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オフィスに関わるあんな人こんな人、ご紹介します!

ライター:セッキ―

2020.03.04

関根千佳:ユーディット/会長兼シニアフェロー_PART2
「ユニバーサルデザインは福祉でなく、”公共の利益”」

関根千佳氏、後藤省二氏のインタビュー! PART1「だから日本にはユニバーサルデザインが根付かない」に続き、第2弾です!!

         *       *       *

あなたの会社は、ユニバーサルデザインを取り入れていますか?
東京オリパラ大会が目前に迫る今、“ユニバーサルデザイン”というキーワードで世の中を見渡してみると、残念ながら日本がいかに遅れているかということに気づいてしまいます。それは地域、街、オフィスなどのハード面だけでなく、大人も子供も含めた人の”意識”の面でも。オフィスの広場では、日本中が誰もが気持ちよく過ごせる場づくり、意識づくりを目指して活動する方々に着目してみたいと思います。

日本におけるユニバーサルデザインの先駆者、関根千佳氏は、日本IBMにおいてUDにつながる製品やシステムを多数生み出した後、株式会社ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)を設立、数多くの企業や自治体に対しUDコンサルティングを提供し続けています。

株式会社ユーディットは、「情報のユニバーサルデザイン研究所」。
Universal Design Institute for Information Technology→頭文字をとって「UDIT(ユーディット)」です。
さらに、”You do it!”「障害者や高齢者に、『あなたが主役よ!』と伝える意味をこめている」のだそうです。関根さんの強い思いが込められた、素敵な社名ですね^^

車いすユーザーで三鷹市で長年、障害者福祉や情報化に従事し、現在は株式会社地域情報化研究所の代表を務める傍ら、町田市の情報政策アドバイザーや、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の理事(非常勤)や障害者就労支援を行う社会福祉法人の評議員など、様々なお役職でご活躍されている後藤省二氏。今回、関根氏に後藤氏がインタビューする形で、取材が実現しました。

後藤:オリパラ東京大会で、UDがもっと浸透するのでは、と言われていますがいかがでしょうか?

関根(千):私は98年長野冬季大会のWEBサイト担当だったんですよ。それがIBMでの最後の仕事でした。障害者用に別のサイトを作るのではなく、一つのサイトを完全にアクセシブルにするというユニバーサルなサイト構築を心がけましたね。

オリパラの開催ということは、街の中にもITの中にも障害者が沢山訪れるということ。私はすごく歓迎しています。実際、新国立競技場では、車いす席からでも前の人が立ってもちゃんと見えるようにという「サイトライン」を確保するなど、UDの専門家が入ってだいぶ良くなっています。ただ、街のアクセシビリティはまだまだです。

例えば、世界中から障害のあるアスリートやその協会の役員が集まるのに、東京のホテルのUDルームが全然足りてないんですよね。今後作るなら、一つだけでなくすべてUDにせよ、と言っている小池知事は正しくて、すべて作り直さないとだめです。一つのホテルに一部屋だけUDなんて海外ではあり得ない。どんなホテルでもレストランでも、アクセシブルでない建物を作ったら、海外では設計士の免許を剥奪されます。まず営業許可が下りないです。そういう点では日本は笑われてます。多様な人たちが使えないものを作るほうがおかしい。建物も、ITも、アクセスは人権なのです。

後藤さんが三鷹(市)でいろいろ動いてくれたおかげで、市内のお店はみんなアクセシブルになりましたよね。こういう人がいると全く変わってくるんです。障害者が「僕も入れますか?」とどんどん進出して行けば世の中は変わっていきます。

そういった点ではパラリンピック開催はいろいろと好影響を及ぼしているのではないですか。例えば渋谷駅のとんでもなく難しかった銀座線乗り換えも、ようやくアクセスが良くなりましたよね。まあそれでも海外からは30年遅れだということを理解したうえで、今後も進めていただきたいです。

後藤:一方で、日本でUDを取り入れようとすると死角ができやすい、と言われています。障害者用の駐車場にコーンが置かれているとか、車いすユーザー使用可のトイレが物置になっているとか。気を付けるべき点は?

