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ライター:マーシー

2020.09.08

総務のプロ・岡田大士郎さんに聞く~「人」に焦点を当てた、未来のオフィス・未来の総務とは~

新型コロナの影響が、まだ当面収束する気配が見えない中、オフィスを取り巻く環境も様変わりしています。総務の専門領域の一つである「オフィス空間のマネジメント」は、急速に変わるこの環境の中で、今後何を指針として進めて行けば良いのでしょうか。スクウェア・エニックス米国法人社長、同社日本法人(本社)の総務部長を務め、最新の人間科学などの知見を駆使し、価値を創造する「人」にフォーカスする研究・取り組みを長年続けて来られた岡田大士郎さんに、これからの総務・未来のオフィス像についてお話をお聞きしました。

―現状のオフィス関連の動き、特に、オフィス空間を削減する最近の流れについてどう思われますか?

7月に富士通が、勤務形態をテレワーク型に大きくシフトさせることに伴い、国内の既存オフィスを、今後3年かけて半減させる方針を発表(日経クロステック記事より引用)しました。この発表のインパクトは予想以上に大きく、ある意味では多くの経営者にとっては「渡りに船」の状況でもあったわけです。オフィスを半減できれば、固定費を大きく削減できる。コロナ禍で本業が苦しくなったとは言え、すぐさま人員を削減するわけにもいかない。そうした特殊な環境下で、リモートワーク、テレワーク推進という名のもとに、人件費に次ぐファシリティ(施設)費を合理的に削減できる機会ではないかと捉える空気が、この富士通のニュースをきっかけに、企業経営者間で、急激に蔓延し始めているのではないかという懸念を抱いています。

もちろん、使わなくなったオフィス空間を何とかしようと考えることは、経営者としてはごく当たり前の発想なのですが、問題は、その前提となるオフィスという言葉が、どういう意味で使われているのか、という点です。漠然としたイメージで語るのではなく、きちんと定義を確認する。職務に合わせたオフィス空間の再定義が、今一度必要なのではないかと感じています。

―オフィス空間の再定義とは?

本部機能にとってのオフィス、営業部門にとってのオフィス、またスタッフ部門にとってのオフィスなど、その職務の機能・特性によって、求められるオフィス空間というのは、それぞれ性質が異なります。上述の「オフィス空間削減」という議論をする場合に、一体そのオフィスとは、どういった機能・性質のことを指しているのか、何をもって、どの領域をオフィスと呼んでいるのか、という点が曖昧なため、その整理が必要です。

これまでも、未来のオフィスのあるべき姿については、様々な角度から議論がされてきました。ただ、その際に用いられたオフィス像の多くは、管理部門やスタッフ部門が使う空間という意味合いが中心でした。より具体的に言うと、自社の空間の中でのABW~Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング。働く人が作業をするために、最適な場所を自分で選ぶことができるワークスタイル[PLUS社HPより引用])~という概念を中心とし、誰がどこでどういう働き方をするのが最も生産性が上がるかという論点で議論がなされてきました。大前提が「自社」の中での話だったわけです。

その大前提に立ち、ABWの概念にならって、ここは集中空間、ここは共同作業の空間、ここは雑談空間、というような空間づくりの議論がなされてきました。今、コロナをきっかけとした、パラダイムシフトが急速に進む時間軸の中で、本部機能や管理・スタッフ部門が使うオフィスにとどまらない新しい視座で、これからのオフィスの在り方は?という議論が、改めて必要ではないかと感じています。

―議論をする背景が、急速に変化してきている

コロナとともに生きて行く時代となり、そもそも本当に必要がなければ、極力オフィスには行かないで欲しい、という話になった。そして、その代替手段としてのテレワーク、という文脈で、この数か月、オフィスの議論がなされて来ました。ただ、その少し前を振り返ってみた時に、ここ数年叫ばれてきた「働き方改革」という意味合いの中におけるオフィスのあるべき姿とは何なのだろう、どのようなオフィス空間であれば、働く人たちが心地よく、安心安全に、生産性を高めることができるのだろうか、という本来議論すべき健全な視座を、今失いつつあるのではないか。その重要なポイントを、ここでもう一度見直す必要があるように思います。

そうした意味での再定義をした上で、これからの未来のオフィスはどうあるべきなのか、という点を考える時に、自社が管轄するスペースだけでオフィスというものを完結させるべきなのか、それともコワーキングオフィスなどを活用するのか、サードプレイス的な場所をも想定するのか、という議論が必要になってくるように思います。「スペース・ポートフォリオ・マネジメント(SPM)」という表現になるのですが、第三者が提供するサービス空間をも、自社のオフィスの一部として積極的に取り込んで行く新しい概念です。オフィス空間をマネジメントする立場にある総務担当者の方々は、今後、外部のスペースをもうまく取り込んだポートフォリオを想定し、コロナ時代の新たな働き方に対応する必要性が急速に高まって来ているように感じています。

―「場づくり」のプロとしての総務に求められる領域がさらに広がっていると

そのとおりです。コロナがきっかけでテレワークが想定以上に急拡大することで、従来のオフィス面積が縮小して行くことは、ある意味必然的な流れです。それを事実として受け止めた上で、総務の元来の専門領域である「場づくり」をどうクリエイトすべきかという視点での検証能力を高める必要があります。

