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気になるノウハウ!

ライター:一色先生

2023.04.07

教えて!一色先生「日経ニューオフィス賞応募の前に知っておきたいこと」―審査の視点を紐とく―

こんにちは、一色です。
今年の「日経ニューオフィス賞の募集要綱」が3月20日ごろに公開されましたね。応募期間は4月4日(月)10:00~5月16日(火)13:00となっています。

今年、応募してみようとお考えの企業様もきっといらっしゃるでしょう。どんな素晴らしいオフィスが受賞するか、今から楽しみですね。

さて今号では、日経ニューオフィス賞応募の前に知っておきたいことを、「審査の視点」から紐といてみたいと思います。お付き合い下さい。

日経ニューオフィス賞は日本経済新聞社と一般社団法人ニューオフィス推進協会(NOPA)が主催している「ニューオフィス」づくりの普及・促進を図ることを目的とした表彰制度です。1988年から始まって今回で第36回を迎えます。
(※日経ニューオフィス賞については 「もっと知りたい!日経ニューオフィス賞ってどんな賞?受賞オフィスのキーワードは?」でも紹介しています。)

募集要綱の中に「審査の視点」が記されています。(下記 募集要綱から引用)

【審査の視点】

快適かつ機能的なオフィスを整備するために、また、感性を刺激し、創造性を高めるために、加えて知識資産や情報の運用管理のために、どのようなオフィス・コンセプトに基づき、どのような具体策が施されているか、そしてどのような効果を上げているかを、「ニューオフィス化の指針」(昭和63年4月)、「今後のオフィスづくりのあり方」(平成4年5月)、および「クリエイティブ・オフィスレポート1.0」(平成19年6月)で示された視点を考慮して、審査を行います。

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1. オフィスワーカーが快適で精神的にゆとりを感じるような、生活の場となっている。また、感性を刺激し、創造性を高める働き方を誘発する場となっている。

2. コンピュータネットワークなどの情報通信技術(IT)を活用した新しいマネジメントとワークスタイルを積極的に推進する知的生産の場となっている。また、ITを活用したコミュニケーションが行われている。

3. 地球環境への影響、地域社会への貢献など、社会性が配慮されている。

(1) 企業の社会的活動が行われ評価されている。
(2) 地球温暖化への対応など地球環境保全に配慮がなされ、また、省エネや廃棄物の適正処理、リサイクル、グリーン購入など、地球環境との共生が十分に考慮されている。
(3) 自社の企業文化が地域社会に貢献し、地域の風土、景観などとの共生が考慮されている。

4. FM(ファシリティマネジメント)手法を取り入れたオフィスづくりや維持管理のための体制が整備されている。

5. 知識資産や情報が適切に管理され、運用されている。

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今回は、審査の視点で提示されている「ニューオフィス化の指針」(昭和63年4月)、「今後のオフィスづくりのあり方」(平成4年5月)、および「クリエイティブ・オフィスレポート1.0」(平成19年6月)
それぞれの概要を紹介します。

1.ニューオフィス化の指針

「ニューオフィス化の指針」は1988年に公表されましたが、その2年前の1986年に「ニューオフィス化推進についての提言」が策定されています。これはオフィス環境改善のための基本的な考え方を示した「ニューオフィス宣言」といえるものです。この「ニューオフィス化推進についての提言」はニューオフィス運動のバイブルとして、ニューオフィス化の必要性や効果が述べられています。

<ニューオフィス化推進についての提言(1986年)>
①オフィスを快適かつ機能的なものに。
②オフィスは「人間の生活の場」「情報化の中核の場」「企業文化の発現の場」「国際化の前線の場」。
③オフィスの多様性と柔軟性の確保を。
④経営者の意識改革によるニューオフィス化の普及を。

筆者は「ニューオフィス化推進についての提言」が公表された当時、この中の②の、オフィスは「間の生活の場」「報化の中核の場」「化の発現の場」「国際化の前線の場」の覚え方として、4つの頭文字を使って「人・情・企・文は国際化」と呪文のように唱えていたことを懐かしく思い出しました。

