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気になるこの人!
オフィスに関わるあんな人こんな人、ご紹介します!

ライター:マーシー

2021.05.21

中小企業の経営者の背中をそっと押す存在になりたい
株式会社なないろのはな 代表取締役 橋 亜希子

日本の労働生産性は、先進7カ国で最下位、OECD加盟37カ国中で26位という状況(2019年・公益財団法人 日本生産性本部の資料より引用)が報じられ、政府も「デジタル庁」創設に向け本格的に動き始めました。政府主導によるDX化が推進される中、中小企業のデジタルシフト支援にいち早く取り組まれてきた会社があります。今、全国の中小企業の経営者から注目を浴びている、株式会社なないろのはな(本社:石川県金沢市)の代表取締役である橋さんにお話をお伺いしました。

苦手だった事務の仕事で起業しようと思った理由
―まずはご経歴を教えてください

元々、人と接するのが好きで、最初に接客販売の仕事に就きました。その当時は、自分は事務系の仕事なんて向いていないと思っていました。その後、結婚して子どもが生まれ、接客販売の仕事を退職。子育てをする中で、再度働きたいという気持ちが芽生えます。ある程度固定の時間で仕事ができ、子育てと両立できるのは何だろうと考えた時に、頭に浮かんだのが、以前は想像もしなかった「事務の仕事」だったのです。当時はそれしか選択肢がなかった。子どもをゼロ歳で保育園に預け、製造業の事務の仕事に就きました。そして複数の部署で事務の仕事をこなすことになりました。

その後、石川県内で初となる介護付き有料老人ホームが開設することになり、スタートアップメンバーとして、転職・入社しました。県内初の終身契約ができる有料老人ホームだったので、規則も何も整っていない中での業務開始。ルールや仕組み作り、介護や労務の法令遵守のための書類作成、各業務のオペレーションの構築など、手探りでみんなと一緒に作り上げていきました。当時は幼い子どもを持つ女性社員も多く、施設の利用者がどんどん増えていく中で、介護職員の業務量も増加。子どもの体調不良で休みにくいという職員からの不安の声があがったため、NPOの病児保育を設立。働く環境を整えることにも取り組んだりしていました。

施設の運営元は株式会社だったので、多角的にいろいろなことを手掛けていました。そこの総務担当者として実務を取り仕切る役を、当時担っていたのです。ただ、総務の仕事だけでは自分のスキルアップにはつながらないと考え、ケアマネージャーや相談員への転身を目指し、まずは介護福祉士の資格取得にむけて、介護現場にも入りました。当時はただただがむしゃらに仕事をしていたように思います。

―何かを始めたらとことん極める橋さんのお仕事に対する姿勢が表れていますね。そこからどのようにして橋さんは起業へと進んだのでしょうか?

介護付き有料老人ホームの運営会社で11年間勤務したのち、知人の社会保険労務士事務所で事務の仕事を始めたのが、39歳のときでした。とても興味のある仕事ではありましたが、40歳という節目を前に自分のこれからを考えたとき、そこを深めるよりもこれまでの経験を活かしもっと幅広く仕事をしたいという思いが強くなりました。

そこで「もっと楽しく、やりたい仕事を選べる環境を作りたい」と当時の勤務先の社労士さんに伝えたところ、「社労士事務所の仕事と個人事業を2つ同時にやってみたら?」と背中を押してもらい、新たな一歩を踏み出しました。それが2016年2月のことです。

―橋さんの背中を押してくれる方がいらっしゃったのですね。ところでとても素敵な社名ですが、由来を教えてください

個人事業を行う中で、企業の理念、個人の個性は、何一つとして同じものはない何万通りの「いろ」なのだと感じるようになりました。相手の色を知り、自己の足りない色を補うことで、企業も個人もさらなる力を発揮できる。その色の組み合わせの“コーディネート”を行いたいと考え、2018年に法人化。数字の「7」が好きだったのと、「バックオフィス」や「事務」という表現にこだわりを持たずに、広い活動につなげられる名前にしたいということで、平仮名で「なないろのはな」と名付けました。文字数にもこだわり、7文字にしました。

実は自分の娘の名前にも、一花(いちか)という「はな」をつけています。当時は、色とりどりに咲いて見る人を元気する花のように、明るい元気な子になってほしいと思っていましたが、会社を作るときにも「はな」を付けるとだれかを元気にできるのではという思いがありました。ちなみに当社のロゴは、人とのつながりを表すものにしました。「人」が7人手をつないでいるイメージです。

