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気になるこの人!
オフィスに関わるあんな人こんな人、ご紹介します!

ライター:セッキ―

2020.04.20

朝日雅也:埼玉県立大学副学長兼高等教育開発センター長_PART1
「障害のある方と”ともに働く”ということ。」

あなたの会社に障害をお持ちの方はいますか?
車いすユーザーの方、目の不自由な方、あるいは精神障害の方。

企業が対応すべき障害者雇用。平成30年4月から法定雇用率が引き上げとなりましたが、令和3年4月までにはさらに0.1%アップします。(※民間企業の法定雇用率は2.3%に。)障害者の方々とともに働く際にはどんな点に注意が必要なのか。オフィス作りで気を付ける点はどんなことなのか。気になること、知らないことたくさんあります。

今回は、埼玉県立大学副学長兼高等教育開発センター長の朝日雅也教授(社会福祉子ども学科)にお話を伺いました。障害者職業カウンセラーとして数々の現場で企業への就労を支援してこられた実績があり、障害者福祉、特に職業リハビリテーションを中心とした障害者の就労支援、社会福祉援助技術を専門とされています。

そして今回もまた、車いすユーザーであり、株式会社地域情報化研究所の代表を務める後藤省二氏にインタビュアーをお願いしました!同じ大学のご出身である後藤氏が、三鷹市役所の障害者福祉係としてご勤務された際に、イベントスタッフのボランティア募集をしたところ、在学中の朝日氏が応募してきたことが最初の出会いだったとのこと^^ またその後、朝日氏が身体障害者雇用促進協会(当時)へ就職される際のキューピッド役にもなられたそうです。

難しい質問から身近なオフィスに関する質問まで、当サイト編集長の佐藤およびライターの関もご一緒させていただきましたよ。
(取材:2020年2月)

※写真、左:朝日教授、右:後藤省二氏

後藤:障害者雇用の問題は、まだ社会の中では「福祉」の問題と位置づけられています。Nice to Have(できるに越したことがない)という認識ですが、それがMandatory(必須である)に変化して行くためには何が必要でしょうか?

朝日:位置づけに関しては、「労働の世界」と「福祉の世界」に分断されてきた、ということに尽きると思います。それはなぜかと言うと、厚生労働省の局を見ても、雇用が職業安定局。そして、福祉的就労と言われ続けている―具体的には、就労継続支援事業のA型・B型―は、社会・援護局とその担当が分かれています。その法体系から、行政の実施体制まで違います。

ですが、私の願いとしては、先ずは企業等で労働者として働くことを基本としたい。 ILO(国際労働機関)が言うDecent Work(ディーセントワーク)つまり、「働きがいのある人間らしい仕事」を担う、ということです。もちろん、働き方にはバリエーションがあります。いろんな選択肢があって良い。ただ、そこを最初から判断することなく、また、環境・社会側の条件を変えることなく、「あなたは障害者で、働くことは難しいので福祉」、「あなたはうまく行けば雇用」、というように分けている。これが、長年、障害者雇用が福祉の課題として続けられてきた背景です。

とても理解のある事業所に巡り合えば、雇用が実現する。そうでなければ福祉の場に留まってしまう。つまり、最初に相談する相手や、支援を受ける相手によって、障害がある方の働き方がまったく異なってくるわけです。ご本人の責任ではないわけですね。

障害のある方が、当たり前に、通常のインクルーシブな職場で働いていく、というケースが増えれば、障害者雇用の問題=福祉の問題ではなくなっていく。誰もが当然持つべき「働く」権利と、その機会を保障していくことにつながると思います。

それでも、福祉的な支援が必要な人たちはたくさんいて、不要になることはありません。しかしそれでも、企業や一般の職場の中で支援をしていくことが大事なんですね。障害者が働くことを実現するのであれば、通常の職場で、必要な福祉の支援を受けて働く、というのを当たり前の世界にしていくことが非常に大切な考え方になると思います。

