2016.06.27
ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ 金賞など、国際的なコンペティションで数々の受賞歴を持っておられるデザイナー/アートディレクターである
柏本郷司氏。
リクルートでのコーポレートデザインや商品デザイン・商品プロモーションに関わる様々な活動をされていたことで知っている方も多いかもしれません。
その柏本氏にリクルート時代の活動、そして現在行っている事業についてお話をお伺いしてきました。
―まずはこれまでのご経歴について教えてください。
大学卒業後、1985年にリクルートに入社しました。
入社してから、新卒採用の事業部で採用系クリエイティブを担当しており、IBM、日立、新日鉄、リクルートなどの大手企業の採用広告の担当ディレクターをしていました。特にリクルートの採用広告は2014年3月の退職まで20年近く続けていました。
1997年からリクルートの新卒採用・中途採用メディア、”就職ジャーナル”や”とらばーゆ””ガテン”、”ビーイング”、”フロムエー”、”リクナビ”などのクリエイティブディレクターとして、ロゴ・表紙の制作やコマーシャルの制作をおこなっています。
2000年からは「ブランドマネジメント室コーポレートデザイン担当」として、リクルート全体のブランディングをどう表現するかを考え、実行する役割を担っていました。
ただ、リクルートのブランド構造上、コーポレートブランドの価値をあげるためには、商品ブランドとの接続を強化し、商品が良くなければならないと考え、リクルート全体の商品のデザインをマネジメントをする組織を立ち上げさせてくださいと役員に掛け合い、
2003年に「クリエイティブセンター」を立ち上げました。
こちらでは、具体的な商品ごとのデザイン・広告プロモーションなど商品コミュニケーション全般を担っていました。
「クリエイティブセンター」立ち上げ後は、主務は「クリエイティブセンター」、兼務で「リクルートブランドマネージメント室」での活動となっています。
―商品のプロモーションに関わられていたのですか?
基本的には、当時クリエイティブセンター全体で、リクルートブランド他リクルートが扱うすべての商品のクリエイティブに関わっていました。
―立ち上げから関わった製品も多数あると思うのですが、こだわりや特徴はありますか?
特徴の一つ目は「一気通貫」になります。
一般的には、ブランドの立ち上げは課題整理、製品のネーミング作成、ロゴ作成、プロモーションには、それぞれに専門家がいて、別々の方が担当をされていることが多いと思います。
一方で当時のリクルートはクリエイティブセンターと事業が一緒になり、一気通貫でブランドのクリエイティブ開発行っており、これは大きな特徴かと思います。
二つ目の特徴は「ステークフォルダーを広く取る」という点です。
今では当たり前ですが、B to B の商品でも、B to B to C のようにお客様のお客様まで先を見てコミュニケーションを考えるという点です。
最後三つ目の特徴は、スタートアップの関係者がブランドの将来の姿を「徹底的に議論を行う」という点です。
スタートアップ時は、いろいろな所からの人が寄せ集めで集まることが多く、気心が知れた人だけでやっている訳ではありません。
その状態では、自分の関心があることや必要最低限のことを必要な人にしか伝えていないことも多く、各自が目標としているゴールが異なっていることがよくあります。
そこで、”ブランドプラットフォーム”と呼んでいる4軸に整理したフレームを利用して、 5年後10年後に何を目指したいのか?どうなっていたいのか?を、関係者のなかで徹底的に議論します。
2か月くらいかけて実施するのですが、これを実施することにより、どんな名前が必要なのか、どんなデザインにするのか、どんなプロモーションを打っていくのかへとつながっていきます。
事業や各自が迷ったときに拠り所となるものをつくることで、組織がバラバラにならずに済むという役割も担います。
―製品化までどれくらい時間を掛けているのでしょうか?
