森永製菓R&Dセンター【後編：インタビュー】総務経験ない所員で盛り上げたPJ、一番の変化は所員の意識

今回は前回の【前編：オフィス紹介】でご紹介した、森永製菓R&Dセンターの新築プロジェクトについて、プロジェクト担当の方にインタビューした内容をお届けします！
◎前号⇒【前編：オフィス紹介】徹底した“見える化”で、つながりと共創のラボへ！

服部 絵美様
森永製菓株式会社研究所
研究開発戦略部　企画グループ
主任研究員　

――改築のきっかけについて教えてください

服部さん（以下、敬称略）：今回取材いただいた研究開発センター、R&Dセンターの改築は、鶴見工場全体の再編計画の一環です。鶴見サイトは他拠点とは違って、工場のみならず研究所、森永エンゼルミュージアムMORIUMなど、ブランディング機能も含めた森永製菓全体でも稀有な位置づけなんです。

下図でご覧いただける通り、いくつもの建物で構成されていますが、なにしろ大正14年に鶴見工場ができてからの歴史ですので、建物も古く老朽化も気になるどころか、耐震の観点からも建て替えは必須という感じでした。

――たしかに、それは防災の観点からも気になりますね。

服部：会社全体の方針として、『森永製菓グループは、2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。』と、2030ビジョンを発表しているんです。顧客・従業員・社会に、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける企業になるべく、様々な取り組みを進めています。

R&Dセンターについては、2018年に新築を決定しプロジェクトを進行してきました。目的は、「社内外の共創の促進」、「技術の強化」の2つで、研究員にも議論に入ってもらいました。自分たちの使うオフィスですから研究員自らが考案しなくては意味がない、ということで、プロジェクトの約3年を通じて3分の一ほどの研究員に何らかの形で関わってもらった形です。

――旧オフィスとの一番大きな変化はどんなところですか？

服部：今までの歴史の中で、途中で事業が拡大したこともあり、ご覧のように各部署が使用する研究室がちりぢりばらばらになっていました。当然コミュニケーションの壁にもなりますし、作業効率も非常に悪かったんです。

――こ、これは使いにくそうですね・・・こまごまと分かれているうえに、壁で全部仕切られているんですもんね。それが、前号で紹介したように、ガラス張りの大きな試作室に変わったんですね。

服部：はい！ウェットとドライの試作環境に合わせ、
　　１：チョコ、ビスケット・スナック
　　２：キャンディ、アイス、飲料ゼリー
の2つの大部屋に集約しました。

風土の面でも課題はありました。研究職というとどうしても部屋にこもりがちで、壁があったらなおさらです。そして自分たちが使う機械がいつもそばにあるという環境ですから当然使いやすいですが、そこに居続けてしまい社内外のつながりは強くなりませんし、チャレンジ精神の促進の妨げにもなっていました。

PJでは、その辺りの課題をどんどんポストイットに書き出して貼りまくってもらって、若手中堅を中心に取りまとめていった感じです。

今回コンセプトに「Open Sesame」と「morinaga SEEDs Lab.」を定めているとおり、壁を作らないフロア構成により見える化を意識していて、「ここではいまこんなことをやっている」というのがよく見えるような作りになっています。

「つながり」を生み出すしかけとしての吹き抜けや、内階段なども大きな特徴です。

――そういえば、研究員さんのオフィスですから、オフィス移転に詳しい方というか総務担当みたいな方はご不在ですよね？

服部：そうなんです。研究員自らが、オフィス構築素人集団という状態で、なんとか頑張ってきました。

――これだけ大規模な施設全体の改築PJですから大変でしたでしょうね。

服部：はい、R&Dセンターだけでもかなりの長期間に及ぶPJです。モチベーションを保ち、自分事化してもらうためにPJの進捗状況は、広報誌を作成して共有していました。

――え、広報誌、すごいしっかりしてますね！！

服部：ありがとうございます！子どものPTAで広報を担当した、など経験がある人が自主的に参戦してくれて（笑）。全部で30回ほど発信されました！所員へのアンケートも頻繁にとりましたし、また、旧棟内に新規エリアを仮設置して体験してもらったりしたのも、所員をうまく巻き込んで「自分事化」してもらえたのではないかと思います。

家具の選定などは、これまで画一的な什器しか使っていませんでしたので、楽しくやっていましたね。特に2階のオフィスや集中エリアの什器。

――いや、あれは楽しいです。楽しく選んだのだろうな、というのが想像できます♪

服部：やはりビスケット担当はビスケットの部屋で会議を、というように愛着が湧くようですよ。テンション上げたい議題のときは真っ赤な部屋を使う、なんていうのもあるようです。

――すごくいいと思います～♪所員さんからは感想などお耳に入りますか？

服部：移転してきて最初に研究員から言われました。「先日、部署横断での少し重めの会議があり、4階の“キャラメル”の部屋でやったことがあった。会議室が閉鎖的だった時のような暗い感じでなく、“どうしたらできるか”、という前向きな意見が出るようになった」という話でした。すごく嬉しい変化です。

――あの3面が窓ガラスでテラスも見える、日差しの気持ちいいお部屋ですね！それは嬉しい言葉ですね！

服部：はい、この部屋で営業の商談が行われることもあるんです。本社のメンバーもほとんど毎日見かけるようになりましたね。

――1年が経ちますが、現状なにか課題は挙がっていますか？

服部：ABW、フリーアドレスにはだいぶ慣れてきたと思いますが、いつも同じ場所に座ってしまう、会話が途切れるなどの問題があります。シャッフルして交流できるしかけを入れていこうということで、例えば出身地や趣味でエリアを指定して座るというイベントも実施しています。

また、毎月かなりの数の新商品が出るのですが、同じ会社にいても自分の部署以外の新製品を知らない、という事態が発生します。そのため発表会や試食会などをやるようになりました。そこで意見や人気投票をやってみたりと、大階段の周辺でやりやすくなりましたね。

▼MVP（Most Valuable Product）の投票会の様子

――試食会…いいですね！ぜひ呼んでください！
じゃなくて（笑）、集まってできるのはオフィスの醍醐味ですよね！目的どおりにスペースを使いこなせていて素晴らしいです！

これからも素晴らしい製品が生まれることを期待しています！ありがとうございました！

●取材を終えて●

研究員という職種。筆者のような素人の発想では、研究というと部屋に閉じこもって黙々と作業に専念する、というイメージがあります。そしてそれを好む所員も少なからずいることでしょう。

ガラス張りにすることによって、物理的な不便さのほか、所員からの抵抗もあったとは思いますが、それらを乗り越えて「見える化」「共有化」への意識改革を行ったことは本当に素晴らしく、同社の今後の発展に大きく影響すること間違いなし！ですね。実際に所員さんたちの動きに変化が表れていることも素晴らしいです。

同社の新たな魅力的なお菓子の誕生にも興味津々ですが、意識改革を行った所員さんたちの働く姿にもフォーカスしてみたくなりました。