2015.02.03
多くの企業が抱える課題、「社内コミュニケーション」。「気になるオフィス!」で取材してきた中でも、
ほとんどの企業がコンセプトとして掲げており、オフィスにおいて可能な限り様々な仕掛けを実行しています。
今回は、オフィス作りのほか社内報の実務経験が豊富で、年間約70件の講演を依頼されるという、
「社内コミュニケーションメディア」のスペシャリスト、豊田健一氏にお話を伺ってきました。
―現在のお仕事についてお聞かせください。
現在、三つの仕事に関わっています。社内報事業では事業責任者、ナナ総合コミュニケーション研究所の主任研究員、『月刊総務』という日本で唯一の総務担当者向け雑誌の編集長です。
社内報・社内コミュニケーションや、総務関連のテーマで、年間約70件の講演をやらせていただいています。社内報関連では、実際に企業様の企画会議に出席し、コンサルティング、編集業務などもやらせていただいております。
―現在多くの企業が課題にしている「社内コミュニケーション」というテーマですが、豊田さんはいつごろからこの方向にいかれたのでしょうか。
「社内コミュニケーション」は現職からです。いわゆる“総務”については深く経験していましたが、いまのような職に就くとは想定していませんでしたね。
リクルート在籍時代、営業1年、経理1年、総務1年強、また営業に戻って、、、と目まぐるしい異動の連続で。ようやくペースをつかめてきた頃に異動になるのでなかなかひとつの業務に自信が持てなかったんですね。その次の会社では総務課長として転職しました。業種上、特殊な対応が多かったのですが、そのぶん自信にはつながりました。その後、現職です。『月刊総務』の業務からスタートでした。
社内報は、ナナ総合コミュニケーション研究所を立ち上げたときに関わったのがきっかけです。社内報を営業するにはまず実務を知らなくては、ということでチャンスがあれば率先して手を挙げて、ときには印刷会社さんに編集業務を教えてもらったりしながら叩き込みました。
―“総務”でのご経験が下支えとなっているのですね。
はい、そうです。総務は何かと雑用係りなどと言われがちですが、私は、全社で誰もやっていないような仕事をやらせてもらえる部署だと思っています。外部との接点はもちろん、社内人脈もできてきますので、コミュニケーション力も磨かれますよね。複数の業務をパラレルで動かす能力も必要になるので、自分の“CPU”と言いますか、“性能”がどんどん高まるチャンスがあると思います。
よく「総務のあり方とは」と聞かれることがありますが、「捉え方」がすべてだと思います。雑用や面倒な仕事をやる部署、ではなく、誰もやらないような仕事をやらせてもらえる、大きな可能性を見いだせる、と捉えると見える世界が全く変わってくるはずです。
オフィス作りも多く経験しました。リクルートで最後に在籍したのはエリア推進部という販売会社を管理する部署で、総務経験者ということで同日に12~3か所の拠点統廃合を仕切ったり、次の魚力では本社移転も担当しました。オフィスは社員が日常的に接する場ですから、「オフィス作り」「働く場の環境整備」は、すごく影響力の大きい仕事です。日経ニューオフィス賞も、コミュニケーション活性のしくみが工夫されている会社が多く受賞していますよね。価値のある、可能性の大きい仕事だと思います。
―取材していると本当に多くの企業が「社内コミュニケーション」をテーマにしていますよね。
そうですね。各社趣向を凝らしたオフィスを作っていますよね。社内コミュニケーションの活性化のためにできることは、社内メディアでもオフィス作りでもたくさんあると思います。例えばゴミ箱が一か所しかなければそこへ足を運ぶ。そこに壁新聞があれば見るし、たまたま同僚がいたら話が始まることもあるでしょう。
最近では音に関する環境整備は注目かと思います。話すときひそひそ声にしないといけないほど声が反響してしまい、常にシーンとしているオフィスを見たことがありますが、一度それが習慣化するとなかなかなおらないものです。吸音素材のオフィス家具もありますし、川の流れる音を流したり、オフィス専用のBGMサービスなんかも出てきています。
これまでは目に見える仕掛けでしたが、今後は音や香り、五感にどう訴えかけるか、ということが注目されていくでしょうね。
―いろんな働き方が認められるようになり、逆にオフィスが簡略化されている例も多く見られますがいかがでしょうか。
確かに必ずしもオフィスに出社する必要性がなくなってきていると思います。連絡を取ろうと思えばICTですべて完了できる時代です。しかし、直接顔を見て気づくこと、姿を見るだけで感じること、自分は参加していない他人同士の会話を聞いているだけで得られる発見、というものはオフィスにいないと生まれないものです。