どこを起点にローンチまでなのか一概には言えませんが、短い期間の中で先ほどお話しをした議論を行い、製品名、ロゴ、デザイン、プロモーションなどすべてを決めていきます。
―柏本さんと言えば、リクルートのロゴを変えるプロジェクトでも有名ですね。
リクルートのかもめのマークは、1964年の東京オリンピックポスターや1970年の大阪万博のポスターなどの制作で有名な、
グラフィックデザイナー亀倉雄策氏の作品です。
リクルートの社内でも社会的財産ともいえる大切なものでした。
残念ながらリクルート事件のイメージもついてしまったことや、
リクルートロゴと各商品との接続の強化など、新たな課題の中で、経営ボードの判断で変更しようと決断をして、新しいロゴを作ることになりました。
リクルートはデザインを大事にするという伝統があった為、新しいロゴもデザイナーがつくるべきと考え、5人のデザイナーに提案いただき、私は作品をジャッジする側として関わりました。
―現在はどういうお仕事をされているのですか?
コーポレートブランドのディレクター、アドバイザーとして、リクルートのほか何社かと契約させて頂いています。その他、自身のデザイナー/アートディレクターの業務だけではなく、アーティストの支援を行っています
アーティスト支援は『日常にアートを』というコンセプトのもと、2016年4月に西荻窪にギャラリーを立ち上げ、3週間単位でアーティストの企画展を実施しています。年間15くらいの展覧会を実施予定です。
2016年6月3日~6月19日まで開催した企画展では、500人ほどの方にお越し頂きました。
私は日常(家庭・職場)の中にもっとアートがあり、好きな作家を応援する社会が日本にもあってほしいと思っています。ギャラリーもあえて一般的な住宅地に作りました。
自宅のリビングにいるような感覚でリラックスして絵を見ていただきたく、ギャラリーで展示したアーティストの作品の一部は、奥にあるカフェで見ることができるようにしています。
ギャラリーとして飾っていたものが、日常である空間に飾った時に絵の見え方がどう変化するのかも見て頂きたいと思っています。
―最後に、今後新しく展開していくことがあれば教えてください。
2015年末からワークスペースの空間演出も手掛けています。
現在名前とロゴだけでは、サービスや企業のブランドの世界観をまとめることは難しくなっています。
ブランドのシゴトの中で空間のデザインについて相談されることが多くなってきました。
IT系のオフィスを中心にカッコいいデザインが増えているとは思うのですが、残念ながら先進的なオフィスのデザインがどこか似ている。
企業の個性があまり出ていないと感じるコトがあります。
本来オフィスは、お客様のおもてなしの場であり、企業イメージ・経営者のセンスを伝える場であり、従業員には新たな想像力を喚起する場だと思います。
名前やロゴだけではなく、色やグラフィックのマテリアルを策定し、表出するもののイメージをオフィスを含め統一させる仕掛けを多く持つ。
オフィス・Webサイト・印刷物・映像など、見た瞬間、空間に入った瞬間にその会社だとわかるような仕掛けが必要になってくると考えています。
―アートがあることが企業らしさを作っていくこともある。
オフィスにアートがある。アートは固定化せず、変化する。その企業らしさを表現する。お客様をおもてなしをする。従業員の感性や発想を刺激する、そんな仕掛けを考えています。
アートが企業の日常にある。才能ある作家の絵を日常的に見てもらう。企業がアーチストを支援するための仕組みと、アートが日常にあるヨロコビを繋げたい。
アートが企業の空間に心の豊かさをつくりだす。この豊かさはオフィスを訪れるお客様とっても、従業員にとっても嬉しいプレゼントになる。
その仕掛けを今後、広げていくことを考えています。
プロフィール | 柏本 郷司(かしもと・さとじ) 株式会社 ヨロコビto 代表取締役 1985年に株式会社リクルートに入社。 大手企業の採用広告をクリエイティブディレクターとして担当。 その後、リクルートのコーポレートブランド、商品のデザイン・マネジメントのエグゼクティブ・クリエイティブディレクターとして活躍。 2009年より金沢美術工芸大学グラフィックデザイン科非常勤講師務める。 2012年10月、リクルートの分社化に伴い、リクルートコミュニケーションズ ブランド戦略グループECDとリクルートホールディングス ブランド部兼務 2014年3月にリクルートを退社。4月 株式会社ヨロコビto設立。 ブランドデザインと作家支援の事業を行う。 |
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