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気になるこの人!
オフィスに関わるあんな人こんな人、ご紹介します!

2014.06.26

キドサキナギサ:城戸崎和佐建築設計事務所
「気持ちに寄り添い、創っていく」

オフィス、保育園、個人住宅の設計や、インテリアや庭のデザインを手がけるかたわら、京都造形芸術大学の教授として教鞭を振るう、いくつもの顔を持つ城戸崎先生。現在は6-7割の時間を大学の仕事に費やす日々だが、クライアントも学生も城戸崎先生にとって大事な存在。「人が自由に動ける」「行き止まりを作らない」設計をモットーに、仕事にも垣根を設けることなく取り組む姿を取材した。

「独立当初はショップ、ブティックが多かったのですが、それが一段落してから少しずつ大きな仕事に取り組むようになりました。90年代の終わりに、ガボン(西アフリカ)の魚市場の設計をしました。以前からチームを組んでいる構造事務所の先生から声がかかり、一緒に仕事をしました。設計図書をフランス語に訳したり、FAX一枚送るのにも千円かかるという状況で、言葉の壁や通信の壁があり、苦労した分、想い出深い仕事になりました。

外国を旅すると市場って、クローズしている時間でもふらーっと入って雰囲気を感じたりできる。この市場でもドアをなくし、もともとはパラソルの下の風を感じる市場だったので、方杖(ほおづえ)という傘の骨のような構造を採用し、パラソルのイメージを残しながら作り上げていきました。これが私の中で一番大きな仕事です。」

主な代表作品

1:鈴木木材工業本社(長崎県佐世保市にある木材会社の70名ほどのオフィス)

ずっと社内で内勤している女性のために、ロッカーや給湯室や食堂や執務室をそれぞれわざと離して、社内を動き回る仕掛けに。支社を含めた全社員で朝礼や展示会などに活用できる大きなスペースを中心に設けた。大断面集成材(接着剤で張り合わせて、強度を均一にした構造用木材)を使用し、新しい木の使い方を提案した。全体にオープンな空間にしたことで、他の課の動向がわかりやすくなったとの声があり、その後訪問したときは卓球台がおかれていて、今までにないアクティビティが生まれていた。

※写真:浅川敏

2:青い鳥保育園(佐賀県多久市の私立保育園)

駅前に立つ保育園は4色のブルーを使った外観。ちっちゃい、かわいい、というイメージではなく、電車から見ても目立つように、また「おうち」のイメージを取り入れたいとのオーダーから、片流れ屋根を2つ組み合わせて、天井を高く作った。一瞬、保育園とはわからないような外観である。中庭のまわりに0~2歳児、園庭側に3~5歳児の部屋。園児が最長6年間を過ごす場所となるため、成長に合わせて居場所を変えられるよう配置を配慮。

※写真:永石秀彦

3:チュウクウ(都内の診療所兼住宅)

夫婦と子供4人の6人家族。クリニックを吹き抜けのある明るい地下に。クリニックと住宅の二箇所の玄関、車4台の駐車場は一階に。居室はとにかく広く、というオーダーだった。夫婦の希望どおり、2〜3階は壁のないワンルーム構成で、子供が思い切り走り回れる住宅に。全面ガラスのカーテンウォールを施したこの住宅には、居住して以降も、雑誌やポスターの撮影依頼が多いという。

※写真:平井広行

以上はこれまでの作品のほんの一部だが、それぞれに共通する想いがあった。

「同時多発的にいろんなことが起きるというのが、建築の面白いところで、行き止まりがないようにしたい、という思いはありますね。出入り口が複数あったり、いくつかのルートをもうけてその空間で過ごす人が好きなように出たり入ったりできるつくりにする。自由にそれぞれが好きな事をできる。それによって、人が絶えず流れている、空気も淀まないようになる、という感覚です。

作品を発表するときにタイトルをつけるのですが、その建物のコンセプトを表現した抽象的な名称にしています。なんと言うか、タイトルをつけた瞬間、その建築に「人格」が備わるような気がするんです。」

―空間作りに興味をもったきっかけは?

「子供の頃、洋服の雑誌モデルをやっていました。昔は子供の洋服はお母さんが作る、というのがほとんどで、型紙がついた雑誌が多かったんです。撮影に行くと、真っ黒な箱でしかないはずのスタジオがいろんな空間に変化しているんです。砂浜になっていたり、壁にサドルがいくつも埋め込まれていてそこに梯子で上って傘を差してメリーポピンズ、とかね、扉を開けるたびに空間が変わっている。毎回スタジオに行くのが楽しみだったんです。そこからだと思います、空間に興味を持ち始めたのは。

なのでインテリアの仕事もとても好きです。すでに存在しているそのハコ(空間)の、”時間”も一緒に引き受けて、ゼロミリの内側を考える。ときには引き算で、天井や壁を壊す、床をはがす、だけで終了することも。光の入り具合を計算して家具の配置を考えることで掛け算したり。建築はコツコツと足し算でつくっていく感覚ですが、インテリアは引き算も掛け算もある。それぞれ違った面白さがあります。」

