●コンセプトコードの出現率の変化
コミュニケーション、快適性、情報化、機能・効率性、創造性に関しては初期からの記述が多くみられています。
2023年ごろからコミュニケーションが増加。
2006年以降に創造性、企業イメージが増加。快適性、情報化は減少。
(オフィスのキーワードはあたりまえに浸透していくと、使われなくなりますよね)
【ポイント4】図面からみたオフィスの特徴(研究の方法④)
●一席あたりの執務面積の変化
あなたのオフィスの一席あたりの執務面積はどれぐらいでしょうか?
フリーアドレスは2000年前半から徐々に増え、2010年後半からは固定席のオフィス数を上回っています。
一席あたり固定席の執務面積は7.45㎡、フリーアドレスの場合は6.27㎡。全体平均は7.10㎡となっています。
分析調査報告書では他にコンセプトの具体的施策と空間の関係についても分析されています。
一部抜粋して紹介します。
・カフェや食堂などの生活支援の用途を担う空間、日常的に訪れる大きな共用部分の空間の設置がオフィスの快適性を高める。
・創造性は共用空間での工夫が行われてはいるが、具体的な施策はあまり行われていない。
・地域性は共用部や個室の地域開放による事例が多い。
2000年代から地域との交流の取組が増え、2010年代では地域とのつながりを意識した空間に変化しているようです。
地域貢献の視点は高まってきています。
総括
今後のオフィス計画を考えるにあたってこう述べられています。
アフターコロナのオフィスのあり方として
「人が行きたくなるオフィス」が重要視され
行く意味は何かを考えて空間づくりに
取り組む傾向がより強まると考えられる
コミュニケーション活性化や、快適性を空間に落とし込む施策はかなり具体化してきましたが、創造性を高めるための工夫はまだまだで、これから考えないといけない課題といえます。
そもそも「オフィス空間が仕事に与える意味は何か」、「わざわざ足を運びたくなるオフィスとは何か」についてより考える必要がありそうです。
あなたにとってオフィスの持つ意味とは何でしょうか?
ここまで、読んでいただいてありがとうございました。
参考情報 | オフィスの広場 気になるワダイ!
2024.01.31 「2023年日経ニューオフィス賞受賞オフィスの傾向は?」 https://www.office-hiroba.com/news/839/ 2023.04.07 「日経ニューオフィス賞応募の前に知っておきたいこと」―審査の視点を紐とく―」 https://www.office-hiroba.com/news/776/ 2021.08.25 「日経ニューオフィス賞ってどんな賞?受賞オフィスのキーワードは?」 https://www.office-hiroba.com/news/656/ |
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ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
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