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オフィスに関わるあんな人こんな人、ご紹介します!

2010.08.11

中川淳:株式会社中川政七商店/代表取締役社長(十三代)
「ブランド戦略としてのオフィスづくり」

経営者にとって、「オフィス」とはなんだろうか。
そんなことを経営者の方と対峙する度に思う。

それぞれの会社毎に方針も違うし、もちろん経営状態によっても「オフィス」に対する考え方は異なるが、残念ながら往々にして日本の企業においては、まだまだオフィスづくりに対して「投資」という意識が低いと感じている。

そんな中、「ブランド戦略としてのオフィスづくり」という確固たる考えの基、新社屋建設に挑んだ会社が奈良にあった。

今年、日経ニューオフィス賞 近畿ニューオフィス推進賞を受賞した奈良晒の老舗、株式会社中川政七商店だ。

同社は享保元年(1716年)の創業以来、「奈良晒」と呼ばれた高級麻織物を商い、現在では麻を使った生活雑貨や茶道具を取り扱っている。

麻を300年にわたり扱ってきたプロとして、現代のニーズに応え「新しい日本のカタチ」を創造し、「日本の伝統工芸を元気にする!」をビジョンとして掲げている。現在3ブランド、23店舗を全国に展開し、急成長している注目の会社だ。

今回は十三代目代表取締役社長、中川淳氏に新社屋をつくった際の想いを伺った。

第23回日経ニューオフィス賞 近畿ニューオフィス推進賞の受賞

まずは今回受賞された日経ニューオフィス賞について伺った。

「この受賞は本当にうれしいです!今回の新社屋建設は創業300年を記念する一大イベントであり、当社の方針や今後の方向性を見える形として表現したものだったので、せっかくであれば、我々の新社屋づくりに込めた想いを世の中に発信したいと考えていました。

新しいオフィスを通じて我々が世の中に認められ、さらには会社のことも多くの方に知っていただけるという観点からも、当社にとって感慨深い受賞でした。」

ブランド戦略の一環としての新社屋建設

今回の新社屋建設の背景には、中川社長のどのような想いがあったのだろうか。

「まず、今回の新社屋建設のきっかけは、今後の事業拡大を見据え、2つに分散していた事業部の老朽化していたオフィスを新社屋に統合し、より会社を強くしたいという点でした。

そして今回、何よりも重要視したのが、『ブランディング』です。ブランドとは他者と差別化され、かつ一定の方向性を持ったイメージにより、商品、サービスあるいは会社そのものにプラスをもたらすものと考えています。 様々なタッチポイントから入ってくる情報が整理されて形成されるブランドは、中小企業においては経営そのものです。 丁度、このプロジェクトが始まった時には、経営戦略の柱としてブランディングをキーワードに会社の運営を刷新していた中でしたので、今回の新社屋建設も会社としてどのようなイメージを発信し、社員にどのように働いて欲しいのか等、社内外に対してのブランディング施策の一つとして位置づけました。」

新社屋のコンセプトは「未来の町屋」

『ブランディング』という経営戦略の一つとして位置づけられた新社屋建設。 どのようなコンセプトでつくったのだろうか。

「新社屋は『仕事をする場所』というよりも、生活雑貨を取り扱う会社であれば、『住』的な要素とつながっていたほうが、クリエイティブな環境としても好ましいため、『暮らすように仕事をする場所』にしたいと考えました。そんな時に出てきたのが『未来の町屋』というコンセプトです。」

6つの家型の棟が一体となった平屋の新社屋

このコンセプトを具現化するために、新社屋をどのようにデザインしたのだろうか。

「『町屋』を具現化するために、長細く屋根に高低差のついた6つの家型の棟の分節的表現を維持しつつ、構造的にこの6棟が一体に挙動する建物となるよう、新社屋の設計をしました。家型が集まって様々な個性で賑わう町のような場所になって欲しいとの想いと共に、会社の個性を表現した建物自体が創造性を刺激する存在にしたいという想いを込めました。」

屋根の高低差が平屋にキャラクターを与え、快適さを創出

「また、家型のバラバラの棟が、広さのある平屋にキャラクターを与え、無表情な工場のようにならずに、景観としても街に自然に溶け込ませることができました。家型の構造は隣の棟との高さの違いを生み、高窓による自然採光の取り入れや換気、排煙として利用できるつくりとなっており、より快適な空間を創出しています。」