なないろのはなの「ロゴ」

中小企業を置き去りにしてきたDX化の議論
―人との縁を大切にしようとする橋さんの思いが詰まっていますね。次に、企業のDX化の現状と課題についてお聞かせください

当社のお客様は、従業員数100人以下の規模の会社がほとんどなのですが、今、世の中でさかんに語られている「DX」、「テレワーク」、「ジョブ型」や「週休三日制」というような今をときめくキーワードは、大企業の世界だけで語られているもののように感じます。従業員数100人以下の中小企業では、今も受発注にFAXを使っている、ビジネスチャットツールなんて全く導入できていない、というようなところがまだまだたくさんある

もちろんそれ自体が深刻な社会的課題なのですが、その原因は、これまで中小企業の業務の生産性を高めることに向き合い、寄り添う人がいなかったという点にあります。大企業には、社内にシステムエンジニアがいたり、資本力を活かして外部の専門家を雇ったりすることができますが、中小企業は常に自社のことで精一杯です。サービスや商品を売るサイクルを必死で回すことで、なんとか人件費を捻出している状態です。

生産性を高めようとしても、誰にも相談すらできない。そこに突然、DXを活用して現状を変えなさいと言われても、どうすれば良いかわからず、途方に暮れている。そういう経営者の方々は本当にたくさんいます。もっと早い段階で、社会がこの問題にてこ入れすべきだったのではないかと、強く感じています。また、当社のような会社が世の中にもっとたくさんあれば、中小企業のDX化はもっとスピーディに進められると思っています。

ただ、そんなことを言っていても仕方がない。一刻も早く手を打つべく事業を進めているのですが、そうした課題を解決できる人が、まだまだ世の中に圧倒的に少ない んです。

専門家同士のアライアンス強化で中小企業を救う
―中小企業の人材難を解決することがDX化促進の鍵となる、ということでしょうか。

その通りです。当社は今、バックオフィスの領域で仕事をしていますが、それぞれの専門領域・強みが異なる方々とつながる、ということに物凄く力を入れています。そうなれば、お互いのお客様に対し、さらにプラスアルファの支援ができるようになる。

同業同士の協業・アライアンスがもっともっと進めば、お客様にとってより大きなメリットにつながるように感じます。当社がお手伝いしているお客様の悩みは本当に千差万別です。お客様のご相談に乗る際に、当社の強みが発揮できるケースと、他の同業企業にお願いした方が良いケースがあります

そうした時に、お客様を紹介し合い、協業し合える同業者がたくさん増えていくことで、それぞれの分野の専門家とお客様をつなげることができるようになります。

そうした有機的なネットワークを構築することで、これまで大企業でしかなしえなかった生産性を高める取り組みが、中小企業の世界でも急速に進むようになる。

DX化でますますふるいにかけられる「事務作業員」
―DX化の他に、企業のバックオフィスの役割・課題にはどんなものがありますか?

働く側の意識の問題ですね。当社がご相談を受けるお仕事で非常に多いのが、システムの導入なのですが、その際に、多くの場合、システムを入れたら事務員さんは何をするの?という話になります。つまり、企業のバックオフィスの役割・課題というのは、それは企業側の課題ではなく、働く側の意識の問題なのではないかということです。

事務職に就く人たちの傾向として、新しいことに挑戦する、今のやり方を変える、ということをやりたがらない傾向がありますよね(笑)。私も以前、そうだったのでよくわかるのですが。

でもそういう意識のままだと、これからは「ふるい」にかけられてしまう。そして、その「ふるい」の網の目が、この先どんどん広くなる。その広がる網の目に合わせて、自分自身が大きくならないと、確実にふるい落とされるわけです。バックオフィスの担当者が、「ジョブ型って何?」「週休三日制って何のこと?」と言っている時点で、落とされる候補に挙がってしまっている。そのことに気づかないと危ない。単なる「事務作業員」のままだと、これからは確実に生き残れない のです。急激に変わりつつあるこの社会の流れに、働く側の個人が本当に追いつけるのか、というところに疑問があります。一人ひとりが、情報収集に力を入れ、社会の現状をもっと学ぶべきと感じます。

子どもたちから完全に周回遅れとなってしまった大人たち
―学ぶべきところが数多くあります。そんな橋さんが普段から心がけていることは何ですか?

