ライター:キクッチー
2019.03.04
今回は、北米に本社を構える外資系不動産(FM:ファシリティマネジメント)会社でAdministrative Director(管理部門責任者)をなさっている佐藤匡史(さとうまさし)さんにお話をお伺いしました。
―まずは、ご経歴について教えてください。
大学卒業後、コピーライターを目指して広告制作会社に就職しました。
しかしながら、早々と自分には適性が無いと判断をし、当時、日本に進出してまだ間が無い米証券ゴールドマン・サックス社の総務部門に転職しました。バックオフィス系の仕事はしたことがなかったのですが、この時から見よう見まねで総務の仕事に携わるようになりました。
その後、同社が、米同時多発テロの影響などで、2001年に所属部門全体をグローバル規模でアウトソーシングすることになり、私自身も総務のアウトソーシング業務を展開する英・総務アウトソーシングのウィリアムズ・リー社に転籍。その翌日からお客様となったゴールドマン・サックスに常駐。オンサイト(常駐型)マネジャーとして総務業務を続けて参りました。
その後、幾つかの日系・外資系企業の総務部門で経験を積み、米製薬のギリアドサイエンシズ社が日本に進出する際の日本法人の立ち上げに、ファシリティ部門として参画。
2017年秋からは、創業100年以上の歴史を持ち北米大手の不動産会社(FM)である現会社で勤務し、お客様向けのファシリティ・マネジメントのサポート部門と、自社の管理部門をそれぞれ担当しています。
―総務・ファシリティ業務を行うにあたり心掛けていることはなんですか?
全方位でのコミュニケーションを取りながら、経営の方向性を現場に落とす、現場の要望を経営にあげるといったように、両者との信頼関係を築きながら「潤滑油」としての役割を果たすことを意識しています。
―経営層と現場との間で板挟みになることに悩んでいる方も多いとおもうのですが?
総務でいるかぎり板ばさみの状態は、ある程度付きものになりますね。
―板挟みの環境はつらくないですか?
最初はつらく感じていましたが、総務の本質は「板挟み」であるということを理解した後は、自分が仕事をやりやすい環境にするゲームの一種だと考えるようになりました。そうすると、板挟みの環境が、楽しく魅力的に思えてきました。今ではその環境を楽しんでいます。
―信頼関係を得るには具体的にどんなことをすればよいのでしょうか?
経営層との信頼関係は、指示の背景を念入りに理解し、その意図を自分の言葉に置き換えて現場に伝え、経営の意に沿う形で現場に動いてもらうことを根気強く繰り返すことで、築くことができると思います。そのために、現場がうまく回るように、地味ですが、勤務時間内外で飲食を共にするなど、地道にきめ細かなコミュニケーションを取っていき、誰かが困っていたら些細なことでも全力で助ける。そうしていくことで、社内の協力者を増やすことができ、それが本筋の業務にも生きてくると考えています。
その上で会社の方針に合わせて、総務として、現場の希望に沿えること、添えないことを明確にし、裏表のない公平さを心がけていくことが、信頼を得る重要なポイントではないかなと思います。
―高い人間力が求められそうですね。
そうかもしれませんね(笑)。
実は総務という仕事は誰にでもできるように思われがちですが、実際には対人コミュニケーションの総合力が必要な仕事だと思います。
そういう視点から、総務は「コミュニティ(共同体)」を「マネージ(管理する)」する「コミュニティマネジャー」であるべきとも考え始めています。
―会社以外でもいろいろと活動されているとお聞きしました。
2018年6月には、「オフィスツアーを楽しむ会」を仲間とともに発足しました。様々なオフィスの先進事例をツアー形式で楽しみながら学んでいく勉強会です。
月1回を目途に開催をしており、これまでに、丹青社、MARS、ジンズ、dip、総務省、リンクアンドモチベーション、ガイアックスなど、非常に魅力的で特徴のあるオフィスを訪問させていただいています。3月は、Box Japanのツアーを予定しています(敬称略)。
参加者と一緒にオフィスを見学していると、この人はこんな深い所も見ているのかという気付きがあったりします。
「オフィスツアーを楽しむ会」の他に、2018年11月には、これまでありそうでなかった「総務Tech」も始動しました。
