ライター:セッキ―
2024.06.21
来年15周年を迎える、SO(そう)グレイスクリニックで総務兼事務長を務める堀川久子さん。皆さんから「ヒサコさん、ヒサコさん」と呼ばれるとってもお上品な奥様で、正直言いますと(あれ?総務の人だよね?来るところ間違えたかな?)って思いました!(汗
20代で地元滋賀で結婚、出産を経験、育児に奮闘。子育てが落ち着いてきた30代では念願だった花屋さんを開業し経営者に。軌道に乗った40代半ばごろ、脳外科医である兄が都内で美容クリニックを開業することとなり、その準備や運営を頼まれたことをきっかけに、故郷の滋賀を出て全面的にサポートすることになったそう。
その仕事内容は、クリニックの清掃から院長の身の回りのお世話まで多岐にわたります。医療分野の経験もなく不安なうえに身内であることの苦悩も…
今回は一般企業とは全く違う世界である美容外科クリニックでのお話。殺伐とした日常を送る自分に改めて気づかされる取材でした。
――今のお仕事の内容や体制について教えてください。
堀川さん(以下、敬称略):2010年に開業して以来、ずっと総務という事務局の立場で携わっています。美容外科とはいえ個人経営の小さいクリニックですので、明確な業務の区切りはありません。朝は掃除に始まり、患者様を迎える仕度、電話対応のほか、院長の秘書業務やスタッフの勤怠管理、レーザー等設備購入の手続きなど。施設の害虫駆除や工事の付き添いなどがあることもあります。
院長以下、看護部長と正看護師ナース1名と私で品川院を切り盛りし、大阪院には正看護師1名とカウンセラー1名、総勢6名で運営しています。役職に関係なく、ゴミが落ちていれば拾いますし、みんなでクリニックを大事にしてイキイキと仕事しています。
――素晴らしいですね。一般企業の総務さんをイメージしているとその人数でよく回せますね、といった感じですが…仕事の幅がすごく広いですよね。
堀川:開院当時はスタッフが10人くらいいたので、私は裏方でのんびりしてました(笑)。当初は、金庫番の役割だったはずなんですけどね。開院半年くらいで大阪院を立ち上げることになって。普通は業者さんに任せるものかもしれないですが、「自分たちで働く場所だから自分たちで作りたい」という気持ちになって、物件探しから図面引くのもみんなで取り組んだんですよ。床材も壁紙もなにもかもです。クリニックで働くことが初めてのカウンセラーさんもいたので、どうしたら動きやすいか、とみんなで話し合って。
その頃から、こんなに看護師さんて大変なんだ、やること多いんだ、もっと私がやらなくては、という意識に変わっていきました。
――2拠点生活をしていたのですか?
堀川:私はほぼこちらにいましたが、院長が東京と大阪を行ったり来たりで、私は空港までの送迎ドライバーでした。
身体にしみついたおもてなしの心
――立ち上げ時期って、大変だけど一番記憶に残る出来事として刻まれていたりしますよね。
堀川:そうですね、その時期のスタッフさんは早々に入れ替わりましたし、安定するまでは眠れない時期もありました。当院はお電話で対応するんですけど、いただく電話はすべて受けたい、24時間対応したいという気持ちで転送電話を寝床に持って行くんです。あるとき、深夜の2時くらいですかね、ちょうど寝に入ったときに電話が鳴って。そうしたらお客様の方が「あ!出た!」って、逆に驚かれました(笑)。
――それは驚くかもしれませんね(笑)。このクリニックを守るんだという気概が感じられるエピソードだと思います。ただなかなか他の人にはマネできないというか、、、ちゃんと休む時間もなかったのでは?