後藤:個別への配慮が、全体への配慮につながるということについて教えてください。

朝日:考え方としては、個別に対応するということが、極めてスペシャルな問題として位置づけられがちですが、実は、障害がある方への配慮をすることは、結果として全体の働き方へつながってくる、ということです。

例えば、知的障害者を雇用したら、こんなに会社が明るくなった、といった調査結果があります。障害がある人へきちんと対応している企業は、障害がない人たちへも同様に対応していくのではないかという期待がある。人は誰でも働きにくさを持っていたり、体調が整わなかったりすることがありますよね。そこに配慮する、ということは、障害の有無にかかわらず、いろんな課題を持たれている方が、働きやすいことにつながる。これがまさに、個別への対応が、全体への対応につながっていくことになります。

後藤:人を大切にすることの現れなのでしょうね。

後藤:法定化された「合理的配慮の提供義務」について、企業の総務または人事が気を付けるべきポイントを教えてください。

朝日:平成28年4月から法律によって推進が決まったものです。合理的配慮について、障害者権利条約が批准されて、前提として、障害を理由とした雇用上の差別を禁止すること、これはある意味当たり前のことなんですが、日本の社会や職場にわかりにくかったのは、「合理的配慮の提供を否定する」こと、「合理的配慮を提供しない」ことも差別(合理的配慮を提供しないことは、直接その人を差別するのと同じ)にあたること。

その人がそこで働く上で、当然必要な配慮で且つ過重な負担がない、となった時に、それは障害があるためできません、というのは、直接その人を差別しているのと同じですよ、という考え方が導かれたのですね。

内閣府「合理的配慮を知っていますか?」より

事業所としては、今後の障害者雇用に対して少々面倒だと考える向きがあります。でも雇った以上は、その人にきちんと能力を発揮して欲しい、これは経済活動である以上当然です。ですから企業側は、職場の戦力として活躍していただくために必要な配慮を考える。一方、障害がある人も、「職場は全てを配慮すべき」というのでなく、自分が能力を発揮するための配慮を、“合理性を伴って”要求する。「仕事ができない僕を、仕事ができると扱ってほしい」というのは、合理的配慮ではないですよね。

合理的配慮の導入によって、障害がある人も、自分の障害、それゆえの弱さや強味に向き合わないといけないわけです。要求を実現するために、会社が倒産してしまうようなコストがかかるとしたら、それは合理的とはいえない。でも、100は無理でも、60だったら大丈夫だ、という考え方もあるわけです。合理的配慮の提供というのは、障害者雇用に関わる人たちすべてにとって、どうすればよく働けるか、働いてもらえるか、自分の力を発揮できるか、ということを考えるきっかけを与えてくれるものです。客観的でもあるし、きちんとした議論が必要になってきます。

でも、障害者の方の中には自分でそれを主張できない方もいるので、障害者本人、事業主に加えて、支援者・支援機関というもう一つのプレイヤーが必要になります。企業が悪いとか、障害者の人がわがままだ、という話にならないよう、両者の間に立ってを調整する役といえます。

佐藤:ちょっと一つご質問です。後藤さんは、足に障害をお持ちですが、PCでのお仕事は全く問題ない。そういう場合は、企業の合理的配慮の努力レベルも、比較的低いと思うのです。つまり導線を整えたり、車いすで会社まで来られる環境さえ作れば、後藤さんのパフォーマンスは十分に発揮していただける。

一方、足は大丈夫だが両手が使えないとか、精神障害とか、いろんなケースがあるわけで、障害の種類によって、企業の合理的配慮の努力レベルも変わってきますよね。そういう中で、企業側で「この障害の方なら採用、この障害の方は無理だ」という発想も出てくるかも知れませんよね。こういう話は、企業の「合理的配慮の提供義務」の中ではどういう位置づけになるのでしょうか?

