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気になるこの人!
オフィスに関わるあんな人こんな人、ご紹介します!

ライター:セッキ―

2020.02.25

関根千佳:ユーディット/会長兼シニアフェロー_PART1
「だから日本にはユニバーサルデザインが根付かない」

あなたの会社は、ユニバーサルデザインを取り入れていますか?
東京オリパラ大会が目前に迫る今、“ユニバーサルデザイン”(以下、UD)というキーワードで世の中を見渡してみると、残念ながら日本が世界の潮流からいかに遅れているかということに気づいてしまいます。それは地域、街、オフィスなどのハード面だけでなく、大人も子供も含めた人の”意識”の面でも。オフィスの広場では、誰もが気持ちよく過ごせる場づくり、意識づくりを目指して活動する方々に着目してみたいと思います。

日本におけるユニバーサルデザインの先駆者、関根千佳氏は、日本IBMにおいてUDにつながる製品やシステムを多数生み出した後、株式会社ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)を設立、数多くの企業や自治体に対しUDコンサルティングを提供し続けています。

株式会社ユーディットは、「情報のユニバーサルデザイン研究所」。
Universal Design Institute for Information Technology→頭文字をとって「UDIT(ユーディット)」です。
さらに、”You do it!”「障害者や高齢者に、『あなたが主役よ!』と伝える意味をこめている」のだそうです。関根さんの強い思いが込められた、素敵な社名ですね^^

そして、車いすユーザーで三鷹市で長年、障害者福祉や情報化に従事し、現在は株式会社地域情報化研究所の代表を務める傍ら、町田市の情報政策アドバイザーや、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の理事(非常勤)や障害者就労支援を行う社会福祉法人の評議員など、様々なお役職でご活躍されている後藤省二氏。今回、関根氏に後藤氏がインタビューする形で、取材が実現しました。

                 ※写真左から、後藤省二氏、関根千佳氏、関根秀昭氏(UDIT/代表取締役社長)。ご自宅兼オフィスにて。

筆者は当日、リモートにて取材する形をとらせていただいたのですが、後藤氏は車いすで株式会社ユーディットのオフィス=関根氏のご自宅へ出向かれました。同社代表である関根氏のご主人、関根秀昭氏と弊社編集長の佐藤匡史も加わり、和気あいあいとしたインタビューになりました。テレワークのこと、障害者とともに働くということ、まだまだ日本がUDに関して遅れているということ。たくさんの刺激をいただきましたよ。

※これより以下の記述となります。(敬称略)
関根千佳氏・・・関根(千)
後藤省二氏・・・後藤
関根秀昭氏・・・関根(秀)
佐藤匡史・・・佐藤

後藤:もともと関根さんは、日本IBMにSEとしてご入社されたんですよね?この分野を専門になさることになったきっかけを教えていただけますか。

関根(千):同じく日本IBMに勤める主人の海外赴任に伴い、休職してロサンゼルスについて行ったんです。その際、市内や大学、街のいたるところで障害者や、高齢者の方たちがあまりにも元気いっぱいに、いきいきと暮らしているのを目のあたりにしたんです。日本とは全然違っていてショックを受けましたね。

約2年滞在して、帰国後いろいろ調べてみたら、米国やヨーロッパのIBMには1987年ごろからSNS(スペシャルニーズシステム)センターという組織が存在していて、障害者や高齢者がICTを使うための製品に正式なパーツ番号をつけて普通に販売しているというのです。なぜ日本には、アジアにはないのでしょう?「高齢化の進む日本でこそ絶対必要です!」と社長に直訴しました。すると、返す刀で「言い出しっぺのあなたがやりなさい」と。「え?わたしが、ですか?わ、わかりました!」という感じでスタートしたのが93年でしたね。

後藤:直訴ですか(笑) 障害者がPCを使おうとすると、キーボードやマウスが使いづらいとか、視覚障害者にとっては読み上げ機能がないと画面の認識ができないといったことが出てきますよね。

