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気になるこの人!
オフィスに関わるあんな人こんな人、ご紹介します!

ライター:セッキ―

2023.08.15

古渡大
「建築デザインから鉄工職人へ―鉄に寄り添うものづくり」
鉄工ブランド「十てつ」代表

今回のインタビューは、鉄を扱う職人さんです!
鉄を使った雑貨、家具、照明器具等を製作・販売している鉄工ブランド「十てつ(とてつ)」を運営されています。

筆者は毎日WEBメディアの『TECTURE MAG』(以下、テクチャーマガジン)をチェックしていて美しい建築物の写真たちに癒されているのですが、実はここに深くかかわっていた人物でした。

古渡大(ふるわたり・だい)さん。

大学院を卒業されてからなぜ鉄の職人の道を選んだのか。どんな思いでどんな作品を作っているのか、オフィス家具とのコラボはあるのか?など、自然あふれる茨城県常総市のアトリエで、お話を伺ってきました。

――うわぁ、、、久しくこんなところに来ていないので新鮮です。すごく雰囲気のある場所ですよね。

古渡さん(以下、敬称略):もともと昔は機織工場だった場所で、ここ(アトリエ)は控室みたいな場所だったようです。2015 年の水害でひどい状態になっていたこの土地を安く買い取って、家族で少しずつ改修してきました。はじめにこの奥の古物屋がオープンして、次に母が運営するカフェ、そしてこのアトリエ、と順番に。

この工房自体は 2022 年の年始からオープンしたんです。1年半ほどかけて床をはがしてコンクリート流したり、壁にモルタル塗ったりといろいろ手を加えて今の状態に。

▼「十てつ」アトリエ入口

▼お母さまが運営するカフェ「FURU」

――ではまずご経歴から教えてください。

古渡:大学院まで建築のデザインとプロダクトデザインを勉強 していました。その後2019年からtecture株式会社に入社して、事業の立ち上げメンバーとして2年ほど勤務しました。

――一般企業に入社しなかったんですね。

古渡:就職活動はせず、卒業後半年くらいは働いていませんでした。新規事業の企画するみたいなことに興味があり、ビジネスプランコンテストに応募してその賞金で生活してた時期がありますね。そんなことをしながら、「建築業界でそういうのないかな」と探していたら、tectureの事業スタートの話を聞いてすぐ連絡しました。

WEB上で紹介する建物の中で使われている素材や家具などにピンを貼って、ピンをクリックしたら詳細の情報を確認できるという検索サービス (下画像:tecture公式サイト)の立ち上げに携わりました。プログラミングするエンジニアとコミュニケーションとりながら、ここにこういう機能が必要だ、とかワイワイやってきました。

――その機能知ってます!すごく便利ですよね。すごく建築家さん向けに気持ちを込めて作られているなと感じてました。

古渡:テクチャーマガジンというWEBメディアも、企画・立ち上げ段階から参画しました。社長は建築家が必要とする情報を提供したいという想いで立ち上げたようです。僕が社員第一号として入社したのですが、オフィスはもちろん、まだ何もない状態で(笑)。建築事務所の一角でイスと机しかなくて僕と社長だけ、みたいな。

――そこを2年ほどで離れて、職人の道に。


古渡:もともと自分で何かやりたいと考えていて、それらの事業(検索サービスとメディア)の立ち上げが一通り完成して1年ほど運営に携わった後に退職しました。もともと父が建物の溶接をする溶接工で、家に鉄を扱う機材があったんですよね。毎週末には茨城に帰っていたので、そのたびにその機材を使っていろいろ作ってみて、鉄の扱いに慣れてきた頃にスタートしました。

とりあえず何もわからない状態で、ゴンゴン叩き始めたんですが、伸びてお椀みたいになったり、熱してみるとすごく柔らかくなったり。そんなことをしてたら面白さがわかってきて。機材は、ある程度慣れてきてからプロダクト制作に適したものを少しずつ買いそろえていきました。建築家と一緒に仕事したかったので、照明器具から作り始めました。

――同級生はどんな反応でしたか?大学院を出て、一般的には建築家になる方が多いのでしょうか?

古渡:大学の知り合いの多くはハウスメーカーや設計事務所が多いですね。

――「古渡、どうした?」ってなりました?

古渡:そうですね(笑)。まあ最初は、「なんで鉄叩いてんの?」とよく聞かれましたが、気にせず叩き続けました。

鉄の魅力、可能性をこめて名前に

――改めて、鉄の魅力を教えてください!


古渡変幻自在なところが魅力です。鉄は加工性が高いので作る側の創造力をかきたてます。溶接して部材同士をくっつけたり、熱を与えて曲げたり、叩いて伸ばしたり、穴を開けたり。仕上げかた次第では質感を変えられたりもします。また、塗装しなくてもいろんな色にできるんです。

――色ですか?

