2014.10.01
いまやスマホユーザーで使ってない人はいないのではないかと思われるほどポピュラーとなった「LINE」アプリ。そのアプリを提供する大注目の成長企業、LINE株式会社の採用ページからこんな印象的な言葉を見つけました。
「UX(User Experience)の神様は細部に宿る」
ユーザーのことを一番に考え、いいと思ったことはすぐに検討し実行に移すというスピード感のある会社。そんな会社のファシリティを一手に背負う野村さんも、「すべてはユーザーである社員のため」という想いを持ってこれまで取り組んでこられました。
オフィスが渋谷ヒカリエに移転する際のプロジェクトから総務のマネジャーとして参画、現在は福岡社屋の建設プロジェクトを推進する部署でご活躍しながら、本社の総務チーム、LINE Fukuoka株式会社総務チームも兼務され、忙しい日々を送っています。一貫してオフィスづくりを経験してこられたその誇りと、根底にある想いをじっくり伺いました。
―LINEに入社されるまでのご経歴について教えてください。
大学の建築学科を卒業し、卒業後は三井デザインテック株式会社でビルの内装工事の企画・営業・現場管理に5年ほど携わりました。その後商業施設を運営する会社や、プロジェクトマネジメントを担う会社、小規模の内装業者などで経験を積み、外資系の医療企業に入社、そこでは3年ほど総務業務に従事しました。その後現在のLINE株式会社の前身、NHN Japanに縁あって入社し、いわゆる“ファシリティマネジャー”を担当しております。
―立場は少しずつ違っても、すべて“オフィスづくり”、“働く環境づくり”に共通しているのですね。
そうですね。大手の会社のときは全体を請け負ったあと、そこからさらに小さな内装業者に依頼するケースが多かったですし、小規模の会社では例えば、材工分離を意識しながらそれぞれのベストな発注先を選定し、コスト感覚や段取り含めスピード感を大事にしながら進めていく、そういった力がついたように思います。また、プロジェクトマネジメント業では、直接ユーザーさんと向き合い、また一方では専門業者と向き合って、プロジェクト推進をお手伝いする仕事だったのでまた違った苦労がありました。
―医療系の会社では、社内の「総務」というお立場になったわけですが。
北海道から沖縄まで全国的に展開している500人くらいの会社で、総務はたった4名という体制でした。小さなレイアウト変更や引っ越しの立会いなどをはじめ、100以上ある社宅の管理や携帯電話の管理、座席表の更新からアスクルの発注まで、総務の一連の仕事を学ぶことができました。本当はファシリティの募集だったので、ちょっとかけ離れていましたが(笑)、すごく勉強になりました。
そのような中、大きな役割が回ってきました。本社移転のプロジェクトが発足したのですが、それと同時に医療機器を保管・発送するための商品センターの移転プロジェクトも立ち上がり、後者を全て任されたのです。これは非常に良い経験になりました。玉突きの引っ越しはなかなか骨折りでしたが、現場の責任者の人たち、商品センターの各部門の人たちの意見をとりまとめ、希望を実現するためのベストな方針を画策しながら進めていったとき、「ああ自分はやっぱりこれをやりたいんだな」って改めて認識しました。“現場をおさめる力”っていうんですかね。このやり方は自分にしかできないだろう、と自己満足していました(笑)。
―そこから現職に就かれたのはどのようなきっかけだったのですか?
商品センターの移転プロジェクトが引き金となり、転職活動を始めました。当時のNHN Japanでは総務と人事労務のマネジャーが兼務している状態だったのですが、本社移転を控えそれらを切り分け、総務のマネジャーを募集する、というタイミングだったのです。以前から「自社のファシリティに直接関わる立場」に就きたいと強く思っており、縁あって入社することができました。
NHN Japanは、オフィスも綺麗で、社員を大切にしている会社、という印象を受けました。前述のような夢に近づくには、社員が働きやすい環境を意識しているかどうか、というのは重要でしたね。自分のやりたいことができる会社としてはぴったりでした。
―そこで、いきなり本社移転という大きな仕事が待っていたわけですね。
本社移転が既に決まっていたので、入社後すぐにプロジェクトにアサインされました。ビルとの交渉や設計事務所との打合せ、各業者との打合せなどを担当しました。またちょうどその頃、当時子会社であったネイバージャパンとライブドアとの3社統合プロジェクトも浮上しました。統合にあたっては、ヒカリエへの本社移転の前でしたが、大崎オフィスと西新宿オフィスに分かれていた開発部門の距離を近づけるために、部署入替えの引越しを実施しました。これは、同じ会社になったけれど開発環境が違うので、「お互いの垣根をなくそう」という意図で実現したのです。社員の意識が高く、やると決めたらすぐに実行に移す風土は徹底していますね。
―ファシリティを担当する立場で、いつも心がけていらっしゃることはありますか?