関根(千):国交省のUDのガイドラインでも示していますが、PDCAのPとC、PlanとCheckの段階で必ず当事者が参加して確認する。それもスパイラルアップで改善していく、ということが重要で、ここが欠落しているんですね。特に日本では、基準ができると“基準さえ満たしていればいい”という意識が強すぎて、血が通っていないと思いますね。「より良くしていきたい」というカルチャーを日本中が持てばもっと良くなるんですけどね。

後藤当事者抜きで何も決めてはいけない、というルールがいまだ徹底されてない。

関根(千):そうなんです!当事者抜きで決めてはいけないというルールを確立してほしいです。女性向けの製品を男性だけで作っても、売れませんよね。

※「私たち抜きで何も決めないで」“Nothing about us without us”

佐藤:名古屋城のエレベーター不設置というのが問題になりましたよね。

関根(千):あれはとんでもない判断ですね。どこかにアクセシブルなルートを作るべきだったと思いますよ。世界遺産のUDという研究ジャンルがあるんですが、例えば首里城は、ここまでは行けます、ここからは残念ながら行けません、ここは介助があれば行けます、というのが全部表示されています。残念ながら正殿は燃えてしまいましたが、そこもVRで見れるようになりました。

イタリアのフィレンツェも、表向きは14世紀の建物でも裏からのルートがちゃんとあるという「ファサード保存」をしています。またスタンフォード大学のタワーはらせん階段だけなので車いすNGだけど、こういう構造だからアクセシブルでない、というのはきちんと学生たちも知っています。UDにできないのであれば理由を明確にして開示することが必要です。

後藤:一定の考え方の徹底と説明責任が必要ということですね。

関根(千):アメリカで毎年、CSUN(シーサン:カリフォルニア大学ノースリッジ校)が主催するアシスティブテクノロジー(障害のある方の生活を助けるテクノロジー)の展示会があって、毎年弊社ではツアーを企画しています。世界中から4千人くらい集まる大規模なもので、来場者の半分くらいが重度障害の方です。視覚、聴覚、盲ろうの方、車いすユーザーもごろごろいますし、精神障害、発達障害、、、日本と全然違いますね。

関根(秀):盲導犬が何十匹も闊歩しているんですよ。皆さん当たり前のように動いて発言して、名刺交換してみると大企業の部長だったり、ITベンチャーの社長だったり、すごい肩書がたくさん!ホワイトハウスの高官もいましたね。そういった役職に就けるロールモデルがちゃんとあるんですよね、日本人では見たことないでしょう?

関根(千):2019年の基調スピーチでは、NASAのエンジニアである聴覚障害の女性が、どうやって宇宙ステーションと交信しているかを手話で見せてくれた、あれもかっこよかったですね。

後藤:日本では“福祉介護機器”展とかっていいますが、、、切り口が全く違いますよね。

関根(千):“福祉”という概念がないんです、もともとUDは福祉じゃないしね。みんなが使うから。恩恵でもない、当たり前のことだから。

とはいえ、日本も頑張っていますよ。よく私が紹介するのが、NTTドコモのらくらくホン。これは富士通デザインが作っているんですが、強度弱視の方が入社されてから、ここの製品はどんどんアクセシブルになりました。読み上げができるガラケーはこれしかなかったので視覚障害者の人は98%使ってましたね。使い勝手がいいから高齢者にも人気ですしね。

【出典:https://www.nttdocomo.co.jp/product/easy_phone.html】

それからセブン銀行のATMはNECによるもので、デザインチームに盲導犬ユーザーが入ってからは、同社の作る製品は劇的にUDに変わりました。一人当事者が入ることで世の中は本当に変わるんです。

【出典:(同社CSRアニュアルレポート2008より)https://jpn.nec.com/csr/ja/report/pdf/CSR-all2008.pdf】

佐藤:日本の企業も取り組んでいることがわかって嬉しくなりますね。 会社の中で置き換えた場合、総務にそういった人が入ることのメリットは?