「暮らすように仕事をする」快適な場づくり

建物としては、非常にユニークな新社屋となったが、中のオフィスはどのような工夫がされているのだろうか。

「生活雑貨を扱う自分達がよりクリエイティブに働き、日本の伝統工芸や奈良の良さを商品に込めて世の中に発信していくためにも、生活により近い形の快適な場づくりをしたいと考えました。その一つとして、今回大きなダイニングを構築しています。

ダイニングは食事だけでなく、打合せや企画書づくり、試作品製作、大人数の会議等、様々な用途として利用され、人や情報が行き交う、会社の中心的な場所となりました。そして、テラスやキッチンも隣接して配置し、気分転換しながら仕事ができるようにしました。」

執務エリアは「オープン」と「集中」を意識

「執務エリアは『オープン』と『集中』を実現した空間になっています。間仕切りは立てずに、見通しがよいオープンな環境にすると共に、個人業務については集中できるよう、背面には座った時の目線で目隠しになるような高さの収納庫を設け、業務効率を高める工夫をしました。」

新社屋建設によって自社の「ポジション」がより明確に

今年の3月から入居した新社屋。
約半年経った現在、どのような変化があったのだろうか。

「一番変わったことというのは、ブランドを意識して新社屋を構築した結果、当社の目指す『ポジション』が様々な関係者に対してより明確に伝わり、認識されるようになったということです。社員には、自社の目指す方向性や立ち位置を、空間を介して体現することで、自らこの会社やブランドを成長させなければならないという使命感のようなものが育ってきたと感じています。
そして採用に関しては、今年は会社説明会からこのオフィスで実施したのですが、より学生の志望度を高める役割を果たしていることが、アンケートのコメントからも読み取ることができました。

また、仕入先の方々と新社屋で加工後の商品を見ながら打合せをすることで、当社との関わりをより前向きに捉えていただけることが増えたと思います。」

「ものづくり」から「ブランドづくり」へ

新社屋建設を今回はじめて経験された中川社長。
このご経験を通して、何を感じられたのだろうか。

「僕はこれからの会社は『ブランドづくり』にこだわるべきだと考えています。今の時代『ものづくり』という発想だけでは、もう無理です。会社の競争優位性をつくり出すのは商品に留まらない広い意味での会社のブランド力であると思っています。
爆発的な単一のヒット商品を生み出すよりも、ブランドを社内外に浸透させ育てることの方が、会社としての求心力を高め、結果として成長や売上の持続につながります。

なので、今回の新社屋建設も、『オフィス』というよりも『ブランドづくり』に投資したという考え方です。この発想の転換がなければ、おそらくコストベースでの考え方にどうしてもなってしまっていたでしょう。まだ入居して半年ではありますが、僕の期待していた『ブランドづくり』に対する投資の効果は現時点で予想以上に得ることができました。」

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「オフィスは企業の競争優位性を高めるためのブランド戦略の一つである。」
そんな強い想いを胸に、中川社長は今回の新社屋作りに挑んだ。

結果、その想いや具現化の方法について日経ニューオフィス賞 近畿ニューオフィス推進賞を受賞され、世の中に評されると共に、社内外の関係者に対しても自社の目指す方向性を空間を介して伝えることに成功した。

今回のように企業に大きなリターンを生み出すような付加価値の高い戦略的なオフィスづくりは、つまるところ経営者の想い次第なのであると、このインタビューを通して、改めて思った。

外的な環境変化が激しく、会社が提供するサービス内容もめまぐるしく変わり、社員も常に進化が求められる中、あらゆる企業にとって万能薬的な”解”のオフィスは存在しない。現在の会社が置かれている状況を把握しつつ将来の方向性を見据え、オフィスづくりにおいてその時々のベストな意思決定を下すしかないのである。その意思決定に対して、経営者自ら強い意志を持って腹ぐくりができているか否かが、オフィスづくりの成功の鍵を握っていると言っても過言ではないだろう。

プロフィール中川 淳

1974年生まれ。2000年京都大学法学部卒業後、富士通株式会社に入社。
2002年より株式会社中川政七商店に。常務取締役として「遊 中川」の直営店出店を加速させる。
また2003年には新ブランド「粋更kisara」を立ち上げ、2006年には表参道ヒルズにフラッグシップ
ショップをオープン。2008年2月、十三代代表取締役社長に就任。2008年10月、初の著書
「奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。」(日経BP出版センター)を出版。
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