自分たちのオフィス空間が仮に何割減ったとしても、生産性がこれまでと比べて大きく低下せず、いや、むしろ向上し、良質な仕事の価値をアウトプットし続けることができるのか。そうしたシミュレーションをまずは行ってみる。それはマトリックスなどを用いたかなり複雑な計算式になるかもしれませんが、一定のアルゴリズムを組んで、さらにAIなどの技術を活用することで、算出は十分可能ですし、それにより、議論の有効な着地点を見出すことができます。

その上で、今後本当に必要となる空間は、果たして自社内のものでなければならないのか。フレキシブルオフィスなどの活用も視野に入れて、自社の外部に活路を見出しても良いのではないか。そうすることで、新たな時代の新たな働き方を促す創造的な提案が可能になるのではないのか。そこまで想定した議論を総務がリードして行くことで、「場づくりのプロ」としての価値をさらに高めることができると考えます。

コロナをきっかけとした新たな時代に突入したことで、総務に求められることも、高度に様変わりしつつありますが、一方でこれは、総務にとっての大きなチャンスでもあるわけです。

―総務の未来像について、お聞かせください

管理部門の重要な一角として、自社をサポートする総務。それが、ごく当たり前の、従来の姿でした。近年、グループ会社間での複数の組織を一元的にサポートする「シェアードサービス・シェアード管理部門」という手法が登場し、一定の成果を残してきました。今後、この範囲をさらに広げ、業界単位でのシェアード総務という機能を模索する。そして、そこでプロがどんどん育つ。もちろん、各社での営業機密がありますから、そこのセキュリティ管理を万全にする必要はあります。ただ、各社で共通する総務の業務というものは確実にあります。

働き方が大きく変わる中で、企業経営の中におけるファンクションそのものの価値・役割もこれから大きく変わります。そうした流れの中で考えられる総務の未来像とは何か。また、これからのオフィスの役割とは何なのか。その一つの答えが、業界横断的な管理部門のオープンイノベーションを起こして行く主役、および場(空間)としての役割。そうしたこれまでにない活用法を提案できる総務、そしてその結果として活用されるオフィス空間というものが、我々が見出すべき未来の姿の一つではないかと考えます。

―そう考えると、総務はますますクリエイティブな能力を磨く必要が出てきます

総務の仕事は、日常の当たり前をきちんと回すことに加え、経営と連携しながら、組織の基盤を支える重要な役割を担っています。さらに、答えがどこにもないこれからの新しい時代の中で、「人」にフォーカスし、その価値を生み出す「人」に対して、どういう場を構築すべきか

これはクリエイティブな発想がなければ、決してなしえない高度な領域ではありますが、こうした能力を身につければ、どこの世界でも通用する力を持つことができます。自分自身のキャリアメイクをする上でも、大変有用だと思います。今のこの変化の時代をポジティブに楽しみつつ、総務としてのキャリアの飛躍を考えるための次の一手を考える、貴重な時間の過ごし方を、今こそ考えてみてはいかがでしょうか。

        *       *       *

オフィスを取り巻く環境が激変する中、経営陣に対して、中長期を見据えた価値ある提案ができる唯一の存在が、実は総務部門なのかもしれません。オフィスそのものの意味合いも、また、総務の存在意義・役割も、今後大きく変容する流れの中で、「人」に焦点を当てながら、企業経営をサポートして行く重要なミッションが、岡田さんのお話から読み取れてきたように感じます。変化を楽しみ、未来のオフィス・そして未来の総務像を模索する新たなチャレンジがこれから加速する予感がします。

プロフィール岡田 大士郎 (おかだ だいしろう)

株式会社HLD Lab 代表取締役社長CEO、ハピネスプロデューサー
1979年立教大学卒 日本興業銀行(現・みずほ銀行)において、投資銀行業務や海外業務(ロンドンに勤務)ならびに国際税務業務を20年にわたり経験後、ドイツ銀行グループでDirector, Head of Taxesとして国際税務統括の業務に従事。2005年にスクウェア・エニックスに入社し、2007年まで米国Square Enix, Incの社長(COO)として米国事業に携わった後、2007年に本社に帰任。「組織風土並びに働き方改革」をミッションとして総務部長に就任。その後、ミッションであるクリエイティブワークプレイスの構築を進め、2012年に本社スタジオの全面移転や2015年には大阪事業所の移転プロジェクトに関与。クリエイティブワークプレースダイナミクスの実践と、コンテンツ制作業務における価値創造支援を行う「場」作りに取り組んでいる。2018年3月同社定年退職。2018年に一般社団法人ファシリティ・オフィスサービスコンソーシアム(FOSC)副代表理事就任。同年、一般社団法人日本ライフシフト協会理事就任。
マーシー

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ライタープロフィール

2019年入社。金融・不動産・製薬などで総務業務に長年従事。オフィス好きが高じて、プライベートでも独自のオフィスツアーを企画するなど、オフィス訪問がライフワークとなっている。週末などに非営利分野の活動も精力的にこなしている。強くないのにお酒好き(焼酎派)。

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