ライター:セッキ―
2023.12.14
今回取材させていただいたのは、青山フラワーマーケットを運営する株式会社パーク・コーポレーションの5つの事業部門のうちのひとつ、空間デザイン事業を手がけるparkERs(パーカーズ)さんです!
パーク・コーポレーションのオフィスは実は、8年ほど前に取材させていただいてるんですよね~
→気になるオフィス!パーク・コーポレーション:花も緑も人も。みんな笑顔になるオフィスです(2014年)
とてもグリーンが多くて癒されたのを覚えています。今回は、今年10周年を迎えた空間デザインブランドparkERsさんの歩みについてお話を伺い、筆者が気になっていたオフィスも取材してきましたよ!
パーク・コーポレーションは、「花や緑に囲まれた心豊かなライフスタイルを提案する」の経営理念のもと、国内100店舗以上を展開する青山フラワーマーケットを始めとしたリテール事業、カフェ事業、スクール事業、法人事業、そして空間デザイン事業としてparkERs(パーカーズ)を展開しています。
parkERsは、「日常に公園のここちよさを。」のコンセプトのもと、花、グリーン、水、光、木、石など、公園の要素を取り入れた空間プロデュースを軸に、数多くの商業施設、ホテル、マンション、オフィスビル、などをまるで公園のような自然あふれる空間へと変えてきました。発足して今年で10年になります!(2013年7月設立)
城本 栄治さん
parkERs ブランドクリエイティブディレクター
――parkERs事業10周年、おめでとうございます!
城本さん:ありがとうございます。
当初は青山フラワーマーケットの店舗デザインに始まり、その後カフェ事業が始まってその店舗デザインも担当していました。本社の内装も、以前オフィスの広場さんに取材いただいた通り、グリーンや水の演出でいっぱいなのですが、来訪されるお客様の中から、「うちのオフィスもこんな空間にしてみたい」というお声をいただくようになったんです。そこから外部のお客様にも展開していくことになり、ブランド化されたのが10年前です。
メンバーはデザインチームのほか、プランツコーディネーターという植物の専門家もいまして、美大・芸大出身と農大系出身を筆頭に、お互いバックグラウンドの違うメンバーが集まっています。
――お互いの専門知識を出し合って組み合わせる、スペシャルチームなんですね!
parkERsさんといえばグリーン、というイメージでしたが、自然の要素ってたくさんあるんですね。特に水を使った演出は貴社ならではのものだと思います。
城本さん:嬉しいです。結構初期の頃から水も取り扱っていたんですよ。ヨーロッパに行くと水の演出のバラエティの多さに驚きます。土足文化ですから足元が汚れるとかあまり気にならないのかもしれませんね。屋外も室内も、洗練された演出がすごくかっこいいんです。
花屋のオフィスなのだからもっと緑化していこうよと、鉢を沢山買ってきて置いた時期もありました。でも動きがないからなんかウソっぽくて。もっとみずみずしく見せるにはどうしたらいいかと、ベルギーから(水の)什器をいくつか買い付けてみたりして、そうしたらより潤いのある空間というか、本来のみずみずしさが表現できた。
▼同事業部のオフィス内にあるwaterfront
風のない室内では“動き”が作れないんですが、水の音やゆらぎが“動き”を出してくれるんです。水がいつ滴ってくるのか、またいつその滴りが終わるのか、あいまいな水の表現がいかにも自然です。
※parkERs事業部のオフィスはこちらの記事で!
また差別化という狙いもありました。この業界で圧倒的なサービス化をしていかなきゃならない、内装業界ではタブーな水にあえてチャレンジしていこう、と。
――壁に立ち向かったわけですね。
城本さん:ビル側がそもそも水はNGという時もあります。ただ基本的には給排水を使いませんので、漏水のきっかけをなるべく作らないようにしてきました。漏水センサーでアラートすることもできますし、どうしてもだめなときはカウンター上に小さい装置を置くなど別の表現を考えます。
――ダメと言われてもどうにかして実現しようという心意気がステキです。光についても素晴らしいプロダクトがありますよね。Hamon Lamp(波紋ランプ)はとても印象的なアイテムですね。
城本さん:これは2018年くらいから実験的に作ってみんなから意見を聞きながら作り上げていったものです。初めは、透明な四角いトレーを買ってきて、手で雫を落としてみてライトの下に置いたらどう見えるか?結構キレイそうだ、じゃあ吊るしてみよう、なんて試行錯誤を重ねました。
――ここでは様々な実験が繰り広げられているんですね。
城本さん:そうです、このウッドチップも、PC持ちながら歩いたらどういう問題が起きるかやってみようとかね。オフィスを実験的に使ってるんです。
初めはバークチップを使って、ここでなく本社のフローリングの上でやったんです。そしたら滑る人が続出して。お客さんまで影響が出るんでやめよう、となりました。そこで社長が「やめる必要はない、なにか考えてみましょう」と。それで下に薄いベニヤを敷いてクリアできたと思ったら今度は砕けるから毎週掃除が大変だ、とかヒールが刺さる、とかソファもほこりだらけになったりして(笑)結果、ウッドチップにたどり着いたと。そんな歴史がありますよ。
――しっかり実験してくださっているのでお客様には安心して導入してほしいですね!
