ライター:一色先生
2023.06.27
トッシーこと一色です、こんにちは。
オフィスに求められているのは、一人ひとりの創造性を高めることで組織としてのパフォーマンスを向上させることです。オフィスで働く人の創造性を高めるためには、五感が喜ぶ快適なオフィス環境を構築することが必要です。
今回お伝えしたいことは、「五感を刺激し快適に働けるオフィス」です。(筆者がコクヨのウェビナーで講演している内容をギュギュッと凝縮して紹介します)
視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感のそれぞれでオフィス環境づくりのヒントを紹介します。
お伝えすることは大きく次の3つの内容になります。
1.新価値創造のための環境
2.人間の三つの叡智
3.五感を刺激し快適に働けるオフィスのヒント
①視覚
②聴覚
③嗅覚
④触覚
⑤味覚
1.新価値創造のための環境
企業がオフィスに求めることは「処理型」から「新価値創造型」の仕事に大きく変わりました。
それでは、新価値創造のための環境とはどのようなものでしょうか?
新しいアイデアやひらめきは個人の頭の中から生まれます。安心・快適・ラクラクの状態でなければ、頭がうまく働くことはできません。
何か失敗するとすぐ怒られるような、ストレスの高い状態の中だと新しいアイデアは生まれません。五感が喜ぶ、心地よい、快適な環境が必要です。
2.人間の持つ三つの叡智
「人間の三つの叡智」とは人間の捉え方のことです。心理人間学科教授のグラバア俊子氏が『五感の力』という本で解説していた内容を紹介します。
人間には三つの叡智が存在し、「あたま、こころ、からだ」でできている。この図は人が外界を知り、関わるときの流れは下から上へ向かうことを示しています。大切なことはまず五感が外界の事物を受け取る。それが「からだ」、次に「こころ」で事物からの印象を形成する。三つめが「あたま」で、具体的な現われとしての「思考」によって、私たちは事物の本質や法則を認識する。
ということを描いています。要は五感が大事ということです。
人間には感覚神経が約500万個あると言われているそうです。筋肉を動かすための運動神経は約10万個。口や手足を動かすための仕組みよりも、外界を理解するための仕組みに、人は50倍も神経をつかっているそうです。
3.五感を刺激し快適に働けるオフィスのヒント
そんなわけで「五感を刺激するオフィスのヒント」視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感でそれぞれ紹介します。
① 視覚
[照明]
視覚は光がないと働かないので、最初は照明。照明の色や光、デザインなどは業務効率に影響を及ぼします。オフィスの使用用途に合わせた照明を選ぶ必要があります。
オフィス空間の雰囲気を変えるやり方として照明の色温度を変えるだけでも印象を大きく変えることができます。
「電球色」赤味と温かみがあり、リフレッシュスペースや食堂などに適しています。
「昼白色」ナチュラルな色味で、人間にとって、最もなれた光の色、執務室などにおすすめです。
「昼光色」昼白色より白っぽく集中討議が必要な会議室などで適しています。
日常生活の中で私たちが目にする光は、どの程度の色温度なのでしょうか?たとえば、朝日や夕日は約2,000K-3,000K(ケルビン)といわれています。オレンジ色の暖色系の光です。午前中から正午にかけての太陽光は、約5,000K 。空気の澄んだ高原で晴れた日の正午に色温度を測定すると、約6,500Kになるといわれています。
[誘導サイン]
このイラストは御茶ノ水の「井上眼科」 の誘導手すり装置です。(2015年に国際UD協議会のアワード受賞)
間接光で光の帯ができるようになっていて、さらに火災報知機と連動して最短の非常口へと光が点滅して誘導してくれるという優れものです。
[植物]
室内に植物を取り込むことで幸福度が向上します。幸福度をどう感じるかの調査*で、室内に植物があることで幸福度を「とても感じる」、「感じる」含めて65%もあるという結果が出ています。緑があることでストレスや眼精疲労の軽減が見込めるほか、社員の緊張がほぐれ、快適に業務を進めることに繋がります。
*コクヨ調べ:2019年オフィスホワイトワーカー824名に対するウェブ調査「仕事に関するアンケート」より
[アート]
アート作品があることで、アートをきっかけとした会話が生まれやすくなります。
このイラストでは、社員が共同で制作したアートが壁面に飾られています。皆で気持ちをひとつにして作品をつくるという共通体験があることで、気持ちを通い合わせることにもつながります。コロナ禍により共通体験が減っているので、このような取り組みはより大切でしょう。
[色]
色はそれぞれイメージを持っています。必要に応じてそれらを使い分けることが大事です。
色の持つプラスイメージを見ると赤はエネルギー、青は理性・知性、オレンジは活力とか食欲、黄色は快活。昭和の時代は日本でグレーのデスクが多かったですが、アメリカ海軍でよく使用されたグレーが日本に浸透しました。戦艦や潜水艦では密閉された空間で過ごすことになるので、協調性や指示命令が届きやすい心理面を重視していたからです。今は指示命令というより新しい発想が必要になっていますよね。
②聴覚
[音]
オフィスで問題となる音の種類は、騒音、音漏れ、反響の3種類に分類できますが、一般的に次の「音対策のABC」によって音環境を整えることが大切とされています。
A) Absorb(吸音)
吸音では素材内に音を取り込み中で拡散、吸収されることが大切。音を吸収する素材を室内に用いることにより反響をなくし居心地を高め会話を聞きやすくします
B) Block(ブロック)
壁・間仕切りで音を遮断・ブロックします
C) Cover(カバー)
BGMやサウンドマスキングなど他の音によって音を隠します
③嗅覚
[香り]
五感の刺激、次は「香り」です。香りは人の感情に結構働きかけます。「クレヨンしんちゃん、モーレツ大人帝国の逆襲(2001)」という映画は、1970年代の香りで大人たちが変わってしまうという話でした。香りがあることで人の感情や心理に作用してリラックスや覚醒の状態をつくることができます。柑橘系で覚醒、森林系でリラックス。
また香りで熱い寒い、の感覚を変えることができます。冬になるとショウガ系の香りがあると暖かく感じる。暑いときにミント系の香りがあると涼しく感じるという効果があります。香りの効果としては、コーヒーの香りがあることで人があつまり、会話をかわすきっかけになるのはよく経験していることだと思います。
④触覚
前述の井上眼科では、光を活用した誘導サインのほか床の素材を変えることで、足裏の感触でもガイドのラインがわかるようになっています。
⑤味覚
コクヨでは、オフィスで収穫したレモンを使ってレモンティーやレモネードをつくったり、屋上で育てたサツマイモを掘って焼き芋パーティを行ったりしていました。
みんなで体験を共有することや、視覚・聴覚だけでなく、嗅覚や触覚、味覚を含めた五感で人と人のつながりを体感することは、今はより大事になっています。
企業が快適でラクラクに働ける環境をつくることで、オフィスワーカーは安心して創造性を発揮できるようになります。目の前の現実から情報を引き出す力が五感力です。
五感が喜び、感性を刺激する環境という視点でオフィスをとらえてもらえればと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
Information | 参考:コクヨウェビナー「五感を刺激し、働きやすさを高める!オフィスづくりのヒント」一色俊秀(2021年開催) |
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ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
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