ライター:一色先生
2024.04.30
一色です、こんにちは!
突然ですが、あなたは「ナッジ」という言葉をきいたことがありますか?ナッジ(nudge)とは英語で、注意を引くために「軽くつつく、そっと押す」「ある行動をそっと促す」という意味の言葉です。
強制や罰則ではなく、選択肢の提示や、情報の提供などによって人の自発的な行動が変わることを促すものです。行動科学の枠組みから生まれた概念で、シカゴ大学のリチャード・セイラ―教授らによって提唱されました。ナッジは、無理せずに人々の行動を良い方向に導く理論として、行政やビジネスのシーンでも広まっています。
今回はそれとなく行動を促す特徴的なカイゼン策を紹介します。
初めに少し「ナッジ」の例を挙げておきましょう。
①レジ待ちで整列する列の床に貼られた足跡や線のステッカー→列を乱さずに並べるようになりますよね。
②ファイルボックスの背表紙に描かれた斜めライン→ボックスがきちんと並んでいないとラインが乱れ、気になってつい直したくなりませんか?
▼ファイルボックス背表紙斜めライン
具体的に、オフィスで実行されているナッジ事例をみていきましょう。
1.共有文具の姿置き
フリーアドレスオフィスになると、個人専用のデスクが無くなるので、文具は共有にしておくと備品の重複や無駄を避けることができます。
文具の外形を収納する場所にかたどっておくと、持ち出したときに同じような形のくぼみが現れるので、自然ともとに戻すように促すことができます。戻し忘れた時もすぐに気が付くようになります。(くぼみの中に文具の外形写真を貼り付けておくとより分かりやすくなります)
▼教えて!一色先生~オフィスカイゼンベスト10
より
2.除菌シートボトル予備
オフィスの中で除菌シートを使おうと思って蓋をあけたら、中身がないということが、発生しないように、除菌シートの入っているボトルの横に、補充用のシートを置いておける場所を確保してこのセットを常設しておきます。
補充用のシートも含めて常設しておくと予備がなくなったときは一目でわかるので、シートが無い状態を無くすことができるようになります。
通常モードではないことが発生したときに、気づきを得られるように見える化しておくことも大事です。
▼教えて!一色先生~オフィスカイゼンベスト10
より
文祥堂さんのオフィスでは、二次元コードを掲示して総務部へ即アクセスできるようになっています。
▼関心度MAX!銀座を散歩するように、文祥堂さんのオフィスをぶらりとしてきました!
3.左側(右側)通行表示
あなたのオフィスは右側通行か左側通行かを決めていますか?
通路や階段を利用するときに、右側通行にするか、左側通行にするかを明確にしておくと、突然の衝突を避けることができて安全に歩ける環境をつくることができます。
床のタイルカーペットに主となる進行方向の矢印表示を埋め込んでおくだけで、左右のどちらを歩けばいいか人の行動を促すことができます。
通路を利用するときに右側通行にするか左側通行にするかを決めていないオフィスは多いようですが、安全な職場環境を作るうえでも有効なルールといえます。
4.ゴミ分別表示
資源のリサイクルに関する意識も普通に高まってきました。分別ゴミのサインはどのオフィスでも当たり前のように表示されていますが、文字だけの表示だと、間違って投入してしまうことが起こりがちです。どの様な種類のゴミを捨てればいいのか、該当するゴミの写真を表示するだけで、間違いを軽減することにつながります。
最近はオフィス空間もおしゃれになってきましたが、ゴミ分別サインもおしゃれすぎると、ゴミ捨ての間違いも起こりやすいようです。サインデザインをする場合でも使う人のわかりやすさは考慮してくださいね)
こちらのオフィスでは、物理的な掲示がされていました。これはわかりやすい!
▼気になるオフィス!ソウルドアウト:キャンプ場から秘密基地まで!?セレンディピティが日々生まれる仕掛けいっぱいのオフィス!より
5.オフィス内カーブミラー
通路の交差点などオフィスの中でも見通しが良くないところで、人と人がぶつかることがあります。
曲がり角の壁面にカーブミラーを設置することで、死角になっていた壁の向こう側の様子が見えるようになります。いままで見えなかったところが見えるようになるので、おのずと衝突を回避できる行動を促すことができます。
▼コクヨ_オフィスカイゼン委員会_005オフィス内カーブミラーより
強制するのではなく気づきを感じさせることで、それとなく行動をうながすカイゼン策の例を紹介しました。
昨日より少しでも良くなるようにカイゼンを積み重ねていくことで、オフィスは最適な状態を継続できます。
カイゼン策を考えるときには課題を単純に解決するだけでなく、そこに遊び心やユーモアを盛り込むことで、心がなごむカイゼン策を提供できます。
オフィスカイゼン活動を続けるコツは「面白がる雰囲気づくり」と感じています。働く人の心がなごむようなカイゼン策をぜひ形にしていってください。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
Information | 参考
●オフィスカイゼン委員会(コクヨ) ●教えて!一色先生の「オフィスカイゼン」シリーズ |
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ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
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