関根(千):最高の総務ですよ!社内のシステムがすべてアクセシブルになりますよね。育休を取りたい人のニーズ、介護休職をしたい人のニーズ、高齢者のニーズ、、、いろんな人の“障害”を知って、いろんなタイプのニーズを汲み取ってくれるような総務は理想ですね。

京都のオムロンでは、知的財産の部長さんが、中途で失明されました。そこでは「彼を退職させないプロジェクト」が立ち上がり、定年まで働くにはどうしたらいいかと頭をひねって、社内のイントラやシステムを全部見直して。そして部長として定年まで支えたんです。

後藤:素晴らしいエピソードですね。

関根(秀):こちらの記事を紹介したいんですが、日本IBMが障害者の学生をインターンで採用したという話です。
障がい学生「就活の壁」を乗り越えて――「人生を変える」長丁場のインターンシップから(Yahoo!ニュース:2019/11/27配信)

社内でも難しいんじゃないかという声がありました。でも長期間のインターンですから、社員にも理解が増えましたし、何より障害者同士がお互いに気づきがあったというんです。視覚障害、聴覚障害、など障害が違う者同士では困っていることがわからなかった。それが理解しあえたのがよかったといいます。

関根(千):確かに障害者は、自分の障害しかよくわからないんですよね。で、障害のある学生にはよく言っているんですが、もし企業に就職するなら、ほかの障害のことをもっと勉強しなさい、と。いろんな障害を知ればそれに対してどういうことができるか、を語れる側に行ける。UDをきちんと学ぶというのはそういうことなんです。

佐藤:私が以前在籍した企業で、障害者雇用としてマッサージ師を採用しました。結構人気があったんですが、一定期間経つと辞めてしまう。理由を調べてみるとオフィスまでの道が怖くて通勤できないと。誘導灯が少なく真っ暗で、交通量も多かったんです。そこで、誘導灯を自社で増やせる部分は増やし、警察にも協力をあおぎ、誘導灯を増やしたことで、辞める人がいなくなりました。人事から上がる情報を総務の視点、つまりファシリティ面から見直すことで良い結果を生んだ例だと思っています。

関根(千):とてもいいサポートですね。でも、本来なら当事者側から問題点を指摘して、可能な解決策を提示し、課題解決に導くのが一番いいと思っています。それが「合理的配慮」を自分で求めるというやり方です。大学でも、学生たちには自分に必要な「合理的配慮」をしっかり理解して、もし環境がそこに達していないなら、こう変えてください、と言えるようになってほしいと思っています。誘導灯を増やしてほしい、という要請ができる社員になってほしいし、また、それを言ってもいいんだ、というカルチャーを企業側も作らないといけないですね。

※合理的配慮 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo/print.pdf

私が講演をする際に、必ず投げる問いがあります。

「あなたがもし明日、目が見えなくなったら?車いすユーザーになったら?どうやって仕事を続けますか?」

という質問をして、“自分ごと”としてディスカッションしてもらうんです。まず家の中のどこに何があるかわからないですよね。最初は、どうやって通勤するの?できない、辞める!って声が上がります。オフィスはどうだろう?こんなにモノがあふれていたら、危ないしそもそも通れないかも。そんな議論をするうちに、次第に気づいていくのです。私の能力には何の変化もないはずなのに、どうして仕事ができないと思ってしまうのか?それは環境がUDじゃないからなのだ!と。

環境が変われば、決して辞める必要はないのです。家が、交通が、街が、オフィスが、UDであれば、私は仕事を続けられるかもしれない。海外の障害者が、普通に大学へ行き、就労しているように、日本も、UDを前提として、当たり前のこととすべきなのです。ここは世界一の高齢国家である日本では、なんとしても変えていかなきゃいけない