古渡:これは一本の鋼材ですが、虹色みたいになっていますよね。火力の強さを変える―つまり酸化の具合で色を変えているわけです。この中の一部の色味を取り出して塗装の代わりにすることもあります。

鉄は錆びることが弱点でもありますが、見方を変えれば錆は経年変化を楽しめる要素ともいえます。

――なるほど、錆すらも味になっていくわけですね。人間でいうと老化を楽しむみたいな…完全に鉄に魅せられてますね。

――ところで「とてつ」という名称はどんな想いからでしょうか?

古渡
:「○○と鉄」という意味です。別の素材や、人・シーンなど様々な組み合わせが可能な名前にしました。

▼「とてつ」のロゴ。十→「と」、「て」と「つ」の湾曲したところをつなげるようにして〇のマークのような形になっている。

――なるほど。建築家とのコラボも含まれているイメージですね。ご自身の強みはどんなところですか?

古渡:大学院まで建築設計を学んで職人側に回る人はなかなかいません。デザイナーがなにかを作ろうと思って工場に行くと、デザイン言語が通じない、みたいなことが結構あるんですよ。打合せなんかもまともにさせてもらえない、みたいな。僕の場合は一旦その業界を通ってきているので同じ言語で会話ができる、というのが強みかと思います。

――たしかに!それは強みですね。

――今までに受けたお仕事ですごく印象的な依頼(作品)があったら教えてください。

古渡:そうですね、個人宅に納品したテーブルの脚です。どんな形の一枚板でもきれいに置くことができる鉄の脚がほしい、という依頼でした。建築家との共同制作だったのですが、これは結構骨が折れましたね。

下から見るとこのような感じです。両側からガチャッと挟むような仕様で、どんな板でも挟むことができて安定しています。

一枚板を引き立てるためにはなるべくシンプルにしないといけないし、また「板にはビスも打ってはいけない、傷をつけない、ただ置くだけ」というのが条件だったんです。さらに言えば、ブレース*もつけてはいけなくて、固定せずに揺れないように頑丈に、というのが非常に難しかったですね。

――素人でもなんとなくそれは大変そうとわかります・・・すごくシンプルでステキです。

*四角形に組まれた骨組みに対角線状に入れた補強材のこと。

――アイディアを出すときはなにか参考にしたりするんですか?

古渡:まずはスケッチや図面を描いてその通りに作ってみる。その制作の過程で気づくことがあるんです。その気づきをプロダクトに取り込んでみる、 という感じです。

この茶香炉も、性質に気づいてできたプロダクトです。ココ(二段目のお皿の穴)に細い脚を差し込むんですけど、脚が開こうとする性質を利用してお皿を安定させる、という仕様なんです。これ以上脚が細くなると折れてしまうし、太くなると柔らかさが失われてしまう。

十てつオンラインショップより

スケッチや図面の線だけだと柔らかいのかどうかも気づけないので、やはりとりあえず作ってみる、というのが僕のやり方です。

たまに建築家の人にも気づかされることがあります。「普通の鏡は割れるけど、鉄板なら割れない。磨いてみたら」と。じゃあやってみますと、鏡みたいになるまでひたすら研磨し たことも。僕が発見できないようなことを教えてくれることがよくあって、それもありがたいです。

――職人としてモノ作り、というと孤独なイメージがちょっとありますが、そういったアイディア提供もあるんですね。これまで周囲の方から価値観に影響を受けたようなことはありますか?

古渡:価値観とまではいいませんが、ありますね。この辺りでこういう活動をしていると、もの珍しさから近所のおじいさんが様子を見に来ることがあるんですよ。ガヤを入れに来るというか(笑)。修理が得意な古物商のおじいさんだったり、漆の工芸家だったり、ものづくりにわりと近い場所で生きてるような人たちです。

「ハンマーの柄の部分をちょっと削ると軽い力で打てるようになるよ」とか
「漆の焼き付け方はこのくらいの温度だときれいにいくよ」とか

たまに本当に貴重な知識をくれる時があります。大きい工場のように設備が整っているわけではないし、どこかに弟子入りしてたわけでもないので、そういう知識がありがたいんです。単純におしゃべりしに来ただけ、みたいなときもあるんですけど(笑)。

――人付き合いからうまれる会話、ほほえましい^^ どんな仕事でも周囲との人間関係は大切なんですね。


多くの人に手に取ってもらいたい

――これからの展望をお願いします!

古渡:いまは建築家に依頼されたものを特注で作っているのですが、それらを商品化して販売する、というのを進めています。それをちゃんとカタチにしたいですね。建物の中に入れて終わり、ではなく誰でも手にすることができるようにしたい。ラインナップとしては図面に入れられるようなアイテムがメインで、例えば【照明、テーブルの脚、玄関のドアハンドル、タオルバー、トイペホルダー、ベンチ、植木鉢】など。

建築家さんたちに「鉄製品なら『十てつ』で」、と言っていただけるようになることが当面の一番の目標です。

――応援しています!頑張ってください。今日はありがとうございました!

セッキ―

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ライタープロフィール

整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!

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