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気になるノウハウ!

ライター:一色先生

2023.07.28

教えて!一色先生~高評価オフィスのコンセプトとその展開

トッシーです、こんにちは。
オフィスづくりにおいて最も大事なことはなんでしょうか?
それは「オフィスコンセプト」です。

今回は筆者が、インパクトを受けた今までのオフィスとは違うと感じた、オフィスコンセプトと具現化するためのコンセプト展開の事例を紹介します。
▼画像はTBWA\HAKUHODOのオフィスより

オフィスは企業が成長発展するための礎となるものです。オフィスづくりは、企業が目指している方向、達成したいゴール、ビジョン、パーパスを再認識、あるいは再定義する絶好の機会です。どんなオフィスにするのか、今の延長ではなく、ありたい姿を描いてそのための働き方を考え、ふさわしいオフィス空間をつくる。そのためにはオフィスコンセプトが不可欠です。

今までにないことを具現化するもの。それがコンセプトです。ハードとしてのオフィス空間をつくるのではなく、オフィスの意味を変革していくことが求められています。コンセプトは、かかわるすべての人の明確な「判断基準」や、つくるもの全体に「一貫性」を与えます。コンセプトがあると隅々まで芯の通ったオフィスをつくることができます。

1.PBW(Performance Based Working)

PBWは2022年日経ニューオフィス賞経済産業大臣賞を受賞した「電通デジタル」の オフィスコンセプトです。

どんなオフィスコンセプトなのか。オフィスリニューアルの背景と、オフィスづくりの目的を合わせてみてみましょう。

オフィスリニューアルの背景
●一気通貫の「リアリティのある課題解決力の向上」(社員のリレーションを強化)
●「リモートワークの弊害」の克服(信頼関係の回復、情報を共有する機会を再創造)
●「ファシリティを取捨選択」し、さらなる成長のための投資(ワークスタイル変革に投資)

オフィスコンセプト:「Performance Based Working」
・目的はクライアントの課題を解決し、事業を成功へと導くこと
・やるべき事をやるべき時にやるべき人がやるべき所で
・その解は組織ごとに異なるので、各組織が主体的に模索していく

コンセプトの展開
①Be the one
多様な個性を融合し、より強い課題解決集団へと変貌させるための「オフィス」
②Feel the beat
社員同士の距離を前提とする中で、距離を制約にせず、距離を価値に変える。人間味があり体温を感じる「テクノロジー」が有効
③Shine up
「働きがい」を描く、「誇らしさ」を描く、「働きやすさ」を描く

〈ここが違う〉
ABW(Activity based working)の考え方が日本のオフィスでも浸透してきて、一般的になってきました。ABWは活動の在り方の工夫ですが、ABWを踏まえて、何のために働くのかを簡潔に表明しています。すべてはパフォーマンスを最大化するために、空間、テクノロジー、ワークスタイルそれぞれに工夫を凝らして、PBWとして全社に浸透。一度聴いたら忘れないようなシンプルなメッセージとなっています。確かにエクスペリエンスが変わりありたい姿を達成できると感じさせるコンセプトです。



2.街でABW
KADOKAWA所沢キャンパス(2021年日経ニューオフィス賞経済産業大臣賞受賞)

オフィスプロジェクトの背景
・KADOKAWAの課題:デジタル化による最新鋭の書籍製造、物流設備設置の必要性
・所沢の課題:旧浄化センターの跡地利用と産業活性化

オフィスコンセプト:「街でABW」
オフィスで働くという概念に捉われることなく、社会の変化、ライフサイクル、ライフステージの変化に対応しながらいきいきと仕事できる

コンセプトの展開
シームレスなワークスタイルを、空間、ICTにより実現する

〈ここが違う〉
オフィスは自社のためだけにあるのではなく、地域のためにも存在しています。地域を元気にさせるために、街の文化活動も積極的にサポート。働き方もオフィス内だけにとどまらず、街の施設も活用しながら成果を高める働き方。オフィスワーカーの暮らしや働き方を見据えてワークプレイスをプラン。オフィス内の枠にとどまることなく街全体を、俯瞰した新しいオフィスの在り方を提示しています。


♪♪「気になるオフィス!」でも取材しています!合わせてお読みください⇒ABWはオフィスを越えて。働きやすさを追求したしかけいっぱいのKADOKAWA「所沢キャンパス」!

