ライター:セッキ―
2015.07.17
明治23年に大阪で創業し、今年12月に125周年を迎えるという株式会社イトーキ。これまで日本のオフィスと一緒に歩み続けてきました。
→125年の歩み http://www.itoki.jp/special/125/
そんなイトーキさんがいま最も注目している事業のひとつ、Workcise(ワークサイズ)。働き方を見せるワーキングショールームの見学に毎年多くの人が訪れるというそのオフィスには、“働きながらエクササイズ”ができる仕掛けがたくさん盛り込まれているそう。働く人なら誰しも、健康に良い影響をもたらしてくれるオフィスで働きたいものですよね。
今日は、身体に良い椅子づくりを中心にそのワークサイズの研究一筋で活躍してこられた、八木佳子さんにお話を伺いました。
―ワークサイズ事業では、具体的にはどのようなお仕事をされているんですか?
ワークサイズプランニングでは、働き方と健康状態の現状を調査し、その課題に応じたオフィスプランをご提案します。私は研究から営業サポートまで担当しています。入社以来、ずっと研究部門にいるのですが、現在営業本部ということで実際にお客様と対面し、ご提案する機会も持たせていただいていますので、とても充実していますよ。
―健康問題を経営課題として取組む企業が多くなってきたように思いますが、オフィスでの健康への意識というのは強まっているのでしょうか。
ワーカー個人の健康意識が高いことはいうまでもないですが、おっしゃる通りこの1~2年、企業の経営者の方の関心が急速に高まっていると感じます。「健康経営」という言葉は2006年設立のNPO法人健康経営研究会が、これからの企業経営には「健康経営」が必要、と推進してこられました。そこにやっと時代が追いついてきたという感じですね。
これまで使われてきた「健康“管理”」という言葉は、病気にならないように、けがをしないように、といったネガティブな要素をなくすことが中心の考え方です。「健康“経営”」は、企業の生産の源は従業員であり、従業員が健康でモチベーション高く働けることが生産性につながるので、企業価値を高めるために従業員の健康を「管理」ではなく「増進」していかなくてはならない、というものです。
企業が「健康経営」に取り組む姿勢を促すような動きを3つご紹介します。
1)健康経営格付
日本政策投資銀行が実施している制度。審査により良い格付を得た会社は、生産性が高いということで、低金利で融資するというもの。
2)健康経営銘柄
東京証券取引所の上場会社の中から「健康経営」に優れた企業を選定。収益性が高いとされ、東証が優良銘柄として認めるもの。
3)メンタルストレスチェック制度(今年12月から)
従業員50人以上の事業場にはストレスチェックを実施することが義務になる。
さらに、“環境保全”と同様、企業の責任として従業員の健康状態や健康増進の取り組み状況を公表することが求められるようになってきています。
―なるほど。これらは採用などにも大きく関わってきますよね。
そうですね。頑張っている会社にとってはそれをきちんとアピールできるということですから、いい風潮だと思います。ブラック企業と言われないようにぜひ頑張っていただきたいですよね。
―御社のオフィス内にも、ストレッチの印がついているところや廊下にラインが引いてあったりしますよね?
ワークサイズのしかけですね。今までの健康管理の考え方は“自己責任”でした。会社では一生懸命働いて、体調のケアは家に帰ってから自分でする。でも会社にいるときからもっと健康に気を付けて働ける環境づくりを、と提案すると、とても共感を得られますね。
▼壁の○印に手を置き、床の線に足を置いてストレッチする。
▼身長ごとに適正な歩幅の目安が書いてある。
過去に評判がよかったしかけに、プロジェクタを使って天井に鳥を飛ばす、というものがありました。スマートフォンが普及してからみんな下を向くようになったというので、上を向かせるためのしかけでした。顔が上を向くとコミュニケーションも活発になる、とお客様からも好評でした。
椅子、机、パーティション、動線、、、環境トータルでどういう行動を促すかということがポイントですので、これだけやればよい、というのはありません。「健康」といってもいろんな側面があります。長時間座りっぱなしの方なら椅子、コミュニケーションの問題であれば動線計画、などとなります。職種や働き方によって状況は様々ですから、アンケートやヒアリングを中心に分析して、ご提案していきます。
―仕事上いろんなオフィスを見ますが、ハンモックや、寝ながら仕事できるような場所も見かけます。リラックスしすぎるのも大丈夫かな?と思ったこともあるんですが。
そうですね。この仕事をやっていて感じることがあります。ご提案するのは経営者の方ですが、経営者は従業員の生産性を高めたい。従業員にとっては、もっと快適に働ける環境が欲しい。これがなかなか相いれないものなんですね。単に快適を求めすぎると必ずしも生産性UPにはつながらない。でも「健康増進」という観点で提案するとお互いがwin-winになります。ワークサイズはそこを大事にしています。
以前よく、複合機を遠くに置くことでわざと歩かせるというのが流行りましたが、ただ単に遠くにするだけだと働く人にとっては不満が出てしまうんですね。行ってみるとついでにいいことがあって結果的に歩いてた、みたいな感じが望ましいんです。弊社は動線計画のひとつで、オフィスをぐるっと一周できる道(コリドー)を設けています。行き帰りで違うところを通る、歩きながら電話したり考えたり。最近話していなかった別の部署の人たちにもついでに声をかけることができるなど、いろんなメリットがあります。
―八木さん自身が普段健康に気を付けていることはありますか?
歩くようにはしています。通勤電車の駅も二駅くらい手前で降りて上を向いて歩くとか。以前住んでいたところが駅から徒歩15分あったんです。会社でも座って電車でも座ってたのに駅に着いたらどっと疲れていて。でも家まで歩いていたら逆に元気になっている自分に気づいたので、その経験から歩くことは意識しています。
―達成感や喜びを感じる瞬間はどんな時ですか?
お客様からいい反応をもらえたときですね。お客様のところまで届かない失敗作もたくさん作ってきましたので(笑)、実際に使っていただけて、この椅子のおかげで楽になったとか、社内のコミュニケーションが増えたとか言われた時は最高です。また、新しいことを想い着いたとき、それを試しているときも楽しいです。
―今後やってみたいことがありましたら教えてください。
もっとみんなが笑うオフィス、笑顔になるオフィスを作りたい。弊社は良くも悪くも騒がしいオフィスです(笑)。でもそのおかげで、笑うことを躊躇しない雰囲気なので、割とみんなよく笑っているほうなのではないか思います。そういうオフィスで働いてみると、心身の健康に笑いは大切だなと思うのですが、笑いって仕組み化できないんですよね。コンテンツが大事で、面白い話でも何度も聞くと面白くない。できれば自然と笑顔になる様なオフィスを仕組み化できればと思います。
―なんかそのプロジェクト、参加してみたいです!
今日はありがとうございました!
プロフィール | 八木 佳子(やぎ・よしこ)
株式会社イトーキ 営業本部 ソリューション開発本部 R&D戦略企画部 部長、 認定人間工学専門家。 大学卒業後、株式会社イトーキ(クレビオ)に入社。中央研究所に配属、椅子の研究を中心に、オフィスでの課題解決に従事。女性向けオフィスチェア『cassico』(2007年発売)の開発に携わる。2013年よりワークサイズの研究開発に従事、現在に至る。 |
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ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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