家族が帰る家があるように、オフィスのベースとなる部分は、“同じ釜の飯を食う”、隣にいる、という感覚なのかなと思います。
―「社内報」は社内コミュニケーション活性化に寄与することもあるかと思いますが、読まれない心配もありますよね。
残念ながら100%読まれるということは難しいですが、昨年、パナソニックが、一時期電子化していた社内報を2年ぶりに紙に戻しました。WEBにすると閲覧率が大幅に下がるという理由で、ほかにも同様に紙媒体に戻した企業の例がいくつもあります。紙媒体のほうが閲覧率は高いようですね。また情報提供の手法としてはPULL型よりPUSH型のほうがより多くの人に読んでもらえると思います。
―「社内報」の魅力はどのようなところでしょうか。
コミュニケーションのきっかけを作るのが社内報のひとつの役割です。まったく縁のなかった社員には、何の情報もなければ話しかけづらいものですが、何か知っている情報や共通の話題があれば会話はスタートします。お互いに知ろう、褒め合おうという意識が生まれ、少しずつ組織が強固なものになっていくのではないでしょうか。
「ラーメン好きなんですね!今度一緒に行きましょう」と新たなネットワークができたり、いつもメールだけでは冷たい印象を受けていたのが、プライベートの一面を見ると印象が変わったりしますよね。
―たしかに、プライベートな情報を知れるチャンスになりますね。
もうひとつあるのは、会社の「周年史」作り。そのときはたとえ読まれなくても、会社の出来事を記録として残しておくと、あとあと結構役立ちます。社内報をやることにデメリットはないはずです。簡単な人物紹介をするだけでも、毎月のように入社者を迎える会社などでは重宝するでしょうね。最近はフリーアドレスが増えてなかなか顔を覚えられないそうですよ。
つい最近本で読みましたが、とある社長がイントラネットで毎日ブログを書いていて、社長が現場に行くとブログを読んだメンバーから会話が始まり、すぐに場が温まることがあるそうです。ブログだけは絶対に続ける、とその方はおっしゃっていました。
―「社内報」などを始める際に一番大事な心構えとはどんなことでしょうか。
「会社を良くしたい」という強い想いです。社内報に関わらず、問題意識を持つことは重要。問題意識があると必ず現場に行くはずです。いまなにが困っているのか、何の情報が必要なのかをキャッチできます。また、読まれる記事を作りやすい、という観点では社員のことをよく知っている、というのも大切なポイントです。
組織のベースはコミュニケーションです。「会社を良くしたい」という想いを持って、取り組んでいただきたいです。
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自社のコミュニケーションはどうかな、と振り返っている方もいるのではないでしょうか。周囲のメンバーのこと、隣りの部署の人のこと、どれだけ知っていますか?知ろうとしていますか?
といっても毎日毎日飲み会をするわけにもいかないし、行っても同じ部署のメンバーで固まってしまったりもするかもしれません。そもそもその会を欠席していたら場の共有もできません。
社内報は、そのようにどうしても生まれてしまう情報格差を埋めるために有効と思いました。社内報を発行するマンパワーがない場合は、以前ご紹介した動画自販機のディスプレイを利用して、社内の情報を共有するのもよいかと思います。
「社員のことをよく知っていること」がポイントとされていましたが、強い気持ちがあれば、たとえ入社したての方でも実現できるのではないかと思いました。「まだよく知らない」ということを逆手に取れば、より早く、働く仲間のことを知るチャンスになると思います。
プロフィール | 豊田 健一(とよだ・けんいち)
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長を経験後、ウィズワークス株式会社入社。現在、日本で唯一の総務向け専門誌『月刊総務』編集長、ナナ総合コミュニケーション研究所主任研究員。総務経験、社内報の企画編集の実績を活かした総務と社内コミュニケーションのコンサルや講演など多数。 情報サイト「オールアバウト」社内コミュニケーションにて情報発信中 http://allabout.co.jp/gm/gp/1600/library/ ナナ総合研究所:http://wis-works.jp/labo/labo_info/ 『月刊総務』: http://wis-works.jp/soumu/soumu_current/ 月刊総務オンライン:http://www.g-soumu.com ウィズワークス株式会社 http://wis-works.jp/ |
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