※画像引用元:https://group.kadokawa.co.jp/information/news_release/2021080501.html



3.Borderless! × Socializing!from MEC PARK
三菱地所MEC PARK(2020年日経ニューオフィス賞経済産業大臣賞受賞)

中期経営計画
「時代の変化を先取りするスピードで競争力あふれる企業グループに変革する」

本社移転の背景
働き方改革推進の必要性と新しいオフィスの形の模索。三菱地所自身が変わり続けるため、働き方改革の観点も含め移転を決定

オフィスコンセプト:「Borderless! × Socializing!from MEC PARK」
あらゆる境界をなくし、本当の意味で人と人がつながり力が発揮できる空間へ
・自然に人が集まり繋がる
・オープンでフラット
・色々な過ごし方が選べる
・健康的に過ごせる
・やってみようを周りが後押しする

コンセプトの展開
場(空間・時間)×プログラム運営×IT施策×制度設計

〈ここが違う〉
オフィスは企業成長発展を具現化するために存在しています。地域開発、都市開発の拠点となるオフィスの在り方を追求。境界をなくし、あらゆる多様な人との交流を促進し、オフィスの中だけでなく、街の在り方までを変え、東京を変え日本を変えていこうというビジョンが伝わってくるオフィスコンセプトです。オフィスづくりのプロセスにおいても、新本社を実証の場として、オフィス環境を継続的に進化させながら、有用性のある施設をまちづくり事業へと活用しています。

※画像引用元:https://www.mecdesign.co.jp/works/office/11.html



4.ウェルネスレシピ
大成建設ウェルネス作業所・赤坂中学校(2021年日経ニューオフィス賞推進賞受賞)

大成建設のグループ理念:「人がいきいきとする環境を創造する」

2020年から本社、技術センター、現場の魅力的な職場環境をめざして「新しいワークプレイスによる魅力ある職場づくり(TAISEI Creative Hub)」を考える社内プロジェクトに取り組む。

①都心型ワークプレイス―本社:クリエイティブメディアラウンジ
②郊外型ワークプレイス―技術センター:オープンミーティングスペース
③仮設型ワークプレイス―現場:ウェルネス作業所

オフィスコンセプト:「ABWやWELLを取り入れた空間・場づくり⇒ウェルネスレシピ」 
コンセプトの展開
100のウェルネスレシピの中から作業所ごとに最適な項目を採用
①ボリューム
②プランニング
③エレメント

〈ここが違う〉
日経ニューオフィス賞史上初めて、仮設の建築作業現場のオフィスがニューオフィス推進賞を受賞。この作業所単体ではなく、企業として建築現場で働く人たちのウェルネスを追求している姿勢が評価されました。

建築作業所はつくることと考えることが同居するクリエイティブな場と定義。建設作業所を仮設型ワークプレイスと捉えて屋内・屋外の創造的な空間づくりを展開。効率性向上とエンゲージメント向上のための様々な施策として取り組んでいます。

通常の作業所は工事期間に応じた作業所の条件に合わせて、リース会社が敷地内に構築していましたが、ウェルネス作業所は作業所とリース会社と設計本部の3者で100のウェルネスレシピを反映したワークプレイスを構築しています。

※画像引用元:https://www.taisei-design.jp/de/news/2021/10_01.html



5.Convention(固定観念)をDisruption(破壊)する
TBWA\HAKUHODO(2007年日経ニューオフィス賞経済産業大臣賞受賞・クリエイティブオフィス賞受賞)

オフィスづくりの経緯
全く異なるフィロソフィーを持つ2つの広告代理店・部門の合併に伴う統合移転

経営課題とオフィスに求める要素
異なるフィロソフィーの融合による相乗効果と、新会社の認知度拡大

オフィスに求める要素
・クリエイティブエイジェンシーとしての創造性を表現するオフィス
・インパクトがあり、アバンギャルドなイメージの前例のないオフィス
・訪れる人たちに期待感を与えるオフィス
・日々の営みから新しい発想が生じ、仕事を人生として楽しめる生活空間としてのオフィス

コンセプト:「Convention(固定観念)をDisruption(破壊)する」

コンセプトの展開

①オフィスで過ごす楽しさの実感
・ボーリングをモチーフにしたデザインなど、ワーカーが遊びや楽しさを感じる空間
・小さな丘や谷、広場や公園、川の流れなど「街」のアクティビティを取り入れたランドスケープ
・毎朝の焼きたてパン、木曜夜のビアタイムなど、生活感あふれるワーカーへのサービスが充実

②インフォーマルコミュニケーションの活性化
・柱のない巨大なひとつの空間に集結、個室はガラスパーティションで仕切られるなど、周囲の動きや仕事の様子が常に体感でき、お互いを知る機会が増加
・アイデア発想の起点となる部門を超えた交流や会話が自然に促される場を至るところに設置
・フロア中央のディスラプションコートでは、社内研修やクライアントを招いたイベントを開催