「ニューオフィス化推進についての提言」をうけて、ニューオフィスづくりのガイドラインやチェックポイントをまとめたものとして「ニューオフィス化の指針(第一指針)」が1988年ニューオフィス推進委員会より公表されました。オフィスの環境、ハードウェア、設計・管理という3つの観点から大別しオフィスの望ましい姿が論じられています。いくつかポイントを見てみましょう。

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①天井高:当時天井高は2.4~2.5mが大半だったので、2.6m以上が望ましいと記されています。 (今は2.9m程度の天井高が増えてきていますね)
②床:ニューオフィス推進運動が始まってから大きく変化したものの一つに、プラスチックタイルの床がタイルカーペットに変わったというものがあります。
③スペース:一人当たりの面積は6㎡以上が望ましいと明記されました。

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最近はABWが進んだので、全員が出社した時は一人当たり4㎡もないオフィスが見受けられますが一人当たり6㎡は意識しておきましょう。
その他の要素も基本的な内容なので覚えておいてください。

2.今後のオフィスづくりのあり方(第二指針)
(1992年ニューオフィス推進委員会より公表)

「ニューオフィス化推進についての提言」と「ニューオフィス化の指針(第一指針)」をベースにニューオフィス推進運動が展開される中で、オフィスのハードウェアの導入にとどまらず、21世紀に向けた真のニューオフィスのあり方が求められてきたことから、中間意見としてまとめられたものが「今後のオフィスづくりのあり方(第二指針)」です。

「ニューオフィス化推進についての提言」において提唱された4つの基本理念を軸に、時代の変化を踏まえて発展させた、人を中心としたニューオフィスのつくり方、使い方について述べられたものです。

3.クリエイティブ・オフィスレポート1.0
(2007年NOPA/知識創造を活性化するための新たなオフィススタイルのあり方に関する調査研究委員会より公表)


1990年代のバブル崩壊や、その後の経済停滞が続いた日本では、2000年代に入ると企業が生き残りをかけた経営の改革を模索するようになりました。オフィスに求められる環境や機能も大きく変化していきました。オフィスは情報を処理する場から、知識創造活動によって新たな価値を創出して経営課題を解決する場として変化していきました。経営戦略を実現するための装置としての捉え方が浸透してきました。

日本経済が成長していくためには、モノの生産性や効率性の向上だけでなく、感性や創造性を育て、新たな価値を創造することが不可欠であるという観点から導き出されたのがクリエイティブ・オフィスです。

NOPAでは「クリエイティブ・オフィス」を次のように定義しています。
「知識創造行動を誘発する、空間・ICTツール・ワーカーへのはたらきかけと組織の目標とプロジェクトのゴールに向けたマネジメントの双方を備え、組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した”場”」

創造的な組織は「刺激しあう」「アイデアを表に出す」「まとめる」「自分のものにする」、暗黙知から形式知のサイクルが回っているというSECIモデルをベースにした考え方です。 SECIモデルを行動におきかえてまとめたものが「知識創造を誘発する12の知識創造行動」です。

組織としての共通目的(今でいうパーパス)を全社員が共有したうえで、コミュニケーションが活性化することが創造性向上につながります。

審査の視点で紹介された3つの提言はオフィスを考える上での大切な要素が盛り込まれています。

「自社にとってオフィスはどういう役割をもっているのか」、「経営戦略を実現するためにオフィスはどうあればいいのか」、 「オフィスに社員が集まって仕事するとはどういうことなのか」。 「そもそもオフィスの究極の目的は何なのか」、について考える機会を持ってもらえればと思います。

企業のパフォーマンスを高めるためにオフィス環境はとても重要な存在です。 日経ニューオフィス賞応募書類を作成する活動は、自社のあり方、将来ビジョン、そのための働き方、働き方にふさわ しいオフィス環境を再定義する素晴しい機会となります。まとめた内容は、企業ブランディングや販売戦略にも活用でき ます。

「うちのオフィスは他にない創意と工夫がある」と感じる要素が少しでもあれば、ぜひ日経ニューオフィス賞の応募にチャレンジしてみてください。 ここまで読んでいただいてありがとうございました。

(今回紹介した内容は、「第36回日経ニューオフィス賞募集要綱」、 「一般社団法人ニューオフィス推進協会30周年記念誌」、「NOPAオフィス基礎講座テキスト」を参考にしています)

一色先生

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ライタープロフィール

コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。

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