堀川:そうですね、そのころは。美容のお悩みというのは夜おひとりで考えることが結構多いので、結構夜の時間帯のお電話は多いんですよね。ネットなど便利なものは取り入れたい気持ちもあるのですが、最近ようやくLINE予約の対応を始めたくらいで。それでもやっぱり電話応対は大切にしています。
院長のカウンセリングはお一人に2時間かけるんです。その予約の調整をするのにネットでは難しくて。お電話でなるべく必要最小限の情報をお聞きして、院長に伝えて準備して当日に臨んでもらう、というのをずっとやっているんです。1日の患者数は決して多くないのですが、滞在時間も長いですし、しっかりと一人ひとりをおもてなしする、というのが理念です。
――すごく丁寧に、細やかに対応してらっしゃるんですね。先ほどこちらに着いてからの印象と今のお話がマッチしてすごく納得がいきました。看護部長さんに玄関でお迎えいただいた際の柔らかな物腰と、包み込むような雰囲気。もう空気が違いました。
堀川:感じていただけたんですね、嬉しいです♪スタッフさんたちね、朝来るとよく「ただいまー」って言うんですよ。私は「東京の母」なんて言ってもらえたりしてね。患者さんはもちろんですが、働くスタッフも居心地がいいと感じてくれてるのかなと思います。
――過去の出来事で一番苦労されたことはどんなことですか?
堀川:もう毎日が大変で過ごしていますけど(笑)。開院して2-3年目の頃、豪雨が降った夜に事件が起きました。私がまだ都内に自宅を構えていなくて、ここの地下室に寝泊まりしていたんです。入口からスロープがあってさらに2階降りるんですが、夜寝ていましたら、ちょろちょろ…と水の音で起きて、ぶ厚い鉄の扉なんですけど、開けたらドシャ―――っとすごい勢いで雨水が入ってきたんです。どうやら前の道路の排水溝にゴミがたまっていて流れず行き場を失った水がゴミと一緒に全部こっちに流れてきてしまったんですね。
実はその部屋にはサーバーが置いてあって。高価だしすごい重量なんですけど、電子カルテを守らねば、と寝巻のままで“火事場の馬鹿力”ですよね、ひとりでそれを持ち上げて、移動させたんですよ(笑)。
――結構ガチなハプニングじゃないですか!(笑)
堀川:そうでしょう?(笑)サーバーは無事守りました。それからゴミを掻き出して、お掃除して、水がスムーズに流れるように周囲のマンションや区に調整したりしましたね。一度水が入ってしまったんでもう地下には住めなくなりましたから、しばらく家を点々としましたね。
――そのお部屋で堀川さんが寝てたからこそサーバーを守れたということですよね。だれも居なかったら高価なサーバーの破損はもちろんクリニックが大変なことに…。
堀川:そうですそうです。でも休憩室がなくなってしまってみんなに申し訳ないとは思っています。
▼雨水がたまったラインの跡が残る地下室の扉
暗い空気はみんなに伝染する
――お仕事をするうえで心がけていることはありますか?
堀川:話しやすい状況を作ることは意識しています。どうやったらスタッフみんながイキイキと楽しく仕事をできるかなと考えます。たとえば院長にすごくチャレンジングなことを言われたスタッフが、あとでため息をついていたとしますよね。もしそうなったら、とにかく最後まで話を聞きます。私が身内だからとか全然気にしないで、なんでも全部吐き出させてあげること、それしかできないですね、逆に。
院長の妹だ、と思うと遠慮して言いづらいこともあると思うんですよね。でもだからこそ私の方から歯に衣着せず言うようにしています。
――兄妹という事実は変えられないですもんね。
堀川:それが弊害になってはいけないですからね。スタッフが明るい表情でいてくれることが一番、それがクリニックの良さにも繋がります。空気が暗いとみんなに伝染して患者様にも伝わってしまいますからね。
※このタイミングで電話が鳴るのですが、ものすごい速さで取りに行かれていました※
堀川:あと、食事も大事にしています。長期休みの時期は大きな手術をなさる患者様が多くて、1日中オペが入るという日が何日も続きます。ゆっくり食事なんてとっていられないので、おにぎりとか軽食とかさっと食べられるようなものを準備しておいて、合間に食べてもらうんですよ。
――お、お母さん・・・涙
堀川:(笑)
――本当に、気が付いたらなんでもやられる姿勢なんですね。何か参考にしている本とか人とかあったら教えてください。
堀川:私、お笑い芸人のみやぞんさんが好きなんです。彼のモットーで、「機嫌の悪いのは自分でなおせ」っていうのがあってね。最近これが気に入ってます。それと、「なんでもやる」。これに尽きます。
――なるほど!機嫌が悪くなったときの直し方は?
