若いアーティストの発掘、そして彼らの発表の場を支援する活動を続けるペッパーズギャラリー。2006年から参画し今年7年目を迎えるアートディレクターの白石愛須希さんは、自らのアーティストとしての活動経験を活かし、現在は多くの人にアートの素晴らしさを届けることに尽力している。

■peppers gallery
http://www.peppers-project.com

日本人はとかくアートというと敷居の高いもの、高価なものというイメージを持ちやすいが、もっと気軽に生活に取り入れても良いのではないか？私たちが自宅の次に、もしかしたら自宅以上に長い時間を過ごすオフィスに、意志をもってアートを取り入れることにより様々な効用が期待できる。リラックス、リチャージ、癒し、アートが人の意識に働きかけるパワーは計り知れない。もっと能動的にアートと関わってはどうだろう？空間づくりのおもしろいアプローチとなるのではないか？

キラッと光るもの

アーティストの発掘。一言で言っても、実際どのように原石を見付け出すのか？自分の足を使って探しに行く。徹底的な現場主義はペッパーズギャラリーの特徴であり誇りだ。「出会いを求めて展示会、大学、コンペティションに行き、必ず自分の目で生の作品を見る。たとえ作品としては未完成でも、混沌とした中にキラッと光るものがあれば取り上げる。逆に完成度の高い作品であっても、限界が見えてしまうようなものは求めない。アーティストの潜在能力を見定め、引き出す。」それこそがペッパーズギャラリーのコンセプトだ。

アーティストとタッグを組む

「展示会を企画し、その企画に基づいてアーティストを探す。これはと思ったアーティスト一人ひとりと直接コミュニケーションをとり、企画のコンセプトを伝え出展する作品を決めていく。最もやりがいを感じるのは、アーティストとタッグを組んでアウトプットを行い、良い展示、良い空間、良いコーディネートが実現した時。何度もやり直し、絶対に妥協しない。時にはアーティストにあきれられても、しつこく食い下がる。すべては作品を届けるためだ。少しでも作品の良さを表現できるように1mm単位にこだわり抜く。その情熱がバイブレーションとなって関係者に伝わり、最高の展示になって世の中に届けられた時、最高に充実した気持ちになる。」

新しい試み

ペッパーズギャラリーは今年12月末でクローズする。ギャラリーという作品を見るための箱での発表から、箱を持たない発表にシフトする。 現在もアーティストの手作り本の展示販売を、新宿タイムズスクエアの紀伊國屋書店、NYの紀伊國屋書店、マンハッタンやブルックリンのアートブック専門店で行い、活動の場を外へと広げている。 そして2011年から始動した、アーティストが自身のネクストステージを開拓するための銀座の街を舞台にした都市型アートプロジェクト。銀座の商業施設を中心に、ジャンルを問わず様々なスペースで展開する活動だ。 さらに最近は商業施設だけではなく、レジデンシャルにも発表の場を広げている。ゴールドクレスト月島のエントランスホールにアートコーディネートを行っている。居住者の日々の暮らしの中に、活力や心地良さを感じてもらえる空間を提供している。

今後の夢

「アートを通してもっと日本の良さをアピールしたい。今は欧米のライフスタイルが浸透しているが、これから先は日本独自の日本人の感性にあったライフスタイルが受け入れられるようになるはず。まだ漠然としているが、そういった日本発のライフスタイルを能動的に発信していきたい。」 真の豊かさとは何か？白石さんと話していると、私たちの日常にアートが入り込み、そのパワーが生活に彩りを与えていく。そんな心が喜ぶライフスタイルの実現がすぐ近くまで来ている気がする。