関根(千):そうです。そういった個々の障害のニーズに応える形で製品化を進めました。そうして障害者がITを使って就学や仕事ができる、と一歩二歩も前進する力になったわけです。

後藤:その後、株式会社ユーディットを設立され、企業や自治体などへUDに関するコンサルティングを行っていると。

関根(千):日本IBMでそのセンターを立ち上げて6年ほど経った後、98年にIBMを卒業して、一人で起業しました。毎日都心へラッシュの中を通勤したくないし、自宅で仕事しようということで、主人の理解も得て起業したのです。

関根(秀):理解というより諦め(笑)。一階がパブリックスペースという設計のこの家があったからでもありますが、アメリカのIBMではテレワークが普通だったんですよ。私の赴任したアメリカのIBMは、オフィスに出社しない人が半分以上。80年代からそうです。アメリカで30分~1時間とドライブすると何10キロとなりますから移動時間は非常に無駄です。出社しなくても済む仕事のやり方がきちんと確立されていました。レポートのしかたもマネジメントも日本とは全然違う。

関根(千):アメリカは結果が出来ていればよくて、電話会議も直行直帰も当たり前。日本のように朝から深夜まで、働くというか“拘束される”というのは上司が人格を疑われてしまうわけ!アメリカの友達に、「日本人は、特に東京では、毎日片道1時間半かけて通勤するのよ」と言ったら、「一日3時間も電車乗ってるの!それは通勤じゃなくてトラベルよ」って笑われましたよ。

後藤:起業当初からテレワークを実行されてたんですね。

関根(千):98年当時は珍しかったですね。だから今でも、毎年総務省のテレワークデイズのときに協力して名前を出しているのですが、これが面白いんですよ。毎年、巨大な紙のポスターが送られてくるんです!いやいやうちは全員テレワークなんだから、、、どこに貼るのよ!って(笑) 毎回PDFでいいですって言ってるのにね。

佐藤:せめてPCやアップルウォッチの壁紙かなんかにしてほしいですね(笑)

佐藤:そうすると社員さんはみなテレワークですか?何名くらい?

関根(千):以前は障害のある人やワーキングマザーなど、5~6名の社員がフルタイムで在籍していたのですが、大学の先生になったり、外部の仕事が増えて、皆さん契約社員というスタイルになりました。また、登録スタッフという形式で、在宅の障害者や高齢者を数十名、ネットワーク化しており、必要に応じて意見をいただいています。フルタイムは私と夫のほかは1名のみで、プロジェクトが発生するごとにそれぞれ契約しています。そのほうがお互いやりやすいので、この形態は新しくていいと思っています。

社員は基本的にテレワークで、週に一回2時間だけ出社。それも来れる人だけです。やるべきことと期日を確認しあってみんなでランチして終了。課題が発生したらその都度ミーティングすることもあります。今では電話会議の方が多いです。でもお客様には当然出向きます。日本全国各地ですから、そのときも行ける人が行きます。そういった意味ではワーキングマザーや、精神障害、発達障害の方も働いていたし、両手両足の先のない四肢欠損の方もいました。彼は指がないのにすごく器用にお料理ができたんですよ。日本におけるWEBアクセシビリティの第一人者でもありました。

後藤:オフィスのUDという視点ではどのような相談が来るのでしょうか?