堀川:私あまり機嫌悪くならないんですけどね(笑)。なるべくネガティブに物事を考えないように心がけています。例えば、何か物をなくしたときは、新しく買い替えるチャンス!と思うし、健診で悪いところが見つかったら、いま見つかってよかったじゃん!みたいに良いようにとらえるようにしてます。だからみんなが落ち込んでるときにも、そういう言葉をかぶせちゃいますね!
あとは、お酒です(笑)。
――いつもポジティブに!いいですね、シンプルですけどなかなかできないことです。では、“なんでもやる”は堀川さんの信念ですか?
堀川:はい。嫁いだときからお舅さんの家業をお手伝いしてきまして、姑さんから仕事のやり方、人付き合いのことなど何から何まで学びました。ろくに社会経験がなかった私ですが、役に立ってる実感があって、毎日フル回転でしたが楽しかったです。
今もね、自分のことは1割で、それ以外は何の仕事が割合か、なんてわからないくらい境界線がないんです。院長の身の回りのお世話でも全部クリニックのことだと思ってなんでもやっています。
自分しかいない、って思うことが私の仕事の向き合い方ですね。
今日はありがとうございました!
◆編集後記◆
いかがでしたか?
正直まったく異世界に入った感じでした。いつまでもいたくなるようなふんわりとした居心地の良さがありました。思いやりを持って聞く、とにかく一度受け留める、そんな姿勢が心理的安全性を生んでいるのだなと感じます。
すごくゆったりまったりとしているのかと思いきや、ひとたび電話が鳴ればものすごいスピードで席を立たれるその背中に、大きな“責任感”の文字が見えました。
休みらしい休みも取らなかったほど、この15年間その身をささげてきた堀川さん。佇まいも口調もどこから見ても上品なマダムなのですが、とてもアクティブでピンチをピンチととらえないような気概のある方でした(お酒もめっちゃ強いですし)。
深夜の電話対応、職場に寝泊まり、お身内のお世話、スタッフの食事も用意、、、となかなか一般企業では見受けられない職務内容ではありましたが、“人生に一度くらい寝食忘れるほど没頭する日々”があってもいいんじゃないか?そういう経験ってきっとどこかで糧になる、そんな気持ちにさせていただきました。お身体に気を付けて、皆さんと二人三脚で頑張っていただきたいです。
プロフィール | 堀川 久子(ほりかわ・ひさこ)
SOグレイスクリニック/総務兼事務長 地元滋賀で早くに結婚、子育てを経験。子育てが落ち着き、念願であった花屋の事業経営を開始。40代半ば、兄である現院長が品川に開院する美容外科クリニックの事務長として招かれる。以来、院長の秘書業務、スタッフのケア、患者対応、クリニックの経営管理から雑務まで、15年にわたり事務長として従事。基本的に“なんでもやる”がモットー。 |
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Information | SOグレイスクリニック https://so-graceclinic.com/
※現在一緒に働く仲間を募集中とのことです。社員には毎月2万円の美容報酬が…♪ご興味のある方はお問い合わせを。 切らない目の下のクマ・たるみ取り術、クイックチタンペックリフト®(切らないフェイスライン引き上げ術)など、元脳外科医の院長近藤氏が独自開発した施術法で多くの患者に美を提供している。来年15周年を迎える。 東京本院:東京都品川区北品川5-16-25 大阪院:大阪府吹田市江坂町1丁目13-48HF江坂ビルディング 2F |
ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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