意識的にいつもと違う環境に身を置くようにしています。と言っても、そんなに大きなことではなく、例えば、普段乗らない時間帯に、バスに乗ってみたりするのです。

つい先日、朝の通勤時間帯にバスで出勤してみたのですが、その時間帯のバスは、普段、中高一貫校の生徒さんが多く乗り合わせていて、その日も中学生や高校生でいっぱいでした。その中で、中学生らしき1人の生徒さんが、テスト勉強をしていたんですね。

その姿が凄かった。タブレット端末で問題を解きながら、イヤホンで先生の講義を聴き、スマホで「今日のテスト何だったかな」とつぶやきながら確認していたのです。14~15歳の子が、今やるべきタスクを、全てデジタルでこなしている。仮にこの子たちが、現在当社がお手伝いしている会社に入社したとすると、なんてレガシーな世界だ、と感じてしまうと思うのです。完全に周回遅れとなっている。そうなると、大人はもうこの子たちに夢を作れないわけです

デジタルツールを複数使いこなして今日の学校のテスト対策をやっている子どもたちがいる一方で、今からようやく勤怠システムをICカードにしようと言っている今の時代の会社。完全に大人が遅れている、これは本当にまずいと思いました。この子たちが社会に出る6~7年後に、企業がDXに追いついていないと、本当に日本は終わるのでは、という危機感を持ちました。

そういうことに気づくためにも、意識的に、普段とちょっとだけ違う環境に身を置く努力をしています。そうしないと、情報が入ってくる入り口がどんどん狭くなってしまうのではないかと感じています。

背中を押してくれてありがとうと言われる存在を目指して
―我々大人の社会は、まさに待ったなしの状況ですね。橋さんのこれからの目標についてお考えをお聞かせください

実は私は子どもの頃からずっと、誰かに助けて欲しいという思いが人一倍強かったように思います。この場から出たいのに、自分だけじゃ出られない。誰かに背中を押してもらえたら、きっとここを出ることができるのに、という思いです。その誰かを、小さい頃からずっと探し続けてきた。

2016年2月に起業をしようとした時の気持ちは、誰かの背中を押せる存在になろう、というものでした。そしてそれは今も変わっていません。最初の一歩を踏み出すことに躊躇している経営者や組織人の背中を少しだけ押してあげて、「一緒にやろうよ」と言う場面を、これまで数多く経験してきたように思います。それをこれからもコツコツと続けていく。あの時に背中を押してくれて本当にありがとう、と言われる存在になれるように、これからも頑張りたいと思います。

背中を押してくれてありがとうと言われる存在を目指して

取材を終えて

石川県の金沢市に本社を置きつつも、大阪、名古屋、静岡をはじめ、東京や神奈川、埼玉などを日々駆け回る橋さん。全国各地の中小企業の経営者の方々から、次々と相談のオファーが飛び込んで来るそうです。中小企業のDX化・業務改善の現場には専門家が圧倒的に足りていない。そんな現実を少しでも解決するために全国を飛び回る橋さんのお話から、今の激動の時代に、変化し続けることで生き残る極意を学ばせていただいた気がします。

孤独な経営者に寄り添いながら、中小企業の世界になないろのはなを咲かせ続ける橋さんのこれからの挑戦に注目です。

プロフィール橋 亜希子 (はし あきこ)さん

株式会社なないろのはな 代表取締役・業務デザイナー・IT事務長®
長年、企業のバックオフィス業務に携わってきたその経験を活かし、2018年株式会社なないろのはなを設立。培った知識・ノウハウ、ネットワークを駆使し、企業が持つ悩みから改善の種を見つけ、業務効率化に向けた提案を行っていく。「総務かが変われば会社かが変わる」をモットーに、経営者と総務で、働く社員の意識改革の情報発信やコミュニティーも運営。またIT顧問化協会のeCIOとしても活動中。

株式会社なないろのはな

新しい時代へアップデートをし続ける仕組みを求める企業に対し、バックオフィスと組織変革の2つの視点で仕組みの構築を行う少数精鋭の専門家集団。現在、石川県金沢市と静岡県浜松市の2拠点から、全国各地の企業の変革を支援している。
マーシー

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ライタープロフィール

2019年入社。金融・不動産・製薬などで総務業務に長年従事。オフィス好きが高じて、プライベートでも独自のオフィスツアーを企画するなど、オフィス訪問がライフワークとなっている。週末などに非営利分野の活動も精力的にこなしている。強くないのにお酒好き(焼酎派)。

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2019年入社。金融・不動産・製薬などで総務業務に長年従事。オフィス好きが高じて、プライベートでも独自のオフィスツアーを企画するなど、オフィス訪問がライフワークとなっている。週末などに非営利分野の活動も精力的にこなしている。強くないのにお酒好き(焼酎派)。

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