関根(千):「障害者を雇用しても、みんな辞めていく。どうすればいいのか?」というのが多いですね。某大手企業で、オフィスが複数フロアにまたがるのでその真ん中に階段を作っているオフィスがありました。コミュニケーション活性化というコンセプトから設置したようです。でも車いすのユーザーは貨物用のエレベーターを使わなきゃならない。大きなビルのエレベーターだからオフィスからすごく遠くにあって、呼んでもなかなか来ない。会社の雰囲気はとてもいいんですが、健康な若い社員向けなんですよね。妊婦さん用の施設も作られてましたけど使われていた形跡はなかったです。

これは、「どうしたらUDになるか」ということを、総務や人事がきちんと理解していないケースです。多様なユーザー、つまり障害者や妊婦さんの意見を取り入れながら進める必要がありますよね。場合によっては辞めた方に直接ヒアリングするということも必要です。

関根(秀):1.建物のバリアフリー、2.社内システムのアクセシビリティ、3.企業文化。この3つができていないと就労支援はなかなか難しいと思います。アメリカでは建物自体に障害者向けの配慮は当然なされているし、LGBTという言葉は日本では最近やっと流行ってきたけど、IBM社内では30年前からその言葉は使われていました。ダイバーシティプログラムというのがきちんとあるんですよ。

関根(千):その3つ、とても重要ですね。日本の建物はまだまだUDになっていないし、システムも外部向けWEBサイトだけ基準に対応していても、社内システムは全然アクセシブルじゃないケースがまだあります。IBMでは日本でもアメリカでも、女性の役員や子育て中の女性部課長は当たり前です。また特例子会社を持たないので、車いす、全盲、聴覚などの障害のある社員がそばにいるのが当たり前でした。日本企業とは全然考え方が違います。企業文化が一番重要なのです。みんなで一緒に働こうね、という感覚でないと。後藤さんのような方が課長や部長になっていくようなキャリアパスが見えないと、辞めていきますよ。“かわいそうだから雇っている”という気持ちがどこかにあったら、当事者は嫌ですよ、やっぱり。

後藤:日本で多様性やUDがなかなか根付かないのはなぜでしょうか。

関根(千):ひとことで言うと「分離政策」ですね。日本はすべてにおいて分けてしまう。そもそも特例子会社と特別支援学校は、ほかの国では憲法違反なんですよ。人権侵害として許されないものです。

佐藤:そうなんですか。

関根(千):アメリカでもヨーロッパでも、学校には、車いすユーザーの体育の先生、全盲の校長先生なんて当たり前。そういう環境で子供が大きくなる。会社に入ったら上司が障害者、ということが当たり前にある環境です。日本は昔から「分離政策」を文部科学省も厚生労働省も進めてきたために、身近に障害者がいないのです。どこか遠くにいる人たち、というイメージになってしまっている。友達にも上司にもいないので、自分ごととして実感がわかない。だからUDが社会に浸透しないのです。

後藤:「教育」という観点ではいかがでしょうか。

関根(千):今では小学校の教科書に「ユニバーサルデザインとは」ということが掲載されているので、小中学生は知っていますよね。少なくとも「いろんな人たちが一緒に暮らせる街や、使えるもののことだよね」というくらいには。けどこれを、親は知らなかったりしますね。

関根(秀):先日あるパーティで名刺交換したら、「ユニバーサルデザインって何ですか?」と。大人は大体そうです。小中学校でもきちんとしたカリキュラムを組むべきだと思うし、大人も教育していかなきゃならない。保護者を含めた市民の理解も必要です。

最近町内の活動に参画しているのですが、発達障害の子供をお祭りに呼ぶ、ということをやりました。小学生や中学生のお子さんたちですが、それが騒いだりすると“しつけができてない”と言われるんですよ、学校の先生さえも分かってない。理解が得られず親が大変なわけです。小さいときから子供同士が健常者も障害者も一緒になるような環境を与えていくことが本当に大事です。高学年になるほど差別が始まりますから。二年ほど活動していますがすごく痛感しています。行政さえもそれを救っていない現状があります。

関根(千):理解が薄いってことは、接する機会が少ないわけですよね。もっと増やさないといけない。重度障害の子供と一緒に聴く音楽祭をやりましたが、お互いに普段触れ合ってもいないし見たこともないから最初はどう接すればいいかわからないんですよ。だから、“分ける”ことは問題なんです。幼い子どもは、障害のある子どもや外国人の子どもにも、あまり先入観を持ちません。すぐに一緒に遊べるようになります。もともと接していれば自然に触れ合えるはずです。

