ライター:一色先生
2026.06.26
こんにちは。一色です。
オフィスづくりの参考事例を探していると、どうしても大規模な本社移転や新築オフィスに目が向きがちです。
日経ニューオフィス賞ニューオフィス推進賞や経済産業大臣賞の受賞事例を見ても、大企業の先進的なオフィスが注目されることが少なくありません。例えば、ボッシュグループ本社オフィスや電通デジタルのオフィスは、働き方改革やDX、多様な働き方への対応を高いレベルで実現しており、多くの企業から注目を集めています。
しかし、多くの企業にとって参考になるのは、必ずしも数千坪規模のオフィスではありません。
実際には、従業員50~150人規模の企業でもニューオフィス賞を受賞している事例は数多く存在します。そしてそれらのオフィスを見ていくと、「組織力を高める工夫」がコンパクトながら非常に巧みに取り入れられていることに気づきます。

組織が機能するためには
・共通目的
・コミュニケーション
・貢献意欲
の3つが重要だとされています(チェスター・バーナード「組織の3要素」)。
今回ご紹介する受賞事例には、この3要素を高めるための工夫が随所に見られます。そこから見えてくる「中小規模オフィスの組織力向上 5つの法則」をご紹介します。

法則① 経営理念を空間や組織に落とし込む
受賞オフィスの多くは、単にデザイン性が高いだけではありません。
企業の理念やビジョンが空間そのものに表現されていますし、組織に浸透する活動を行っています。
例えば、松川レピヤン(入居者数 50人/福井県坂井市)の新社屋では、オフィス・工場・ショールームを一体的に構成することで、「ものづくりの価値を伝える」という企業姿勢を体現しています。
▼松川レピヤン(入居者数 50人/福井県坂井市)

また、オカモトヤ(入居者数 141人/東京都港区)のライブオフィスでは、多様な働き方や個性を尊重する企業文化がレイアウトや家具の選定にも反映されています。
理念を壁に掲示するだけではなく、日々の行動の中で自然に感じられるようにすることが重要です。
オフィスは企業文化を伝えるメディアでもあります。
▼オカモトヤ(入居者数 141人/東京都港区)

法則② コミュニケーションを仕組み化する
「コミュニケーションを活性化したい」という言葉は多くの企業で聞かれます。
しかし、受賞オフィスでは単に交流を呼びかけるだけではありません。
交流が自然に生まれる仕組みを空間に組み込んでいます。
ワンフロア化によって、お互いの状況が感じ取れるように部門間の壁を低くしているオフィスが増えています。
黒田生々堂(入居者数 54人/大阪市中央区)の本社オフィスでは、社員同士や来訪者との交流が生まれる広場のような空間を意図的に配置しています。
中小規模企業では、一人ひとりが組織に与える影響が大きいため、情報共有や相談がしやすい環境づくりが組織力向上に直結します。
重要なのは、「話しましょう」ではなく、「話したくなる環境」をつくることです。
▼黒田生々堂(入居者数 54人/大阪市中央区)

法則③ 多目的空間で新しいつながりを生む
近年の受賞オフィスには、従来の執務スペースだけではない、多目的な空間が数多く見られます。ラウンジ、カフェスペース、イベントスペース、ショールームなどがその代表例です。
丸天産業(入居者数 59人/愛知県名古屋市)の本社オフィスでは、自社の働き方や商品を体験できるライブオフィスとしての機能も持たせています。松川レピヤンでは顧客や地域との接点としての役割も担っています。
こうした空間は、社員同士の交流だけでなく、顧客や地域社会との新たな接点を生み出します。組織の成長は社内だけで完結するものではありません。外部とのつながりが新たな発想や学びをもたらし、結果として組織全体の活性化につながります。
▼丸天産業(入所者数 59人/愛知県名古屋市)

法則④ 社員参加型でオフィスを育てる
受賞事例を調べていると、もう一つ共通する特徴があります。それは社員がオフィスづくりに深く関わっていることです。
プロジェクトメンバーとして参加するだけでなく、ワークショップやヒアリングを通じて多くの社員の意見を取り入れています。完成後も運営委員会やオフィスカイゼン活動を継続している企業が少なくありません。オフィスづくりは完成がゴールではありません。むしろ運用が始まってからが本番です。
社員が自分たちのオフィスだと感じられる環境は、組織への愛着や当事者意識を高めます。これは組織論でいう「貢献意欲」の向上にもつながります。
法則⑤ オフィス活用を徹底する
今回ご紹介した事例の多くは、決して巨大なオフィスではありません。
オフィスの評価ポイントを見ると、面積や設備の豪華さよりも、「どのように使われているか」が重視されています。
例えば、
・社員同士が自然に交流できるか
・理念が共有されているか
・挑戦や学びが生まれているか
・顧客との価値共創が進んでいるか
といった運用面が高く評価されています。
オフィスづくりはハード整備の活動ではありません。
どのような組織をつくりたいのかを考え、その実現手段としてオフィス活用を徹底する(オフィスを使い倒す)ことが重要なのです。
おわりに
オフィスは単なる「働く場所」ではありません。
組織の目的を共有し、人と人をつなぎ、コミュニケーションを活発にすることにより、企業の理念、ビジョンを大切にしていることを共有し、一人ひとりの貢献意欲を引き出すための装置でもあります。
これからオフィスづくりやリニューアルに取り組まれる皆さまも、ぜひ「どんな空間をつくるか」だけでなく、「どんな組織をつくりたいか」という視点から、自社らしいオフィスづくりを考えてみてはいかがでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
| 参考情報 | 「THE BEST OF NEW OFFICE 2025」 「THE BEST OF NEW OFFICE 2024」 「THE BEST OF NEW OFFICE 2023」 発行:一般社団法人ニューオフィス推進協会 |
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一色先生
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。
水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
一色先生
ライタープロフィール
コクヨに42年間オフィスデザイナーとして勤務。オフィスデザインだけでなくオフィス研究やオフィス運営維持活動も担当。オフィスやカイゼンに関する講演は全国で50回以上実施している。2019年にはデザインスタジオを開業。オフィスのコンセプトづくりやコンペ提案のアドバイスを対応。 水彩画家として個展やカルチャースクールの絵画講師、公募展への応募なども行っている。2020年には初出品した水彩画が日展入選。はやくスケッチ旅行を再開したい。
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