――これまでの印象的なプロジェクトについて教えてください。
城本さん:初期の頃で、オフィス中がモニターであふれているような企業をお手伝いしました。大量の情報を緻密に調査するような神経を使う業種で、そのオフィスの緑化プロジェクトです。
やり取りさせていただいていたひとりのスタッフさんに、プロジェクト終了後にすれ違ったとき、挨拶されても一瞬わからなくて、もう同一人物とは思えないくらい表情が違っていたんです。すごくイキイキしていて驚きました。グリーンには人をイキイキさせる力があるのだなと実感した出来事です。
もうひとつは、大手町ファーストスクエアのサンクンガーデン(*1)の中庭に公園を作るプロジェクトも印象深いです。人の出入りがビフォーアフターで全く変わった。周辺のお店が一生懸命看板を出していても大手町のサラリーマンは素通り。公園を作ってもスーツだから直接座ることはしないだろうと言われていたんです。
*1一般の道路よりも低い位置に作られる庭園のこと
▼大手町ファーストスクエアのサンクンガーデン(画像引用元:全国まちなか広場研究会HPより)
それが、朝打合せの前にコーヒーを飲む人、ランチをとる人、お店の集客状況も変わって、朝から晩まで人が居るようになりました。
――みなさん公園という癒しを求めていたということでしょうか。
城本さん:公園を作れば人が集まる、というのはもちろんあると思います。ただ、「どこに公園を作るか」また「人の居場所をどう作るか」が大事だと私は思います。いかに人々の日々の導線上に作ってあげるか、ということなんですよね。
――そういえば青山フラワーマーケットは駅にあるのをよく見かけます。
城本さん:そこにどんな想いがあるか、でいうと「お祝いのための花束」ではなく、「デイリーのお花」として売っているからなんです。帰り道に衝動買いするくらい日常生活の中で花に触れてほしい、という想いがあるから、自然と店も日常的に訪れやすい立地になります。
――なるほど、毎日通ると買いたくなります!
――Well、健康経営を意識してオフィスに取り入れる企業が増えていますが、この10年でオフィス緑化の依頼に変化は見られますか?
城本さん:昔は来客など外部の人のためのスペースに注力する、いわゆる営業ツールの一つとして考えられていたものが、オフィスに対する変革が起きて、ワーカーが働く条件として心地よい環境を求めるようになりましたよね。会社側もWellを強く意識した環境を作らないと会社が切り捨てられていくところまで来ているように思います。そこで社員のエンゲージメントを高めるための施策としてオーダーされることが増えている、それがこの10年の間の変化でしょうか。
ただ、経営者としては社員のため“だけ”に、とはなかなかいかない。わたしたちは、その会社にとってもメリットのあるものにしたい、Wellはもちろんのこと、どんな付加価値になり得るか、そこを10年一生懸命深掘りしてきました。やれることの幅が広がってきたし、お客様の理解度も上がってきた気がしています。今後も伝え続けていきます。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください。
城本さん:コロナ禍によって人々の暮らしは、以前と反対方向に振り切りました。環境問題に対するアクションやネイチャーポジティブといった考えが身近になった背景もあり、以前から実は身近にあった花や緑、自然に触れて暮らす心地よさに気づき、本質的に価値を感じることができる人が飛躍的に増えました。わたしたちは、気づきはじめたその感覚をより「敏感」にさせていきたい。刺激がなければ、またその感覚は薄れていってしまうと思うのです。
だからわたしたちはエビデンスやロジックを中心に組み立てていくのではなく、あくまで「体感すること」「わくわくすること」を大切に、アイデアを生み出し続けていくことで、人が本来持っている感覚をビリビリと刺激し続け、もっと自由で面白い発想に溢れた空間づくりをしていきたいと思っています。
ありがとうございました。
◆編集後記◆
パーカーズさんのことを一度取材しただけのときは、植物の扱いに詳しくてインテリアに取り入れるプロ、そのように思っていました。大きな誤解でした。
一口に自然、といっても多彩な要素があるのだなと気づかされます。花や緑だけではない、水も光も石も木も。それらをオフィスに取り入れるのは、ある種贅沢です。もっというと、“無駄”という人もいるでしょう。彼らはその“贅沢”、“無駄”に丁寧に向き合い、チャレンジを続けて壁を乗り越えてきたからこそ自信をもって提供しています。
現代人は無駄なものをそぎ落とすことが得意です。仕事の上では特に効率性を求められます。だからこそ、その環境にはあえての“無駄”が必要なのかもしれません。これからパーカーズさんが生み出すワクワクするアイディアを楽しみに待ちたいと思います。
Information | parkERs(パーカーズ) https://www.park-ers.com/
*運営会社:株式会社パーク・コーポレーションの事業部の一つ *所在地:東京都港区南青山3-1-7 青山コンパルビル 3F→parkERs事業部のオフィスはこちらの記事で! *業務内容:【法人向けサービス】空間プロデユース(トータルコンセプト設計) / 空間デザイン( 内装設計・外構設計・環境計画) / 施工(監理) / 植栽メンテナンス / 植物を使った企画 やブランディング/ など ★すべてのオフィス事例はこちらで見られます★ |
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ライタープロフィール
整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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整理収納アドバイザー(準一級)、防災士。2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!
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