佐藤:確かにそうですね。でも東京の街にいると車いすの人をあまり見かけない気がします。

関根(千):それは、外に出にくいから。もっといるんですよ、本当は。障害者だけでなく、例えば双子のベビーカーはバスに乗りづらいでしょう?スーパーのレジ通れない、改札も通れない。でもね、理解を深めるためにも、いろいろなニーズのある当事者がもっと街に出て行くしかない。私は障害者のみんなにもっと頑張って外に出なさい!って言ってるんですよ。困ったときは、笑顔で、すみませ~んって言おうよ。そうしたらみんな手を貸してくれるから。当事者たちがいなきゃ街も人も変わらないからね。

後藤:もうちょっと頑張ります(笑)

(PART2へつづく)→【気になるこの人!】関根千佳:ユーディット/会長兼シニアフェロー_PART2 「ユニバーサルデザインは福祉でなく、”公共の利益”」

プロフィール関根千佳 (せきね・ちか)
株式会社ユーディット 会長兼シニアフェロー
同志社大学大学院総合政策科学研究科 ソーシャルイノベーションコース 客員教授


81年九州大学法学部法律学科卒。同年、日本IBMにSEとして入社。 87年より2年米国ロサンゼルスにて障害者や高齢者のいきいきとした姿、女性の活躍などで日本との違いに衝撃を受ける。帰国後、93年にSNS(スペシャルニーズシステム)センターを開設し、障害者・高齢者へ向けての製品企画/販売などに従事。98年日本IBMから独立し、株式会社ユーディットを設立。代表取締役社長に就任。内閣府、国土交通省、総務省などの審議会委員を歴任。UDの分野において数多くのプロジェクト参画、コンサルティング業務をこなす。2014年より同志社大学政策学部教授。2020年現在、同大を始め、 放送大学・美作大学客員教授。そのほか東京女子大・関西学院大・東京大学の非常勤も務める。

著書に、『「誰でも社会」へ』(岩波書店)、『スローなユビキタスライフ』(地湧社)、『ユニバーサルデザインのちから ~社会人のためのUD入門~』(生産性出版)など多数。

詳しくは→「関根千佳の履歴書」

後藤省二(ごとう・しょうじ) 株式会社地域情報化研究所 社長

地方公共団体情報システム機構(J-LIS)理事(非常勤)、文京区情報公開制度及び 個人情報保護制度運営審議会委員、社会福祉法人日本キリスト教奉仕団(JCWS) 評議員など。

78年国際基督教大学(ICU)教養学部理学科(生物学専攻)卒。在学中に脊髄損傷により車いすのユーザーに。同年、三鷹市入庁。福祉部社会課障害者福祉係、企画部情報化対策室長、健康福祉部調整担当部長、企画部地域情報化担当部長等を経て2014年三鷹市を定年退職。三鷹市在職中は「福祉のまちづくり推進要綱」の制定とバリアフリーのまちづくり、情報化計画の策定や各種情報システムの構築等に従事。証明書コンビニ交付システムは多くの自治体で利用されている。三鷹市を定年退職後、株式会社地域情報化研究所を設立。地域と自治体の情報化に関する支援を行っている。現在は総務省の「自治体システム等標準化検討会」に委員・分科会長として参加。

詳しくは→株式会社地域情報化研究所
セッキ―

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ライタープロフィール

2014年入社、当社で初めてライターに挑戦。キャリアのスタートは銀行員、その後リクルートグループ、大手税理士法人、スポーツアパレルなど複数の事業会社で管理部門、企画部門、秘書などを経験しながらカルチャーショックのシャワーを浴びまくる。2度の高齢出産を経て復職し、現在家事・育児・リモートワークに奮闘する毎日。無類のコーヒー好きで趣味はハンドメイド。いつかはインタビューされる側になりたい!

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