当社ではUX(ユーザーエクスペリエンス)=ユーザーの声を大事にする、という考え方があります。LINEなど自社のサービスをより良くするために、まず、ユーザーの声に耳を傾ける、という姿勢です。例えば、社内にはUXリサーチルームという部屋があり、ユーザーにお越しいただき、実際に利用している状況を隣の部屋でカメラ等を用いてチェックすることができます。その他にも同じくユーザーにお越しいただき、イベントを通して直接声を聞いたりしています。それと同じで、僕らファシリティ担当にとっての“ユーザー”である社員のために良いと思うこと、具体的には使い勝手を一番に優先し、空間を考えるようにしています。
たとえば、会議室のドアの前の床に数字が書いてあります。会議室がずらっと並んでいると、部屋のドアの前まで行ってサインを見ないと自分がこれから使う部屋がどれだかわからないですよね。それが、床に大きく書いてあればすぐ判別できる。あくまでもユーザーの使いやすさが一番でそのためのデザインとは何か、という意識が重要だと思っています。
というわけでいつも言っているのが、
「8割を作ろう。あとの2割はユーザーにまかせる。」
つまり8割までを用意してあげて、あとは使う人が変えるなり付け足していけばよいと考えています。社員のために良いと思ったものを用意してみても、実際に社員が使ってみなければわからないことは多々あるので、完璧に作りこまずにある程度フレキシビリティを持たせておく。使う人がいて初めて空間が完成する、と思うんです。
社内のカフェスペースに、グリーンの芝生をイメージした、ちょっと小上がりになったところを作ってみました。そこにはブランコを置こうかとか望遠鏡を設置しようかとかいろいろなアイデアがあったんですが、ちょっとみんなの反応をみてから考えるということになり、クッションだけ置いてみたんです。気づいたら靴を脱いで上がっている人が出てきて、みんなそれに倣ったし、そのうち窓のほうを向いてお弁当食べている、なんていう現象が起きました。「なるほど、そういう使い方があるのか」と、面白いなと思いました。物理的にも心理的にも柔軟性のある対応が重要だと気づかされた一件です。
―クラウドコンピューティングやノマド勤務制度など、オフィスに行く必要性がだんだんなくなってきている、と感じる昨今ですが、どのように思われますか。
私がこの仕事をするうえで一番大事にしているのは、オーダーをくれた相手に直接会いに行くということです。立場上、社員のみんなからメール等でいろんな問い合わせなどをもらうのですが、必ず直接会いに行って、顔を見て、話を聞きます。細かい意図や背景、こういうふうにしたらいいのでは、というところまでメールでは書けないでしょうし、こちらが足を運ぶことで“この人ちゃんとやってくれるな”、と思ってもらえるだろうし。そこは手を抜いてはいけない部分だと思っています。
「オフィス」は、どの職種の人でも自分の会社でいま何が行われているか、どんな方向に進んでいるかを確認することができる場所ですし、コミュニケーションという側面では、顔を合わせることに勝るものはないと私は思っています。
―なるほど。それができるのが「オフィス」の存在意義ということなのかもしれませんね。
今日はありがとうございました!
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働き方が多様になった今、たとえオフィスがあっても、対面コミュニケーションはどんどん省略化されてきているように思います。一番丁寧なのは、直接顔を見ながらの、生のコミュニケーション。それが無理ならば電話で。それも無理ならば最後はメールで。オフィスが必要かどうか、という以前に、働く仲間としての必要なコミュニケーションがきちんと交わされているか。本来のオフィスの存在意義を、改めて考えさせられたような気がしました。
プロフィール | 野村 知之(のむら・ともゆき)
LINE株式会社/FKプロジェクト推進室 (兼務:LINE株式会社/総務チーム、LINE Fukuoka株式会社/総務チーム マネージャー) 1976年3月 神奈川県生まれ。 1998年 大学卒業後、三井デザインテック株式会社に入社。ビルの内装工事の企画・営業・現場管理に携わる。 オフィスづくりにおけるプロジェクトマネジメント会社、内装工事会社を経て、 2008年 セント・ジュード・メディカル株式会社に入社。総務業務をオールマイティにこなすほか、医療機器の倉庫および物流拠点である商品センターの移転を担当。 2011年 NHN Japan株式会社(現LINE株式会社)に入社。渋谷ヒカリエへの本社移転プロジェクトを担当。 2013年 FKプロジェクト推進室(福岡社屋建設プロジェクトを推進する部署)に異動。LINE Fukuoka株式会社発足にあわせて同社総務チーム マネージャー兼任。 |
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