―仕事において心がけていることを教えてください

「クライアントの気持ちをもらさず聞くようにしています。つい提案を見てほしいとばかりに、自分だけが夢中になって話してしまっていた時期がありましたが、建築は独りよがりではなく、クライアントの引きだしを借りていいものをつくっていかなくてはいけない。言い足りないことがないように、すべてを聞いてその人の気持ちになって作り上げていきたいんです。」

「8年間スタッフとして働いた、伊東豊雄さんからは、『集中して考え抜く』『最後まであきらめない』ということを学びました。時間をかければいいものができるに決まっている、でも、時間は無尽蔵にあるわけではない、いかに集中して考え抜くか、が重要。そして、良くなるチャンスは最後の最後まであるのだから、ちょっとでも良くしよう、良くしよう、とあきらめずに考えなさい、と。

でも、怒られすぎて図面を捨てられちゃったことがあります。提案があまりにもつまらなくて怒られて。周囲のスタッフ手伝ってもらって作り直してなんとかくぐり抜けましたが、、、そんなことをされたのは伊東さんの事務所の長い歴史の中で私だけだと思います(笑)。」

そんな恩師の影響からか、今では自身も、常にカッターを持って学生の作品にダメ出しをしているそう。

―これからの、可能性についてはいかがでしょうか。

「"動く布"に興味があるんです。暑さ寒さや、時間や季節、人の多い少ないをセンサーで感知して、壁や天井、開口を動かすこと自体は技術的にはもう難しくないのですが、"人の気持ちに寄り添って動かす"ことができないかと思ってるんです。たとえば大きなターミナル駅の地下通路って、非常に閉鎖的でつまらないところが多いですよね。待ち合わせする人がもっと楽しい気持ちになるように動いてくれる柔らかな壁や天井があったら面白いですよね。『そろそろ来るよ』みたいな。これを布で作ろうとしています。
この動く布をオフィスにも活用できると思っていて研究中です。オフィスは人がいない時間も多いし、エコという側面でももっともっと可能性があるんじゃないかと思っています。」

今回のお話を聞いて、オフィス、保育園、住宅、と多岐にわたる建築物やインテリアのお話を伺うなかで、設計にあたっての重要なポイントがわかってきた。
・想像力を働かせること
・仕掛けによって行動が変わる

個人住宅と比べて、「オフィスや施設は使う人が多いので、それを想像しながら設計を考えるのが面白い」とおっしゃるように、住宅もオフィスも、そこに住む、その空間で過ごす人の行動パターンを考えて作られるものであるのは大前提だが、その未来、今後の成長や変化などまで想定していかないと居場所として長続きはしない。豊かな想像力が必要なのだと感じた。

また木材会社の設計では、強制的に動き回るような配置をすることによって、日常的に顔を合わせるようになり、情報の交流が生まれる。卓球台を導入したきっかけも、日々のささいなコミュニケーションから生まれたのかもしれない。人は必要に駆られて動くもので、「動いてください」と言っても動くものではない。オフィスにおいて、このような仕掛けはとても重要だ。

城戸崎さんの過ごす大学の教員室は、先生同士の間に仕切りがなく、ワンルームでオープンになっているそう。きっと学生達からも、敷居の低い相談しやすい場所となっているのではないだろうか。

町のあらゆるスポット、マンション、デパート、カフェ、美容院、そしてオフィス。応接室や会議室、社長室、本棚、喫煙所、、、どのような配慮がされて作られ、どのような使い方がされているだろうか。設計者の意図通りに、人や情報が動いたり、コミュニケーションが生まれたりしているだろうか。

建築を見る際に、そういった目線で楽しむことを教わった気がした。

城戸崎和佐(きどさき・なぎさ)
有限会社城戸崎和佐建築設計事務所/取締役、京都造形芸術大学環境デザイン学科教授・学科長

1960年東京生まれ。建築家。芝浦工業大学大学院修士課程修了後、磯崎新アトリエ、伊東豊雄建築設計事務所を経て1993年城戸崎和佐建築設計事務所設立。2008年—2012年京都工芸繊維大学准教授。2012年より神戸大学客員教授。2013年より京都造形芸術大学教授。主な作品に鈴木木材工業本社、ガボンの魚市場、チュウクウ、ヨウキ、16、など。主な受賞に、SD賞、グッドデザイン賞、インテリアプランニング賞優秀賞、住宅建築賞、INAXデザインコンテスト銅賞など。

プロフィール城戸崎和佐(きどさき・なぎさ)

有限会社城戸崎和佐建築設計事務所/取締役、京都造形芸術大学環境デザイン学科教授・学科長

1960年東京生まれ。建築家。
芝浦工業大学大学院修士課程修了後、磯崎新アトリエ、伊東豊雄建築設計事務所を経て
1993年城戸崎和佐建築設計事務所設立。
2008年—2012年京都工芸繊維大学准教授。
2012年より神戸大学客員教授。
2013年より京都造形芸術大学教授。主な作品に鈴木木材工業本社、ガボンの魚市場、チュウクウ、ヨウキ、16、など。
主な受賞に、SD賞、グッドデザイン賞、インテリアプランニング賞優秀賞、住宅建築賞、INAXデザインコンテスト銅賞など。
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