ライター:一色先生
2022.02.07
こんにちは、一色です!
今回は「知っておきたいオフィスの歴史」を紹介します。
この記事を読んでいるアナタは、会社のオフィスや自宅のオフィスコーナーで日々仕事をしていると思います。
豊かな人生を送るためには、住まいが大きな関わりを持つように、豊かな働き方をするために、働く環境としてのオフィスは重要な存在です。働き方が変わればオフィスに求めることも変化します。
2000年以上前の古代ローマ時代では既に[儀式・義務]を意味する[officium]という言葉が成立していたそうです。当時は場所を示す言葉ではなく、地位を意味したようです。
働く場所としてのofficeが出てくるのは、14世紀のルネサンスの頃と言われていますが、時間と場所を共有し、集まって働く事務作業のために施設が必要になったのは産業革命の頃のイギリスと言われています。
今回は、今までどのような働き方で、どのようなオフィスがあったのかについて、振り返ってみましょう。
これからのオフィスを考えるために、基本的に把握しておくべきオフィスの概念と形態の変遷について、
今回は1~5までを、6のオルタナティブオフィスについては次回に説明します。
1.コリドーオフィス
2.クローズドオフィス
3.ブルペンオフィス
4.オフィスランドスケープ
5.オープンプランオフィス
(6. オルタナティブオフィス)
1.コリドーオフィス
タイプライターが生まれたのが1870年ごろです。
昔はタイプライターを叩く音がうるさかったので、廊下を挟んで出来るだけ沢山の個室を作って防音し、集中できる環境を作ることに主眼が置かれていたようです。
石造りの建築的制約から柱が多く、照明器具も発達していないので窓からの外光が届く範囲で作業をする必要がありました。コリドーとは廊下のことでコリドーオフィスの特徴はオフィスには廊下を挟んでたくさんの個室があること。
各部屋に執務室や会議室などの機能を持たせて、必要に応じて移動していたようです。
2.クローズドオフィス
業務機能別、部門別等のグループ単位で、プライバシーを確保するため、小さなスペースで区切った小部屋をつくるオフィス形態。
集中作業や、機密を重視する仕事、騒音が発生するような仕事に向いています。
チーム間のコミュニケーションが不足する、スペースの柔軟な活用ができないなどの欠点があります。
3.ブルペンオフィス
工場の生産性向上の管理手法をそのままオフィスに適用し、オフィスの生産性を高めることに重点を置いた管理型オフィスです。同一方向にデスクを配置し、業務を後方から前方へ流れ作業として効率化しています。
管理職は個室に、監督職はデスク配列の後方または側面に位置し、業務プロセスを管理監督します。
ブルペンとは、元々は牛(ブル)を囲う場所という意味だったそうです。
野球の中継ぎピッチャーが肩慣らしをする場所が有名ですが、同じように囲われているのでブルペンと呼ばれるようになったという説もあります。
現在の感覚では、こんな窮屈な思いをして働きたくないと感じますが、与えられた仕事をいかに処理するかということが課題だった時代では必要とされていたオフィス形態だったようです。
補足:科学的管理オフィス
科学的管理法とは、20世紀初頭にテイラーが提唱した工場の作業手順の合理化を図るための管理手法の一つです。労働者は生産工程の一部を受け持ち、ベルトコンベアに流れる部材の製造、組み立てを機械的に作業する働き方です。
1920年代の米国で、この工場の取り組み方をオフィスに反映したものが科学的企業経営オフィスです。オフィスでの働きを工場と同様に流れ作業として捉え、オフィスで働く人を機械の一部のように配置する考え方です。
業務プロセスをベルトコンベア化して生産性向上を図るブルペンオフィスとして展開されることになりました。
4.オフィスランドスケープ
1958年にドイツの経営コンサルティング会社であるクイック・ボーナーチームが開発した近代オフィスの原形。
生産性を高めるために何をすればいいかを徹底的に考え、組織図を基にレイアウトするのではなく、組織間や個人のコミュニケーション密度、情報の流れ、オフィス内の機能的スペースとの関係性を分析してレイアウトに反映しています。
オフィス内を壁やパーテーションで仕切る旧来のオフィスレイアウトとは異なり、固定的な壁等で仕切らない開放的な空間のなかで仕事をするというコンセプトのレイアウト方式です。
仕切らないことで、多様なレイアウトを実現でき、組織間のコミュニケーションや情報の流れに対応した家具を配置できます。オフィスのレイアウトに対する考え方に大きな影響を与えました。
筆者がオフィスレイアウトを業務にしていた1980年ごろにこのオフィスランドスケープの考え方に触れて、島型対向式ではないこのようなレイアウトプランが存在するんだと、とても驚いた記憶があります。固定的なものを設置しない、オフィスの中をふらふら歩き回れる、コミュニケーション接点が多くある、など現在のクリエイティブオフィスに近い考え方でもあります。
5.オープンプランオフィス
1967年、オフィスランドスケープが米国に渡り、ブルペンオフィスから変化したオフィス形態。
空間を仕切らずに、業務特性の機能に応じた設備をもつワークステーションで構成します。
人間重視の環境、コミュニケーションに基づく配置と変化への柔軟な対応をめざしました。
デスクとパネル、キャビネットを組み合わせて仕事に集中できる環境を作ることができます。
パネルをローパーティションとすることで座れば集中環境、立ち上がればコミュニケーションもとれるオフィスプランニング手法です。
現代のオフィスの基礎となるコンセプトと言えます。
今回はここまでです。
次回は伝統的なオフィスの考え方を大きく変えるきっかけとなった
オルタナティブオフィス戦略について概要を紹介します。
オルタナティブとは「代わりの」「代替の」という意味です。従来のオフィスの考え方を大きく変えるトレンドを生み出しました。
フリーアドレスオフィスやノンテリトリアルオフィス、ユニバーサルプラン、モバイルオフィスなども、このオルタナティブオフィス戦略がきっかけとして誕生しています。
今後のオフィスを考えるうえでのヒントも多く出てきますので、ご期待ください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
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