③知的な刺激と癒しの共存
・思考や気分転換を促す、開放感のあるオープンフロアでの自由で立体的な移動
・本物の木や心地よい自然素材、やさしさを感じさせるデザインに触れることができる環境
・自然光を取り込み、四季や時間の変化を写し出す大きな窓

④ストレスのないフレキシブルなワークスタイル
・自席の椅子はすべて人間工学に配慮したエルゴノミクスチェアを採用
・PCを持っていけば、どこでも自席と同じように働くことができる制約のない自由度の高い環境
・裁量労働制(在宅勤務も可)、フレックスタイム制、コアタイム制から選択できる勤務形態
・段差部分には必ずスロープを併設、多目的トイレを新設するなどユニバーサルデザインに配慮

〈ここが違う〉 多くの人が集まるオフィスにおいて、固定概念を壊すことや、変化に対する抵抗はつきもの。文化の異なる2社の合併。今までの慣習を脱却して新しい組織風土をつくっていくためのオフィス。ディスラプション(破壊)をコンセプトに掲げ、あらゆる既存の概念を壊していくことで思いを一つにする。オフィスらしさを壊すことで通常のテナントオフィスに入居するのではなく、ボーリング場だったスペースをオフィスに改装。枠にはまったオフィスレイアウトはしない。会議室の在り方も変える。オフィスでの行動を変える。コンセプトを基に構築された空間の中に入ることで、組織のメッセージを体感できるオフィス。

※画像引用元:https://www.tbwahakuhodo.co.jp/stories/th-office/



6.楽業偕悦

キユーピー仙川キユーポート(2014年日経ニューオフィス賞経済産業大臣賞受賞)

経営戦略:国内での持続的成長と海外での飛躍的成長を遂げるべく「ユニークさの発揮と創造」を軸に基盤となるグループ経営を強化。挑戦的な風土を醸成し、総合力の発揮をめざす。

社是:「楽業偕悦」
オフィスコンセプト:「その会話から生まれる、未来とつながる」                  

コンセプトの展開

①回遊性を誘発
②知識資産の管理と運営を徹底

〈ここが違う〉
(オフィスコンセプトは「その会話から生まれる、未来とつながる」ですが、ここでは社是の「楽業偕悦」に注目します)

キユーピーグループの17の事業所が一か所に統合するオフィス。研究所員とオフィスワーカーとの融合が促進するあり方を追求。多様な知をもった人の交流を促進することで新しい気付きを得るためのオフィスです。

通常はコミュニケーションを活性化する空間をつくったとしても、多様な人の交流が生まれることにはなりません。通路で他部署の人に会ったとしても、挨拶が生まれることも少ないものです。それが同社では他部署の人どうしが出会ったときも明るい挨拶が交わされます。あちらこちらで複数の人が集まった立ち話や、活発な意見交換が行われています。

なぜそれができるのかをいくつかの人に尋ねてみると、みなさん同じような答えが返ってきます。それは「社是が楽業偕悦ですから」というものでした。「志を同じくする人が、人生を楽しみ困難や苦しみを分かち合いながら悦びをともにする」を共通認識として持っています。

全社員が企業の目的を達成するための仕事を、「同じやるなら楽しみながらやろう」という気持ちで日々の仕事に向かっているので、コミュニケーション活性化や、パフォーマンス向上、新しい価値提案に現れています。全社員が同じ思いで一つになる姿を実感できるオフィスとなっています。

※画像引用元:https://www.kewpie.com/newsrelease/archive/2013/51.html
https://www.nikken.co.jp/ja/expertise/consulting/changing_work_styles_through_architecture_sengawa_kewport.html



おわりに

企業のビジョンやパーパスを具現化するために何を行えばいいのか、根本を追求することで、今までにないコンセプトが生まれてきます。コンセプトの設定のしかたやその展開施策を、探ることで、自社にあったコンセプトを考える気付きを得ることにもつながります。

これからも新しい切り口のコンセプトがあれば紹介していきますのでよろしくお願いします。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

参考資料『コンセプトの教科書』細田高広著/ダイヤモンド社
参考(一部引用)
「THE BEST OF NEW OFFICES 2007」一般社団法人ニューオフィス推進協会
「THE BEST OF NEW OFFICES 2014」一般社団法人ニューオフィス推進協会
「THE BEST OF NEW OFFICES 2018」一般社団法人ニューオフィス推進協会
「THE BEST OF NEW OFFICES 2019」一般社団法人ニューオフィス推進協会
「THE BEST OF NEW OFFICES 2021」一般社団法人ニューオフィス推進協会 
「THE BEST OF NEW OFFICES 2022」一般社団法人ニューオフィス推進協会
一色先生

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ライタープロフィール

コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。

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コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。

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