私たちは、災害や交通事故にあう確率よりも、いつか歳をとってどこかに障害を持つ確率の方がはるかに高いのですから、日々の暮らしの中で、家は、交通は、そして自分のオフィスはUDか、常に意識を持って頂きたいと思います。みなさんがいつもその問いかけを忘れないでいれば、日本はきっと、もっともっとUDになるのですから。


◆編集後記◆
筆者が学生時代に語学研修で渡米した際、「電車とホームとの段差がない!」ということに気付いたのを記憶しています。同時に、健康な大人でもうっかり足を落としそうになるほどの隙間が空いている駅が都内にあったのを思い出していました。もう20年以上前のことです。子供が出来てからのここ数年では、公共の場でのトイレの設備(おむつ替え台やベビーチェアなど)やエレベーターの有無、手すり、歩道の段差など、子供ができる前までは気づかなかった様々な「つくり」に気付くという体験を日々しています。

日本の企業で、UDを意識してオフィス作りをしている割合は果たしてどのくらいでしょうか。「UDは福祉ではない」―ということは、すべてのオフィスがUDで作られなければならないということ。そしてデザインとともに必要なのは、”多様な人材を受け入れる”という企業文化。意識の改革は一朝一夕には成しえませんが、一刻も早く日本中のオフィスが、街が、UDになってほしいし、それが当たり前になる日が来るといい。そして、そのためにこんな自分でもできることが何かあるはず。小さなことからコツコツと…そんな思いを奮い立たされた取材でした。

プロフィール関根千佳 (せきね・ちか)
株式会社ユーディット 会長兼シニアフェロー
同志社大学大学院総合政策科学研究科 ソーシャルイノベーションコース 客員教授


81年九州大学法学部法律学科卒。同年、日本IBMにSEとして入社。 87年より2年米国ロサンゼルスにて障害者や高齢者のいきいきとした姿、女性の活躍などで日本との違いに衝撃を受ける。帰国後、93年にSNS(スペシャルニーズシステム)センターを開設し、障害者・高齢者へ向けての製品企画/販売などに従事。98年日本IBMから独立し、株式会社ユーディットを設立。代表取締役社長に就任。内閣府、国土交通省、総務省などの審議会委員を歴任。UDの分野において数多くのプロジェクト参画、コンサルティング業務をこなす。2014年より同志社大学政策学部教授。2020年現在、同大を始め、 放送大学・美作大学客員教授。そのほか東京女子大・関西学院大・東京大学の非常勤も務める。

著書に、『「誰でも社会」へ』(岩波書店)、『スローなユビキタスライフ』(地湧社)、『ユニバーサルデザインのちから ~社会人のためのUD入門~』(生産性出版)など多数。

詳しくは→「関根千佳の履歴書」

後藤省二(ごとう・しょうじ) 株式会社地域情報化研究所 社長

地方公共団体情報システム機構(J-LIS)理事(非常勤)、文京区情報公開制度及び 個人情報保護制度運営審議会委員、社会福祉法人日本キリスト教奉仕団(JCWS) 評議員など。

78年国際基督教大学(ICU)教養学部理学科(生物学専攻)卒。在学中に脊髄損傷により車いすのユーザーに。同年、三鷹市入庁。福祉部社会課障害者福祉係、企画部情報化対策室長、健康福祉部調整担当部長、企画部地域情報化担当部長等を経て2014年三鷹市を定年退職。三鷹市在職中は「福祉のまちづくり推進要綱」の制定とバリアフリーのまちづくり、情報化計画の策定や各種情報システムの構築等に従事。証明書コンビニ交付システムは多くの自治体で利用されている。三鷹市を定年退職後、株式会社地域情報化研究所を設立。地域と自治体の情報化に関する支援を行っている。現在は総務省の「自治体システム等標準化検討会」に委員・分科会長として参加。

詳しくは→株式会社地域情報化研究所
セッキ―

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ライタープロフィール

2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!

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