ライター:一色先生
2025.04.25
あなたのオフィスでは社員がいきいきと明るい笑顔で仕事していますか?
オフィスづくりにおいて、コミュニケーションを活性化させる快適な環境を整えることは、これまで基本的な取り組みとして行われてきました。
オープンなレイアウトやリフレッシュスペースの設置、フリーアドレス制度などがその代表例です。
しかし現在では、それだけでなく、オフィスだからこそ提供できる“従業員体験”の価値が重視されるようになってきています。
企業の総務担当者にとっては、従業員がオフィスに出社することでしか得られない価値をどのように提供できるかが、今後のオフィスづくりにおける大きな課題と言えます。
働く場所が多様化する中で、オフィスに足を運ぶ意義を明確にし、そこに集うことのメリットを感じられる仕組みをつくる必要があります。
今号では、日経ニューオフィス賞を受賞した、従業員体験価値を重視したオフィスの特徴的な事例をご紹介します。
1:キユーピー仙川キユーポート
(2014年ニューオフィス賞推進賞大臣賞受賞)
最近の事例ではないですが、体験を重視している例として紹介します。
オフィスコンセプトは「その会話から生まれる 未来とつながる」
画像引用元NOPA公式サイト
オフィス構築と同時に、総務的役割に加えて組織のパフォーマンス向上施策を行う「キユーポート部」を設置。空間の維持管理だけでなく組織の目指す姿を共有する活動や、各種交流イベントを推進しています。
このオフィスで実践されている従業員体験の一例を紹介しますね。
・部門を越えた活発な対話促進や、部門間交流を促す文化祭
・キユーポートオーケストラ
・オフィスでのウォーキング教室
・野菜摂取量上位者表彰
・部署別対抗歩数競争
遊び心のある活動がもりだくさんですね。
また特筆すべき点は、新入社者に向けてオフィスコンセプトやねらいを説明する機会を都度設けていること。
組織の目的を全員が共有していることが企業の成長発展には不可欠です。在席していた社員には共有されていても、新しく配属された社員には伝えられていない、というのはよくあるケースですよね。皆さんの会社ではいかがでしょうか。
2:三井物産本社ビル
(2021年ニューオフィス賞推進賞クリエイティブオフィス賞受賞)
三井物産本社ビルのオフィスコンセプトは『人を招き入れる新本社~社内外との「知的化学反応」の実現」です。
画像引用元NOPA公式サイト
オフィス移転に合わせて、オフィスの維持管理と組織のパフォーマンス向上を受け持つ戦略的オフィス運営組織「Work-X室」を立ち上げていて、多面的なワーク体験=Work-X(Workplace Experience)を促進。
Work-X(Workplace Experience)を具現化するための<7つの施策>を紹介しましょう。
※Work-X室の開設も含まれています。
1. グループアドレスの導入
2. 事業シナジーを促す部門配置
3. コミュケーションエリアの設置活用
4. 戦略的アクセスコントロール
5. 複合的なホスピタリティ
6. 次世代のワークスタイルを実現する
7. 新たな専門組織Work-X室
多様な働き方を支える柔軟性と、社員の「自律的な成長」を促す空間づくりが特徴のこのオフィスでは、フリーアドレスを導入しつつ、プロジェクトの性質に応じた多彩なワークスペースが用意されており、社員同伴であれば社外の人も執務スペースまで入ることができるようになっています。
このオフィスでは、働く場所の選択肢を豊富に持つことが、自己管理能力や主体性を育む要素と考えられています。
3:第一生命日比谷オフィス
(2024年ニューオフィス推進賞受賞)
第一生命日比谷オフィスは皇居に面する歴史的建造物にあるオフィスです。
(あのマッカーサーの執務室が今も当時のまま保存されています)
社員の心身の健康をサポートする空間設計がなされたこのオフィスのコンセプトは「つながるWell-beingオフィス」。業務の生産性向上だけでなく、従業員一人ひとりのライフスタイルを尊重し、持続可能な働き方を支える基盤となっています。
もっとも特徴的なスペースは、「交流するサードプレイス:LOFFT(ロフト)」※LOFT+OFFの造語。閉鎖的であった旧社員食堂を、テナント社員も利用できるサードプレイスにリノベーションしたのです。
第一生命の社員とテナント社員が交流することでコミュニティが構築され、新しい気づきが生まれる共創/協創を促進する体験価値を生み出す場として期待されています。
画像引用元NOPA公式サイト
4:LION本社(2024年ニューオフィス推進賞受賞)
「より良い習慣づくりを未来に、世界に向けて発進させる」LION本社。
「急激な変化を乗り越えるオフィスと人財」を育む本社移転を実現することを目指しています。
オフィスコンセプトは「行きたくなるMY BEST OFFICE」
社員やパートナーの「これがやりたい」がかなう場所。
かけがえのないMY BEST。ここから新しい習慣を世界へ。
画像引用元NOPA公式サイト
オフィス空間構築に合わせて、オフィス施設を利用した活動を推進しているのは、ベストオフィス構築グループ。総務的機能を大きく超え、より良い習慣が身に着くオフィス活用のしかけを多数展開しています。
たとえば、なんと90か所も設けられているのが歯磨き専用台。それに加え歯科検診受診応援や、歯磨きに関する情報発信が連動することによって、昼の歯磨き率は80%超にも!素晴らしい効果ですね。ほかにも、
・ラグビー部による美BODYトレーニング教室開催
・研究所社員による学童イベント
・休日のオフィスで開催される青年会議所主催のイベントで地域住民との交流
など、さまざまな取り組みが行われています。
ちなみに、このような活動から地域活性化につながる新規事業が生まれたりしています。
まとめ
【今後のオフィスづくりの視点】
これらの事例からも分かるように、今のオフィスは単なる「働く場所」ではなく、従業員にとっての「成長の場」「交流の場」「自分らしくいられる場」へと進化しています。
企業がその理念や文化を体現する場として、そして社員一人ひとりが豊かな体験を得られる場として、オフィスづくりを再考することが求められています。
オフィスのファシリティ担当者としては、こうした事例を参考に、自社の文化やビジョンに即したオフィスのあり方を検討していくことが、従業員満足度の向上や人材定着率の改善にもつながるはずです。
また、オフィスづくりは一度完成させて終わりではなく、継続的な見直しと改善が求められます。従業員の声に耳を傾け、変化するニーズに応じて柔軟に対応することで、オフィスは常に魅力的な存在であり続けることができます。
オフィスという場が「ここで働きたい」と思える価値を生み出せるかどうか。
それが、これからの企業の競争力を左右する要素となるでしょう。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
参考情報 | オフィスの広場 気になるワダイ!2024.11.30 「2024年日経ニューオフィス賞受賞オフィスの傾向は?」
「THE BEST OF NEW OFFICES 2014」 発行:一般社団法人ニューオフィス推進協会 「THE BEST OF NEW OFFICES 2021」 発行:一般社団法人ニューオフィス推進協会 「THE BEST OF NEW OFFICES 2024」 発行:一般社団法人ニューオフィス推進協会 |
---|
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
オフィスの日常運営におけるニーズやオフィスの構築・移転・改修に関するご相談、お問い合わせに、経験豊富なスタッフがお答えいたします。お問い合わせ・資料請求はお気軽にどうぞ。