進化する総務が目指す未来の方向性(コミュニティマネジャーとしての新領域の開拓や経営企画部との連携)などのテーマを仲間とともに深堀りしています。
また、有力IT企業の方々にも会に入っていただき、総務Techのテクノロジー面での企画開発なども行っています。ここから新しいTechを生み出すことができれば面白いなと考えています。
また、プライベートの活動として、2016年から、私が住んでいる埼玉県の川口市で「川口こども食堂」という非営利団体を運営しています。
「こども食堂」とは、共働きで食事の支度をする余裕のない家庭や、経済的に苦しいシングル家庭の子ども達の為に、無料または格安で食事を提供する活動です。2016年当時は、大田区や豊島区などに老舗の「こども食堂」が立ち上がっており、それを川口市でも、と考えました。
私自身が学生の頃、要支援対象であった時期を過ごした経験から、そういう子ども達を助けたいという思いが立ち上げのきっかけです。
現在も、毎月、大人の職業人を招くイベント形式で「川口こども食堂」を続けています。
今年の3月には、川口オートレース場という公営競技場で、G1という非常に大きなレースの日に2日間「出張!川口こども食堂」というイベントを開催することになりました。
オートレース場は市が運営しており、行政である川口市との協業もできるようになりつつあります。
それ以外にも、発達障害当事者の支援を行うNPO法人「チャイルド・ギフト」の広報担当、埼玉県春日部市のNPO法人「春日部子ども食堂ひなた」の監事という形で、複数の非営利活動団体の運営にも関わらせていただいています。大変学びが多いです。
―いろいろな活動をされる中でどんなことをされていきたいと考えておられますでしょうか?
まず本業の部分として。日本の最重要の社会課題となりつつある「働き方改革」というのは、「人事」の専門エリアと思われがちなのですが、「総務」としても場づくりを通して関われる部分は多いと感じています。
「総務Tech」などで生まれてくる現場の生きたアイデアなども取り入れながら、「総務から会社を変える」を仲間と一緒に実現していきたいと考えています。
「川口こども食堂」に関しては、行政と民間で課題解決できるモデルを作る活動に関わらせていただくことで、子どもを中心とした地域社会の活動が盛んになっていってもらえればと思います。
最後に、「コミュニティマネジャー」という役割は、会社だけではなく、どの活動でも役に立つ、まさにこれからの時代のキーワードになって行くものだと感じています。そうしたスキルを磨いて行きたいと思います。
―勉強になりました。本日はありがとうございました。
プロフィール | 佐藤 匡史(さとう・まさし) 外資系PM・FM会社 Administrative Director(管理部門責任者) 川口こども食堂 代表 オフィスツアーを楽しむ会 共同主催者 総務Techを考える会 共同主催者 |
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ライタープロフィール
大学卒業後、リクルート(当時)のFNX事業部にて、事業企画および総務に従事。その後リンクアンドモチベーション(LM)のグループ会社、リンクプレイスにて、拡大期のグループのオフィス移転や増床を数多く担当する。MBOにより株式会社ディー・サインとなった現在も、主にLMグループのファシリティマネジメント業務をアウトソーサーとして担当。現在は当社を兼務し、ライティングやコンペ代行のコツを伝える講師を務める。現在の楽しみは、出張先での街の散策。現在、16県。全国制覇はまだ遠い。
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大学卒業後、リクルート(当時)のFNX事業部にて、事業企画および総務に従事。その後リンクアンドモチベーション(LM)のグループ会社、リンクプレイスにて、拡大期のグループのオフィス移転や増床を数多く担当する。MBOにより株式会社ディー・サインとなった現在も、主にLMグループのファシリティマネジメント業務をアウトソーサーとして担当。現在は当社を兼務し、ライティングやコンペ代行のコツを伝える講師を務める。現在の楽しみは、出張先での街の散策。現在、16県。全国制覇はまだ遠い。
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