朝日:企業の障害者雇用への取組み方によって変わってくると思います。例えば、障害者の法定雇用率を達成させることが主要な目的であれば、多様な業務(職務)の中から、障害者雇用の対象になる人の障害特性に合わせた仕事を切り出して、求人を出すことになるかもしれません。ご質問のように、ある業務(職務)について求人した際に、障害のある人が応募してきたとします。その際には、どうすればその応募者が求められる業務(職務)を担当できるようになるのか、それが合理的配慮の提供義務の考え方になってきます。ですから、特に後者の場合であれば、そもそも業務(職務)に合わせて、障害の種類によって採用の可否を決めることではないことになります。

佐藤:ある一つの職種に応募してきたAさんとBさんがいて、パフォーマンスが同じであれば、変な話、手間がかからないというか、企業側のサポート力が少なくて済む方を選びがちになる。それは本来、良くない。そういうことが起こらないような法律を作ったということですよね?

朝日:そのとおりです。Aさん、Bさんともに、ある業務についてパフォーマンスが同じだとします。両者の中では、Aさんの方がトータルにみると仕事が出来そうだとか、将来性がありそうだといったことで採用されるわけであり、「Bさんの障害は(周囲が)大変になりそうだから」という理由が前面に出てくると確かに問題になるかもしれません。

もっとも、採用権は企業にありますので、結果的にAさんが採用されることになってもそれは、企業側が決定すればよいことですが、その際には、提供する合理的配慮の多寡ではなく、選考にあたっての合理的配慮を提供した上で、Bさんが採用されなかった理由を説明できるようにしておくことが求められます。

佐藤:あくまでも募集職種に則した採用をした、ということになるんですね。
従来の障害者雇用というと、イコール車いすユーザーの採用、というイメージが固定化していたと思います。ユニバーサルデザインが整備されていないオフィスでは、とりあえずスロープを作る程度のことで雇用環境が整うわけですから、車いすの方の採用にどうしても偏りがちですよね。今後もっとユニバーサルデザインが整備されたオフィスが増えていくとその幅が広がるでしょうか。

朝日:確かに、かつては車いすユーザーなどの身体障害の方がほとんどでしたので、企業も、入り口にスロープさえ作れば、エレベーターさえあれば、またはユニバーサルな環境が整えば、雇用が実現しました。移動や通勤は多少大変ですが、オフィスの中では問題ないわけですね。

しかし最近では、精神障害や発達障害の方々で働きたいという人が増えてきたので、結果的に法定雇用率も上がっています。ということは、精神障害や発達障害の人の雇用も視野に入れていかなくてはなりません。そうすると、例えば知覚過敏があるため静かな場所がいいとか、人から見られたくないなど様々な要望に応えるべく、スペースを作る必要が出てきます。 また、そういった“設備”だけでなく、周囲の理解、仕事の提供のしかたや作業手順に配慮が必要になってきます。

ある特定の人がそこで仕事をしていくために必要な調整ですので、非常に個別性が高い。全てユニバーサルな環境を用意しておけば良いというわけではないんですね。

【厚生労働省】障害者の法定雇用率の引き上げについて

後藤:処方箋的アプローチですね。

PART2へ続く

プロフィール朝日雅也(あさひ・まさや) 
埼玉県立大学/副学長兼高等教育開発センター長 保健医療福祉学部社会福祉子ども学科教授


’81年国際基督教大学教養学部社会科学科卒業、’98年日本社会事業大学院社会福祉学研究科博士前期課程修了
’81年4月 身体障害者雇用促進協会(現 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)入職(財産法人国際身体障害者技能競技大会日本組織委員会、研究開発部研究開発課、国立職業リハビリテーションセンター、東京障害者職業センター多摩支所、国際協力課勤務)
’96年埼玉県入職(衛生部看護福祉系大学設立準備室勤務)
’99年埼玉県立大学入職(保健医療福祉学部社会福祉学科(現社会福祉子ども学科)講師。
’07年6月から教授。2009(平成21)年4月から埼玉県立大学院保健医療福祉学研究科教授兼務。現在に至る

障害者職業カウンセラーとして現場で企業への就労を支援。専門は障害者福祉、特に職業リハビリテーションを中心とした障害者の就労支援、社会福祉援助技術。
セッキ―

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ライタープロフィール

整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!

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